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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第420話 気にされてる

「…………どうすっか」


二日目の朝、全員時間までには宿の一階に降りていた。

現在朝食を食べているのだが……イシュドは一目でガルフたちの異変に気付いていた。


「お前ら、全員疲れ抜けきってねぇだろ」


「「「「「「「っ!!」」」」」」」


「バレねぇとでも思ってたんか」


先日、ガルフたちはなるべくイシュド達の手を借りないようにと、自分たちでも戦えるモンスターと遭遇した際、集中力を限界まで高めて最短時間で……最短距離で討伐していた。


一見戦闘時間が短ければ、疲労度合いが少なく済むのではないかと思われるが、これが意外とそうでもない。

加えて、斥候の役割を担えるイブキだけに周囲の警戒を任せる訳にはいかないと、他のメンバーも周囲の警戒を行いながら紅鱗の地を調査していた。


その結果、ミシェラたちは調査から帰った、昼間に負けないほど食事を取り、がっつり寝た。

栄養補給、睡眠も万全だが……それでも拭えないほど、疲労がまだ残っていた。


「はぁ~~~~。つっても、別にそこは責めるようなところじゃねぇしな……どうすっか、マジで」


「そうですね…………全く動けないという訳ではなさそうですが、外の常識を考えれば、そもそも探索の後は休息を挟むと言いますし」


レグラ家の基準で考えてはならないと、リベヌは適切な判断を下そうとしていた。


だが、ミシェラはその考えに待ったを出した。


「いえ、調査に向かいますわ」


「……デカパイ、やる気は買うが、それで腕や脚とかぶった斬られたらどうすんだ」


「危険性があるのは解っていますわ。ですから、どんな相手でも一人で戦わないように動く。それならばどうですの」


「ほ~~~ん………………そんなら、俺は良いんじゃねぇかと思うが、二人はどうよ」


「俺はそれで良いと思います! 昨日見てた感じ、若干動きのレベルが落ちたとしても、二人以上で戦うなら、想定外の事は起こらないと思います」


「…………そうですね。必ず二人以上で挑むのであれば、危険性は減るかと。しかし、全員が同じ学園ではないのですよね。連携力の方はどうなのですか?」


「うちに来てた時に全員タッグを組んで戦り合ったり三人で組んで戦り合ってたりしてたから、全くかみ合わねぇってことはねぇだろ」


ディムナとダスティンは長くガルフたちと共に戦ってはこなかったが、ここ最近は手合せを行う機会もあり、ある程度お互いの動きに理解があった。


そのため、一先ずイシュドたちは今日も紅鱗の地へ調査へ向かうことに決めた。

ただ、その前に先日と同じく冒険者ギルドへと向かう。

喧嘩を売られるかもしれない? ナイスな受付嬢とギルドの行動によって、その可能性は限りなく低い。


そしてイシュドとしては、名前や情報だけでヤバいと感じるモンスターはなるべく頭に入れておきたかった。


(……一応、昨日と出されてる情報は変わらねぇな)


クエストボードや情報掲示板に張られている内容に変化がないと分かり、ギルドから出ようとした時、イシュドの耳に少し気になる会話が入った。


「チッ、学生如きが調子に乗りやがって」


「あいつらもここは坊ちゃん嬢ちゃんたちが来るような場所じゃねぇってのによ」


「これで二組目だぜ、ったくよ」


(二組目?)


自分たち以外にも学生が来ている。

そう捉えられる冒険者たちの会話が気になったものの……イシュドは即座に頭の中から消した。


まだガルフたちだけで対応出来ているが、今後対応出来ないモンスターが当たり前のように現れる。

そうなれば、イシュドとしても保護者気分ではいられず……迫りくるモンスター以外の襲撃者の事も頭の片隅に置いておかなければならない。





「そういえばイシュド様」


「なんだ、ジャレス」


「婚約者って見つかったんですか?」


二日目の調査を始めてから約一時間後、ジャレスがいきなりぶっこんだ質問をイシュドに投げてきた。


「……なんだそれ? 俺、そういうのが目的で学園に入学したわけじゃねぇぞ」


当然、イシュドとしても家を出る際にそういった目的を達成してくると宣言もしていないため、本当にいきなりぶっこんだ質問をされて少々驚いていた。


「ジャレス」


「いや、だってリベヌも気になるでしょ。実はアルフレッド様やロベルト様もお気になさってたみたいで、実際のところどうなのだろうと思って」


イシュドの祖父であるアルフレッド、曾祖父であるロベルトが孫であるイシュドにそういった相手が出来たのかと気になっている……というのは、決してジャレスが独断でそういった人物がいるのか聞きだす為の餌として適当に口にしているわけではない。


本当に孫の中でも異質なイシュドに、将来的にそうなりそうな相手は出来るのかと、口にすることが何度かあった。


「アルフレッド爺ちゃんもロベルト爺ちゃんもそんな事気になってんのか?」


「はい。そう仰ってましたよ」


「ふ~~~~ん。つってもなぁ~~~……マジでそういうつもりで学園に入学したわえけじゃねぇし、今そういう奴が出来たところでって感じなんだよな」


イシュドは……前世でこそモテるタイプではなかったため、彼女が……そういった相手が欲しいと思っていた。


しかし、死んで異世界に転生してから楽しいことがあり過ぎて、正直彼女などどうでもいいという考えに変わってしまっていた。

既に十五を越えており、夜の店に行くことも珍しくなく、現在でも王都の店で夜の大乱闘を楽しんでいる。


当然ながら、この世界でもそういった相手がいた場合、夜の店に行けば背中からナイフを投げられてもおかしくない。


そのため、イシュドとしては本当にそういった相手は要らないというのが現状。


「イシュド様は強いですしカッコ良いですし、モテるんじゃないんすか?」


実家は辺境伯家であり、高等一年次で三次職に転職している超猛者。

見た目も決してジャレスが大袈裟に言っていることはなく、十分イケメンの部類には入る顔を持っている。


それだけを見れば確かにモテそうだが、ジャレスは少々レグラ家の基準に寄った内容で考えてしまっていた。


「ば~~~か。ドン引きされてるに決まってんだろ。こっちじゃあ、紳士的なアドレアスみてぇな性格してる奴がモテるんだよ」


いきなり褒められた? アドレアスは嬉しくはあるものの、イシュドを下げてしまってないかと思い、どういった顔をすれば良いのか分からなかった。

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