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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第425話 一枚上手だった

「はぁ、はぁ……あぁ、もう終わってたか~~」


スパイルモンキーとの戦いを終えたガルフたちは、ダッシュでイシュドとケルベロスが戦っている場所へと向かった。


だが、到着すると……既にイシュドとケルベロスの戦闘は終了していた。


「おぅ、戻ってきたか、お前ら」


「う、うん」


「どうだった、スパイルモンキーは。結構クソだっただろ」


「え、えっと……そ、そうだね。こっちの心を搔き乱してくるモンスターだったよ」


ガルフもまだ十代の青年であり、スパイルモンキーの態度や行動に関して、全くもってイラつかなかった訳ではなかった。


「イシュドは……スパイルモンキーと戦ったことがあるの?」


「おぅ、あるぞ。いやぁ~~~、あん時はくっっっっっそムカついたな」


「あら、そうなのね」


「んだよ、意外か?」


「そうですわね。あなたなら、低能な猿が何を人間みたいに一丁前に挑発してるんだと、返しそうじゃありませんの」


「おいおい、ディムナならともかく、俺がそんな言葉を返すかっての」


ミシェラの言葉に反論するイシュドではあるが、ミシェラと同じくフィリップたちも全員……イシュドがそういった言葉をスパイルモンキーに返している光景が容易に想像出来た。


「そうですの? でも、簡単にイメージ出来ましたけど……では、その時どうしましたの」


「どうしたもこうも、ふざけんなって怒りっつーか…………ありゃ殺気か? で思考か埋め尽くされて、素材とか気にせず粉砕しちまったな~~~」


イシュドは冒険者ではないが、素材は売却して金儲けに……知り合いの鍛冶師や錬金術師に頼めば、武器やマジックアイテムを造って貰える。


そのため、一応素材を気を付けて討伐することはそれなりにあるが……その際は相手の強さなど一切関係無く、ただただ本気で潰しにいった。


「そ、そうだったんだね。えっと……ケルベロスは強かった?」


「おぅ、そうだな。本当に強かったぜ。バーサーカーソウルを使ってなかったとはいえ、ちっと食らっちまったしな」


相手がBランクモンスターであれば、絶対にノーダメージで討伐出来る!!! といった自惚れた自信は持っていなかった。


だが……ケルベロスが現れた場所が場所であるため、まだ……危機感を感じるほどの相手ではないと、心の何処かで隙が生まれていた。


「っ!! イシュドが……ダメージを、負ったのかい」


「ちっとな。あいつのブレスをどうにかする事に意識を奪われた瞬間にな」


「あれに関しては、ケルベロスが一枚上手でしたね」


護衛の魔術師だからと、イシュドを下げないようにしている訳ではない。

ただ……本当にケルベロスが一枚上手だったと……イシュドの思考を上回ったと感じたリベヌ。


いったい何があったのかと尋ねるアドレアスたちに対し、イシュドと外から見ていたリベヌが答えた。


「ケルベロスが、その様な方法で……」


「驚くのも無理はないかもしれませんが、本当にその様な方法で加速し、イシュド様に確かなダメージを与えました」


ケルベロスは本気のブレスを放ち、即座に移動。

そしてイシュドの戦斧による対処が間に合う前に、足裏から炎を噴射させ、加速。


結果、イシュドの対処が間に合う前にケルベロスの炎爪が炸裂。

イシュドの左腕は……分断されることはなかったものの、傷の深さからその戦闘の最中に限り、使えない状態となった。


「っ!!! それじゃあ、その状態から……どのようにして勝ったんだい」


ケルベロスが本当に強いとことは解っていた。

以前戦ったミノタウロス、ゴブリンキングなどよりも強い可能性が高いと認めていた。

だからこそ、イシュドといえどバーサーカーソウルを使っていない状態であれば、不利と言わざるを得ないというのがアドレアスの見解だった。


「…………どういう感じに勝ったっけ、リベヌ」


「簡単に説明しますと、獣になった。ただそれだけかと」


「あぁ、そうそう。そんな感じだったな」


左を使えなくなったイシュドは、久しく感じていなかった痛みを感じ……大きく口端が吊り上がった。


最高に良い相手だと闘争心の高ぶりを感じながら左手に持っていた戦斧をしまい、右手に持つ戦斧だけを使い……獣のように戦った。


「獣に……それって、レオナさんみたいな感じにってこと?」


「そんな感じの認識で合ってると思うぜ」


セオリーを捨て、まさに獣の如く戦ったイシュド。

ケルベロスも相手の戦闘スタイルが変わったことで、一瞬の戸惑いが生まれた。


本来であれば、寧ろ戦い慣れている相手の動きだったが、それだけ戦闘スタイルの変化というのは、相手に与える衝撃は大きかった。


「そんな感じで戦ったから、結構ボロボロにしちまったんだよな」


「それはしょうがないと思いますよ。ケルベロスは頭を二つ潰しても、一つが残ってれば超元気に動くんですから」


「はっはっは!!!! それもそうかもな」


結果的にイシュドは普段以上にケルベロスを刻んでの勝利となった。


それを失敗してしまった……バトムスは思わない。

確かに、ケルベロスの素材は牙や爪、毛皮も非常に使える物ではあるが、それを気にするあまり殺されてしまえば、本末転倒である。


(まだ二日目であんなケルベロスと戦れるとはなぁ……ほんと、実家から護衛を呼んどいて正解だったな)


イシュドにしてはらしくない言葉を心の内で零す。


異常な狂戦士……そう評されるイシュドだが、異常だからこそ自分が一時的にとはいえ左腕が仕えなくなる程の攻撃を受けたという結果を冷静に受け止めていた。


「イシュド?」


「大丈夫だ。んじゃ、調査を再開すんぞ」


冷静に……冷静に結果を受け止めた上で、それでもイシュドは狂戦士らしく、小さくとも狂気を含む笑みを零すのだった。

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