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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第417話 忘れていた常識

「「「「「…………」」」」」


受付嬢がイシュドという人間に伝えた言葉を聞き、バカ絡みをしようとしていた冒険者たちは足を止めた。


言葉の内容から察するに、自分たちがあの集団に絡めば……あっさりとトップの人間から罰を下される。

もしくは切り捨てられる。


さすがにそれを察せないバカはおらず、一旦思い留まった。


「へぇ~~~~……有難い気遣いっすね。けど、交流ぐらいは別に良いと思ってるんすよね」


「そうですか。誰が相手であろうと咬みつき、咬み殺す狂戦士と聞いていましたが、その様な冷静な考え方も出来るのですね…………ギルドに所属する身としては、イシュド様がその様な考えを持っているにもかかわらず、交流中であれば良いのだろうと冒険者たちがバカな行動を取らないと信じたいものです」


「「「「「っ!!!!」」」」」


イシュドを馬鹿にするのではなく、イシュドの存在……考えを利用し、バカな考えを持ってそうな冒険者たちに改めて釘を刺す受付嬢。


見事な釘刺しだったのか、幾人かの冒険者たちは焦って明後日の方向に視線を向ける。

彼女が男性冒険者たちからの人気が高いという事もあり、ギルドマスターからの言伝よりも効果があったかもしれない。


そんな受付嬢を見て、イシュドは思わず笑い声を零した。


「はっはっは!!!!!! 良いね、あんた。良い性格してるよ」


「どうも」


「どうよ、今夜あたり一杯」


「嬉しいお誘いではありますが、夜遅くまで仕事がありますので」


「あっはっは!! なら仕方ねぇな」


役目を終えた受付嬢は最後、イシュド達にペコリと一礼し、カウンターの内側へと戻って行った。


「い、イシュド! あなた何をしてますの!!!」


すると、すかさずミシェラから強烈なツッコミが入った。


「何って、ナンパに決まってんだろ」


「だから、何故その様な事を今、ここでしましたの!!」


ミシェラからすれば、全くもって意味不明な行動であった。

ただ、イシュドからすれば別に特に珍しい行動ではなく、だからこそジャレスとリベヌは特にツッコむことはなく、珍しい物を見る顔にもならなかった。


「良い人だな~~って思ったからに決まってんだろ」


頭の回転が早い。

クールで仕事が出来る系の美人であり、スタイルもミシェラほどデカくはないが、良い万乳を持っている。

そして……強い。


ザっとした見解ではあるものの、イシュドから視て先ほどの受付嬢は三次職に転職しているレベルの実力を有していた。


中々にイシュドの好みを兼ね備えていたため、あっさりと乗ってくれるとは思っていなかったが、それでもやれるならば本気で一晩共にしたいとは思っていた。


「だからって、何故ここで」


「今とかじゃねぇと、サラッとナンパとか出来ねぇだろ」


イシュドの言葉が耳に入った幾人かの男性冒険者は、その通りだと言わんばかりに頷いていた。


野獣のようにがっつくのではなく、話のついでの様に行う事で、別にがっつりとは狙われていないという印象を持たせる……というのが、遠回りようで実は近道だと考える者が一定数いる。


「まぁまぁミシェラ、一度落ち着きましょう」


「っ……そうですわね。変な事でエネルギーを使いたくありませんわ」


「ナンパぐらいで大袈裟だな~~~。お前らだって、ナンパぐらいしたことあるよな?」


ガルフたちにパスを投げるイシュドではあるが、その言葉に頷いてくれたのはフィリップだけであった。


「マジ?」


「マジだね。その、一応立場が立場だからね」


「あぁ~~~~、そうか………………まっ、そういうもんだよな。ちょっと忘れてたぜ」


基本的に、アドレアスたちは立場がある人間。

あまり女好きという印象を持たれるのはよろしくない。


中には立場を上手く活用してという人間もいるが、少なくともアドレアスたちはそういった男ではなかった。


(ちょっと感覚が麻痺してたな)


イシュドは前世での常識から、それが普通ではなかったと事を思い出した。


「とりあえず、見ときてぇ情報は見れたし、行くとするか」


イシュドだけではなくミシェラたちもある程度覚えておかなければならないであろう情報のインプットは完了。


一向は早速ギルドを、街を出て紅鱗の地へと向かった。





「な~~ほどねぇ~~~~……紅鱗の地、かぁ」


通常の森と、紅鱗の地の境に到着。

何故、その境が解るのかというと……明らかに雰囲気が異なっており、血生臭さも感じる。


(モンスターの強さも要因の一つだろうが、この感覚もルーキーたちが探索出来ない要因の一つだろうな)


血の匂いは、死の匂い。

全ての冒険者がそう考えている訳ではないが、全方向からそういった匂いを感じるとなれば、未熟者にとっては毒が霧散してるのと変わりない。


「イシュド」


「気にすんな。気にしたところでしゃあねぇってやつだ」


「……そうですわね」


気にしたところで仕方ない。

適当に流しているわけではないと、ミシェラは今一度自分たちが訪れた場所を思い出し……心の帯を締め直す。


(こういうところも、調査内容……ってことで良いんかね)


レグラ家の三人からすればドキドキワクワクする場所ではあるが、イシュドは一応学園から調査依頼を受けた身。

そのため、闘争心や好奇心が湧き上が中でも、ある程度依頼のことに関して考えていた。


「……イシュド。おそらく五から……七ぐらいかと」


「っぽいな」


イブキとイシュド、二人が確認を取っている間に、彼らを狙う者たちが仕掛け始めた。


「「「ギギャギャ!!!!」」」


襲撃者の正体は、レッドゴブリン。

ゴブリンの上位種であり、ランクはD。


たかがゴブリンと侮ることは出来ず、通常種のゴブリンと比べて身体能力が高いだけではなく、非常に好戦的な性格をしている。


(数は六か……こんぐらいなら、問題ねぇか)


イシュド、そしてジャレスとリベヌは手を出さない。


「負けんなよ~~~」


それだけ口にすると、当然と言わんばかりにガルフたちは己の得物を抜き、紅鱗の地でのファーストバトルを始めた。

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