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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第412話 本来なら、喜ばしい

「マジで奢って貰って良いんすか?」


「あぁ、そう言ってるだろう」


「俺たちの奢りだから、存分に呑んでよ」


レグラ家の騎士であるジャレスと魔術師であるリベヌが王都に訪れた夜……イシュドにバイロンとシドウはバーで酒を奢っていた。


卒業しているのであればまだしも、在学中の生徒に酒を奢っても良いのか? と思われるかもしれないが、バイロンとシドウもイシュドには世話になりっぱなしだという自覚がある。


学園長もそれを理解している為、仮に他の生徒たちに知られ、どうこう言われたとしても「黙らっしゃい!!!」と一括して強制的に終わらせる。


「……ある程度の、話しは聞いた。聞いたが……中々に、恐ろしい者たちを読んだな」


「そうっすか? ちょっとあれなところはあるっすけど、ちゃんと俺の言う事は聞いてくれるんで大丈夫っすよ」


「そこではなく、職業的な意味でだ」


重戦士、狂戦士としての道を歩み、重凶戦士に至ったジャレス。

僧侶、狂戦士、ハイ・ウィザードという異例の道を辿っているリベヌ。


バイロンもそれなりに知識が豊富であり、珍しい経歴を辿った人物がいることも知っているが……その中でもリベヌは特に異例中の異例だった。


「あぁ、そっちすか」


「そうだ。ガルフたちも驚いただろう」


「驚いてたっすね~~~~。つってもリベヌに関しちゃあ、俺たちも驚いてたんで、それが普通の反応っすよ」


軽く笑って流すイシュド。

しかし、教師であるバイロンは違った考えを持っていた。


「そうだな……しかし、彼らはその普通ではない人物に出会ってしまった」


「? そんな深刻なことっすか?」


「話を聞く限り、彼女には後衛職の才はあったけど、前衛職の才はなかったんだよね。それに加えて、一次職と三次職はどちらも後衛職だけど、行う内容は違う」


イブキの言葉に、イシュドはその通りだと頷く。

何が問題なのか、イシュドはまだ解らない。


「えっと、そんな深刻に悩むことっすか?」


「普通なら、そこまで悩むことではないと思うよ。ただ、世間一般的にはガルフ君たちも普通ではない」


「……あいつらの心が折れると?」


圧倒的な強者に出会った際、その差に絶望して心が折れる。

その気持ちは……前世の記憶がまだ残っているイシュドは、解らなくはない。


だが、その理屈でいくとイシュドと出会った時点でガルフたちの心が折れていることになる。

しかし、現在彼らはイシュドとの差に心が折れるどころか、追いつこうと邁進し続けている。


「そこではない。寧ろ、折れることはなく……更に向上心を加速させるだろう」


「良い事じゃないんすか?」


「……本来なら、喜ばしいことだ。だが、今回に限っては……判断が難しい」


「俺も、バイロン先生と同じ意見かな」


バイロンが語る通り、イシュド以外の……現時点ではエリヴェラ以上の猛者を目の前にしても、彼らの心が折れることはなく、更に向上心を滾らせていた。


ただ、今回護衛として現れた二人の内リベヌの成長過程が、彼らの心や考え方に大きな影響を及ぼすとバイロン、シドウの二人は考えた。


「イシュド。彼女……リベヌには、後衛職の才はあれど、前衛職の才はなかったのだろう」


「俺の記憶が正しければ、そうっすね。丸っきりないってわけじゃないとは思うっすけど、明らかに後衛職としての才の方が上っすね」


「だが、狂戦士としての強さも手に入れているのだろう」


「っすね~~。確か……俺も全部は覚えてないっすけど、二年ぐらい前に接近戦だけでBランクのモンスターを一人で討伐したらしいっすよ」


Bランクのモンスターを一人で討伐。

イシュドの記憶は正しく、リベヌは確かにソロでBランクモンスターを討伐した。


とはいえ、レグラ家が治める領地に出現するBランクモンスターということもあり、並みの強さではなく……片腕を半壊されながらも、なんとか討伐した形であった。


「……お前と出会った時点で気にするだけ無駄だと思っていたが、また自分よりも若い者に恐ろしいと感じるとはな」


「リベヌに関しては、そう感じてもおかしくないんじゃないっすか。それで、今回の場合は何がどうヤバいんですか?」


「ガルフだけではなく、ミシェラたちも一般常識の中では普通ではない存在だ。だが、そんな彼女たちが努力や意志、執念によって奇跡とも言える道を歩んだ者と出会った。それを知った彼女たちが、自分たちの道を振り返った際……どう感じると思う」


「どうって言われても…………ん~~~~」


イシュドは酒を呑みながらも、バイロンの言葉に対する感想を考える。

まだ酔いは回っておらず、考えられる頭は残っているが……五秒、十秒、数十秒……真面目に考え込むも、それらしい考えは思い浮かばなかった。


「……解んないっす」


「自分たちがこれまで取り組んできた姿勢に……自分たちが本気だと思っていた意志に、行動に疑問を覚えてしまう」


「それ、は…………いや、けど……あれっすよ。あいつらの前では言わなかったっすけど、今ハイ・ウィザードのあいつの経歴からすれば、二次職のやつは完全に寄り道っすよ」


この先、リベヌがどういった戦闘者としての道を進むのかは、イシュドも解らない。


しかし、リベヌが二次職で狂戦士という選択を取ったのは、守られながら戦うのが気に食わないという理由と、レグラ家の狂戦士たちに憧れの気持ちを持ったというのが主な理由。


信念と呼べるほどの心構えを持ち、その道を歩んだわけではない。


「それでも、彼女はソロでBランクモンスターを討伐出来るほどまで、真剣に……本気で己を鍛え続けたのだろう」


「……っすね」


「加えて、一つ目が戦士職でありながら、次の職で魔法職に転職するのは困難を極める。仮に、その者に魔法の才があったとしてもだ」


「けど、彼女は魔力や魔法への理解を深めることで、可能にしたんだよね」


「…………つまり、それらの……これまで進んできた別の道に進むことに躊躇がなく、努力という意志で達成したリベヌの本気と比べて、自分たちの本気は本当の意味で本気じゃなかったって感じると」


一応、二人が言いたい事は納得出来たイシュド。

しかし、それでもまだ疑問が残っていた。

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