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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第422話 騒ぎの理由

「まだそこまで奥を探索してないのに、あれぐらい強いモンスターと遭遇するのか……やっぱりここは良いね」


「そうね。可能なら、私用で同期たちと訪れたいですね」


イシュド対ケルベロスの戦いを眺めるジャレスとリベヌ。


バーサーカーソウルを使っていない以上、イシュドが本気を出していないことは明白。

しかし、それでもイシュドが頑丈な二振りの戦斧を振り回しながら戦っているにも関わらず、ケルベロスはまだ五体満足の状態で戦い続けている。


そのケルベロスが紅鱗の地の主という訳でもない。

となれば、二人が同期の騎士や魔術師たちと共に紅鱗の地に訪れ、暴れ回りたいと思うのも無理はない。


(…………当然と言えば当然なのかもしれませんけど、やはり彼らの精神力には驚かされますね)


ジャレスとリベヌはイシュドとケルベロスの激闘を見て楽しめるが、ガルフたちは楽しむ余裕などない。

イシュドとBランク以上のモンスターと戦えば激闘が見られる……そんな事は既に理解している。


だからこそ、自分たちが追い付くためにはどうするか……もし、身体能力がそれ相応まで上がれば、自分ならどう戦うかを頭の中で思い浮かべる。


(イシュド様が学園に入学してから、多くの者がその力の差に絶望して心を折られたと聞いていましたが……実に、素晴らしい。ガルフさんなどは是非ともレグラ家に招待したいですね)


異性としてガルフの事が気に入った……という訳ではない。

闘気、という力はレグラ家に所属する人間から見ても魅力的な武器。

向上心という点も問題無し。


加えて……ガルフは平民である。


二次職では狂戦士という職に就いてはいたが、イシュドやジャレスほど脳ミソが筋肉に浸食されてはいない。

フィリップ、ミシェラたちも非常に優秀な人物であり、可能ならレグラ家に引き入れた方が良いのではと思うが……物理的に無理矢理引き込むのは宜しくない、難しいと理解している。


だが、ガルフは貴族の令息……ましてや王子ではない。

イシュドと一番の友人ということもあり、一番引き入れやすい……というのがリベヌの見解である。


(そういえば、お嬢様方が彼の名前を口に出していたような………………あぁ、なるほど。あの騒ぎは、そういうことでしか)


イシュドが紅鱗の地を調査するなら、さすがに自分たちだけでは色々と不味いと判断した結果、レグラ家に所属する若手騎士と魔術師から一人ずつ護衛を選ぶことにした。


その際に……一部の者たちから、騎士や魔術師たちじゃなくても良いのではないか!!! という声が上がった。


「…………正解、だったのでしょうね」


「ん? 何がだい、リベヌ」


「いいえ、なんでもありません」


リベヌは、声を上げた一部の者たちが何故そういった行動を取ったのか……ある程度は理解出来た。


(引き入れやすい立場、現在のレベルを考えれば問題無い戦闘力に、非常に高い向上心……そして性格も良しでしょう)


リベヌから視ても、ガルフという人間は多くの面から視ても平均値を越えた優秀な人材だと言える。


(筋肉は更にこれから付いていくでしょう………………不平不満を買わないよう、アルバ様からの命を忘れずに達成しなければなりませんね)


脳内であれこれ考えていると、リベヌの元まで熱波が押し寄せる。


「……やはりあのケルベロス、私たちの知る個体とは少し違うようですね」


「みたいだね」


即座に魔力の壁を展開し、熱波を防いだリベヌは冷静にケルベロスが放った炎を分析。


木や草が燃えている……だけではなく、地面が溶けている。


(火力が高い……いえ、そういった類の炎、という事でしょうか)


自分の分析が合っているのか否か。

それは先程ケルベロスの放ったブレスと直に対峙したイシュドの表情を見れば解る話だった。


(どうやら、正解の様ですね)


リベヌの視線の先には、口端を吊り上げるイシュドがいた。


(これが当たり前なのか、それともさすがにあのケルベロスは特殊なのか…………どちらにしろ、外の世界も悪くありませんね)


小さく笑みを零すリベヌ。

しかし、目の前で行われる激闘だけに集中しているわけではなかった。


「そうなるでしょうね」


後方からの襲撃に対し、魔力の結界を展開したリベヌ。


「リベヌさん」


「えぇ……構いませんが、危ないと思えば直ぐに割って入らせていただきます」


「はい」


リベヌたちを狙ったのは黒い毛が特徴的な猿、スパイルモンキー。

イシュドとケルベロスの戦いを観ていた彼らを狙いそこら辺に落ちていた石ころや、糞を投げる個体もいた。


今日のガルフたちの身体能力を踏まえて、二対一であれば戦っても良い。

そういう決まりを設けていたが、仕掛けてきたスパイルモンキーの数は五体。


全ての個体を相手に、二対一で戦うというのは難しい。

そのため、リベヌは危うくなれば直ぐに手を出すと告げた。


「スパイルモンキーか~~~……どうなるかな」


「現状を考えれば、これまでのようにどれだけ集中していたとしても、短時間で終わらせることは出来ないでしょう」


「やっぱりそうだよね。それに、スパイルモンキーだもんねぇ…………危なくなったらどころか、先に準備はしといた方が良いんじゃないかな」


実際に手合わせをし、ガルフたちの実戦での強さも把握している。

それを踏まえた上で、自分たちが手を貸さなければならない場面がきてもおかしくないと思っていた。


主な理由としては、正確に見ずとも他の地域に生息しているスパイルモンキーよりも身体能力が高い事と……スパイルモンキーの性格の悪さ。


誰に教わった訳ではなく、生物として性格の悪さが備わっている。

平気で糞を投げるような行為もするため、対峙する騎士や冒険者たちからすれば、まさにクソ猿と叫びたくなるモンスター。


そして、何より鬱陶しいのが……そんなクソみたいな性格をしていながら、決して弱くないという事実。


「そうですね」


リベヌもガルフたちの実力を認めていると同時に、スパイルモンキーのクソったれな性格と強さを知っているため、いつでも即座に殺せるように……クソ猿たちにバレないように魔法をセット。


リベヌにとって、重要なのは彼らの闘争心よりも万が一を起こしてはならないというイシュドからの依頼。

その時が来れば、容赦なく魔法を発動する。

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