第424話 ざまぁみろ
スパイルモンキーは……基本的に全員性格が悪い。
だからこそ、リーダー個体がいなくても連携度が高い。
それを戦闘の中で把握したミシェラは、一体だけを集中的に狙った。
「ウギっ!?」
煽ったのはフィリップとアドレアス、ディムナの三人。
そのため、スパイルモンキーたちは三人に意識が集中していた。
最高の隙を狙い、風斬を叩き込んだミシェラ。
だが、あっさりと一撃では終わってくれず、片腕を犠牲になんとか生き延びる。
「ガルフっ!!!!」
「っ、はい!!!」
特に何をするのか解かっていない。
しかし、元々は一体のモンスターを相手に基本的に二人以上で戦うようにと伝えられていたため、ガルフは迷うことなくミシェラの言葉に応じ、彼女の後を追う。
「ウギャっ!!!!!」
「そうくると、思ってましたわ!!!!」
左腕を潰された。
であれば、残っている右腕で爪撃を叩き込む。
そこまで動きが読めていたミシェラは回避してカウンターを叩き込む……ではなく、爪撃が当たらないようにスライディングでスパイルモンキーの股をくぐる。
そして双剣の片側だけ鞘に納め……スパイルモンキーの尾をがっちりと掴んだ。
「ウギっ!!??」
尻尾を掴めば力が抜ける……といった生態は、スパイルモンキーにはない。
ただ、身体強化のスキルを発動した状態のミシェラの力で握られれば、普通に痛い。
なんとか離すように攻撃しなければならない。
そう思った直後には、視界が急移動。
「ふんっ!!!!!!!!!」
「ウキャっ!!!???」
尻尾を掴まれ、思いっ切り振り回されるスパイルモンキー。
一気に戦況が悪くなり、焦りが募る中……いきなり、目の前が真っ暗になった。
「ハッ!!!!!!!!!!」
「っ………………」
ミシェラが思いっ切り回す。
その際にガルフがジャストタイミングで闘気を纏った左拳を振り抜き……そのままスパイルモンキーの頭部を粉砕した。
アドレアスやミシェラがスパイルモンキーの攻撃をもろに食らいたくないように、スパイルモンキーたちにとってもガルフの闘気を纏った一撃をどうにかして直撃を避けたかった。
「ナイスタイミングでしたわ、ガルフ」
称賛の言葉を送ると同時に、ミシェラは直ぐにまだ戦っている仲間の元に駆け出す。
五体の内一体は削れたが、それでも残り四体という状況であっても、まだ二対一という状況をつくれていない。
場所が場所であるため、どれだけ戦況を有利に運べたとしても、一切気が抜けなかった。
(いやぁ~~~、やっぱしっかり感情? があるモンスターってのは、こうなると人間と同じで、戦りやすい、よなっ!!!)
怒りに感情が支配されたスパイルモンキーの攻撃は、非常に前のめりで……全ての攻撃に殺意が乗っている。
どれも本気の攻撃と捉えられるため、どれがフェイントなのかと一切考えなくて良い。
フィリップにとって、非常に楽な状態。
「「っ!?」」
そして怒りの支配されれば、死角の外から飛来する攻撃に気付くのが送れる。
足元に迫る雷斬波を躱すことには成功したものの、体勢が崩れた二体のスパイルモンキー。
((今ッ!!!!!))
フィリップのサポートによって生まれた隙を見逃さず、イブキの居合斬りを……アドレアスが容赦なく旋風の刺突を放った。
スパイルモンキーを討伐するには十分な威力を有しており……イブキの居合斬りは、見事両断することに成功。
しかし、アドレアスの刺突はギリギリで反応されてしまい、心臓を貫けなかった。
「ッ、ウギャギャ!!!!」
「やかましいぞ、猿が」
「ギャっ! ァ」
それを見越して離れた光の刺突が喉を貫き、絶命。
残りは二体。
「ふんッ!!!!!」
「ッ!!!! ッ、ギャ!!!!!! っ!!??」
気合烈波と共に放たれた突きを、スパイルモンキーは怒りに駆られながらも……なんとか回避に成功。
死に物狂いで……その一撃でディムナを殺す為にカウンターを叩き込もうとしたが、ディムナにとっては避けられるところまで想定通りだった。
避けられた方向に向け、槍技……薙ぎ払いを発動。
槍技、スキルレベル一で発動出来る技だが、ディムナの腕力に使用している槍の頑丈さが突き刺さり……スパイルモンキーは面白いほど吹き飛ばされ、多数の骨を粉砕。
「ディムナ、先輩!!!」
「ナイス、サポートだ!!!!!!」
薙ぎ払われた先にガルフが既に走っており、スパイルモンキーが立て直すか……もしくは逃げだすか。
どちらの選択を選ぶか決める前にガルフの蹴りが尻に突き刺さり、ディムナの元に蹴り飛ばされた。
今度は躱されることなく、ディムナの剛槍がスパイルモンキーの心臓を貫いた。
「なんとか……殺れましたわね」
そして最後の一体は……闘争を選択した。
どれだけ煽りに弱く、怒りに感情を支配されても、一体では目の前の人間たちに敵わないと本能が判断した。
だが、ミシェラからすれば今更何をしてるんだと……怒鳴りたくなるのではなく、逆に冷静になり、双剣の片方をぶん投げた。
スパイルモンキーは躱せず、無様に腕を壊され、スピードが緩んだ瞬間をミシェラの脚が逃さず捉え、首を刎ね飛ばした。
「いやぁ~~~~、面白いモンスターだったな」
「どこかですの」
「いやいや、だって自分たちはあんだけ俺らは煽って小バカにしてたくせに、自分たちが煽られたらあんだけ顔真っ赤にして怒りまくったんだぜ。無茶苦茶ダサくて面白いだろ」
「………………まぁ、そうですわね。正直なところ、ざまぁみろとは思いましたわ」
最後こそ冷静に対応し続けたミシェラではあったが、何度かスパイルモンキーの態度や行動に怒りかけ……なんとか抑えていた。
「とはいえ、乱せてしまえばといったところはありましたね」
「イブキさんの言う通り、そこからは早かったね。ただ……最後まで獣の反応は侮れなかったかな」
チーム戦であれば、誰かが誰かをサポートするのは何もおかしくない。
それはアドレアスとしても理解しているが、最後は自分が決めたいという思いがあり……顔にこそ出していないが、心の内では次こそはという熱が燃え上がっていた。




