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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第395話 一番厄介なのは……

「珍しい組み合わせだな」


「あら、イシュド」


「はぁ、はぁ……イシュド、助けてくれ~~~~~」


ある訓練場へイシュドが入ると、中には汗を流すクリスティールとフィリップがいた。


勿論二人は、実は……といった関係ではなく、単純にフィリップがほぼ強制的に拉致られ、クリスティールとのタイマン勝負を繰り返していたのである。


「クリスティールパイセンが俺をイジメるんだよ~~~」


「イジメるだなんて、人聞きが悪いですよ、フィリップ。ただ模擬戦を繰り返し行っていただけじゃないですか」


クリスティールの言う通り、模擬戦を繰り返し行っていただけというのは間違いないが……結果はクリスティールの全戦全勝。


フィリップからすれば、いきなり半ば強制的に連れてこられて、この仕打ちはなんなんだと不満を零したい。


「……対人戦なら、フィリップが一番面倒で厄介だから、ってところか? 会長パイセン」


「えぇ、その通りです」


何故、クリスティールがわざわざフィリップを模擬戦相手に選んだのか、イシュドは一瞬で把握。


総合的な実力で視るなら、フィリップより上の学生は何名かいる。

攻撃力に関しては闘気を使えるガルフの方が上であり、スタミナに関してはミシェラが上回っている。

総合的な戦闘技術であれば、イブキが一歩先を行っている。


だが、対人戦において戦り辛い、厄介だと感じるのはフィリップが一番というクリスティールの考えは、間違っていなかった。


「学園にいる間に磨くのであれば、やはりそこを重点的に磨かなければなりませんので」


「なるほどね……まっ、対モンスターに関しちゃあ話を聞いた限り、あんまり戸惑うこともねぇだろうしな」


「……とはいえ、まだ完璧ではないと言いたげな顔ですね」


クリスティールも、まだ対モンスター戦の動きが完璧だと……改善の余地はない、などとは思っていない。


そのため、対人戦にも対モンスター戦の技術も優れているイシュドの意見は是非聞いておきたい。


「俺が完璧を語るのはあれだが……会長パイセンに経験が足りないとなれば、翼を持つ奴らとの戦闘だ」


「鳥獣系やワイバーンなどとの戦闘経験が足りないと」


「そうだ。あいつらは基本的に地上にいねぇ。降りてくるタイミングを狙えば良いんじゃねぇかってのは、そりゃ正しい判断だが、タイミングに慣れねぇと逆にやられる」


「……もしや、イシュド君もやられた経験があるのですか?」


「あるに決まってんでしょ。俺をなんだと思ってるんすか」


「異常な狂戦士ですね」


「…………俺はあれっすよ。学ぶ姿勢が他の連中と比べて早い段階で違ってて、だから吸収するのは早かった。別に特別戦闘センスがズバ抜けてた訳じゃないんすよ」


「そうでしたか。では、そのやられた戦いでは、どのようにして対応したのですか?」


「面倒だったんで、二回目にわざと筋肉で受け止めて足を掴んで、思いっきり地面に叩きつけた」


ちゃんと狂戦士らしい内容に、二人は特に驚くことはなく、それはそれでイシュドらしいと感じた。


その後、丁度良い時間だったということもあり、三人は誰もいない生徒会室に移動。

イシュドとフィリップはクリスティールが淹れた紅茶を味わっていた。


「……前から思ってたっすけど、令嬢が淹れる味ではないんじゃないっすか?」


「そう言ってもらえると嬉しいですね」


フィリップの感想に笑みを零しながら応えるクリスティール。

貴族として、紅茶の味が解るフィリップに褒められると自信に繋がる。


「そういえばイシュド、前からちょこちょこ溜息吐いてるよな」


「ん? ……かもな。それがどうかしたか」


「いや、どうかしたかって……どうかしたんじゃねぇのか?」


イシュドが溜息を吐くというのは、何か特別な意味を持つのか?

答えは……イエスだった。


本人は気付いていないが、イシュドは基本的に面倒だと感じる問題を抱えている時以外、溜息を吐かない。

そんなイシュドが、王都に戻って来てから何度か溜息を零している。


「私もフィリップと同じく、イシュド君にとって苦労を感じる問題を抱えているのかと思いましたが」


「苦労っつーか……あぁーーー、そうだな。問題っちゃあ、問題ではあるか」


どういった問題なのか、イシュドから聞いた二人。

フィリップは腹を抱えて笑い、クリスティールは真剣な表情でイシュドの悩みに共感していた。


「なっはっは!!!! そ、そいつは、確かにヤベぇな……だっはっは!!!!!」


「フィリップ、あまり笑い事ではありませんよ」


「い、いやだって……ぶっ!! あっはっはっはっはっは!!!!!!!」


クリスティールが注意するも、フィリップの笑いは止まらない。


友人のそんな姿を見て、イシュドは苛立ちを覚えることはなかった。

何故なら……自分が逆の立場なら、絶対に爆笑してしまうから。


「別に放っておいていいっすよ、会長パイセン。俺もなんつーか……あの人たちの気持ちは解らんくねぇけど、もうガキじゃねぇんだから自分でやれって思いもあるんで」


中にはまだ年齢的には大人になっていない女性もいるのだが……イシュドからすれば、そんな事知るかと吐き捨てたい。


「あ~~~、笑った笑った……けどよ、イシュド。俺はそこまでレグラ家の女性陣と話したことはないから知らんけど、仮に自分たちでやれよっと自由に動かした場合、それはそれで色々と問題が起きんじゃねぇの」


「…………ちっ! フィリップの言う通りになりそうだな」


王都に多数のレグラ家が有するバーサーカー兼アマゾネスが訪れる。

同じレグラ家の人間として、イシュドとしては……正直なところ、それはそれで面白そうという思いはあれど、おそらく責任を問われる未来を考えると、面倒という気持ちの方が勝る。


最悪なのは……バーサーカー兼アマゾネスたちが国境を越えて、カラティール神聖国に向かった場合である。

入国しただけで国家侵略と思われることはないだろうが、多数のバーサーカー兼アマゾネスが聖都に入り、アンジェーロ学園に入学した場合……奇襲を仕掛けられた!!?? と、勘違いされる可能性大であった。

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