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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第418話 揉める

「ん~~~~……いらん心配だったか」


紅鱗の地に足を踏み入れ、行われたファーストバトル。


相手はレッドゴブリンというDランクのモンスター。

たかがゴブリンと侮るなかれ……相手が集団であれば、油断せずとも……ルーキーの域を抜けた冒険者たちが殺されることは珍しくない。


しかし……結果は秒殺。


イシュドやジャレス、リベヌがやれやれといった表情で手を貸すことはなく、一切の苦戦すらなく、ガルフたちはレッドゴブリンを秒殺した。


「お疲れさん。良い戦いっぷりだったんじゃねぇの」


ガルフたちは……基本的にセーブすることなく戦った。

最たる例を挙げるなら、ガルフはほんの一瞬だけ闘気を使った。


レッドゴブリンとはいえ、今のガルフがDランクモンスターを相手にそこまでするのは……という苦言は、非常にナンセンスであった。


結果として秒殺されたものの、レグラ家の領地でモンスターと戦ったことがある彼らは即座に理解した。

目の前のレッドゴブリンたちは、あの地に生息している個体と、なんら変わらない強さを有していると。


「ちょっと、慎重過ぎなかったかな」


「別に良いだろ。まっ、俺はお前らがどっちの選択を取ったとしても、悪いとは思わねぇし」


強敵ではあるものの、現時点でのガルフたちであれば、タイマン勝負であればおそらく勝利出来る。

だからこそ、レッドゴブリンを相手に……遊ぶという選択肢もあった。


「……正直なところ、この地の雰囲気もあって、何かを試そうという気にはなれませんわ」


「私もミシェラさんと同じ意見です」


「俺もだな~~~。つか、レッドゴブリンのくせに無茶苦茶凶悪って感じの雰囲気零してたしな」


普段はめんどくさがり屋なフィリップではあるが、ミシェラたちと同じく本気を出し、あっという間にレッドゴブリンを秒殺した。

だが、過去に遭遇したことがあるレッドゴブリンと比べて、段違いの圧を、凶悪さを感じた。


「……そういえば、冒険者ギルドクエストボードにバーサーカーソウルを使うレッドゴブリンがいるという情報が記されていたな」


「あぁ~~、そういえばそんな情報あったな。ってことは、今俺らが殺したレッドゴブリンのトップが、そいつってことか?」


「どうだろうな」


「違うんじゃないかな~~」


「おそらく違うかと」


フィリップの予想を、三人の狂戦士がぶった斬った。


「そうなんか? モンスターの中だと尚更強くて凶悪な奴ってのは、カリスマ性がありそうだけどよ」


「間違ってはねぇと思うが、俺が遭遇して来た中だと、基本的に単体で行動してたんだよな」


「俺も同じっすね~~」


「そもそもな話、バーサーカーソウルをまともなレベルまで使えるような個体でなければ、群れで戦うというのはデメリットしかありません」


「……そうか。そういうもんだったな」


イシュドがバーサーカーソウルを使う際、ある程度の冷静さを保って行動していたからこそ、フィリップたちは少し誤解していた。


「それと、これは個人的な感想ですが、バーサーカーソウルを会得したモンスターは一人で戦うことを好む傾向があります」


「なるほど……それじゃあ、それはそれで好ましい……って感じか?」


フィリップの言葉に、ガルフたちは一斉に頷いた。

元々紅鱗の地で調査依頼を行うことに反対派だったフィリップとしては、参加したからにはそれ相応の働きをしなければならないとは考えていた。


ただ、ガルフたちが望むのは確実な自信の成長。


だからこそ、バーサーカーソウルを使うレッドゴブリンがソロで行動している可能性が高いという情報は、非常に有難かった。


「……お前ら、目を付けてるモンスターがいるなら、先に誰が戦うか決めといた方が良いぞ」


過去、その件で揉めてレグラ家の三男であるミハイルとモンスターそっちのけでバトルをしてしまった経験があるイシュド。


それを知った父から……流石に叱りを受けることとなった。


「複数人じゃなくて、一人で戦るつもりなんだろ。だったら、先に決めとかねぇと揉めるぜ」


誰がバーサーカーソウルを使うレッドゴブリンと戦うか……まず、戦いたいと思ったのはガルフ、ミシェラ、イブキ、ダスティンの四人。


そこからじゃんけんで決めることとなり、勝者は…………ガルフ。


「なんでお前ら二人は参加しなかったんだ?」


「気になる個体ではあるが、他にも一人で……本気で戦うに相応しいモンスターと遭遇するだろう」


「私もディムナと同じだね」


「はは……良いんじゃねぇの」


他の強敵と遭遇した際、既にソロで戦ったことがあれば、無理にじゃんけん勝負に参加は出来ない。


「強敵との戦いを望む姿勢は素晴らしいとは思いますが、本来に目的を忘れてしまってはならないかと」


リベヌの一言に、ガルフたちはハッとした表情を思い浮かばせ、先程のレッドゴブリン戦を振り返り、脳内で感想を纏めていく。


だが……全員が脳内で感想を纏めるよりも先に、新たな襲撃者が襲いかかる。


「「「ッ!!!!!」」」


襲撃者の正体は、フレイムウルフ。

Cランクのモンスターであり、火属性の狼。


彼らの襲撃に反応したのは、ダスティンとミシェラ、そしてイブキ。


「ハァアアアアアアッ!!!!」


「疾ッ!!!!!!!」


「っ、ッ…………破ッ!!!!!!!」


事前情報で知っており、先程のレッドゴブリン戦で明確に体が、脳が認識した。


ここにいるモンスターは、全てランク通りに強さを捉えれば、手痛い目に合うと。

そのため、三人は最初から全身全霊でフレイムウルフを討伐しようと動く。


「…………流石、イシュド様から教えを受けた方々ですね」


「俺はただ当たり前の事を教えただけだ。それを……一年も経たずに、きっちり実戦でやれるようになってるのは、紛れもなくあいつらの力だ」


決して嘗めてかからない。

それだけではなく、いかにして最短経路で攻撃を与え、最短時間でフレイムウルフを殺すか。


常にそれを考えて動かなければならない場所であると解っている。

加えて、ダスティンたちはただスキルを、魔力を多く消費すれば良い訳ではないことも理解している。


今日一日、紅鱗の地で活動し続ける為に、無駄なく……それでいて惜しむことなく、非常に効率よく自身の力を振るい、目の前の敵を粉砕する。


(…………とりあえず、今のところ合格点をやっても良さそうだな)


同性代たちの戦いっぷりを前にし、イシュドは小さく口端を吊り上げるのだった。

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