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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第226話 神隠し

「おいおい、もしかして俺らのってことは……イシュドたちも依頼を受けてたのか?」


「おぅ。つっても、俺は基本的にサポートがメインだったけどな」


イシュドの周りから、いつものメンバーがいなくなると、絶対に面倒事が起こる……という訳ではないが、それを懸念していたバイロンがガルフたちには内緒でイシュドたちに依頼を受けてみないかと提案していた。


「俺らもお前らと同じく結果としてBランクモンスターの討伐……アラクネの討伐に向かったんだよ」


当然の事ながら、イシュド一人で依頼を受けたのではなく、ミシェラやフレアたちと共に……計五人で依頼を受けた。


教師の一部は、他国の王族であるフレアがBランクモンスターが関わっている可能性が高い依頼に参加するのは如何なものかと口にするもがいた。

実際、その考えは何も間違ってはいない。

本来であればフレアに万が一のことがあれば、国際問題に発展する可能性が非常に高い。


しかし……今回のフレアの留学に関して、バトレア王国としてはあまり受け入れたくなかった。

何故なら目的が見え見えであり、関わろうとしている人物が本気で怒りを爆発させた場合、自国他国関係無しに不利益を被るのが目に見えている。


元々イシュドと親交を深める為に留学しに来た。

であれば、こういった依頼を受けて共に討伐へ向かうことも、親交の一環となる。

無理を押し通そうとしてきたのは向こうなのだから、そこまで気にする必要はない。


といった感じでバイロンが進言したことで、保守的な考えを持つ教師たちも一応納得した。


「アラクネ…………女郎蜘蛛のことでしょうか?」


「そうそう、その認識で合ってるぜ、イブキ」


アラクネと聞いて首を傾げるイブキと、女郎蜘蛛という単語を聞いて首を傾げるガルフたち。


(この人は……本当に大和について深く知ってるのですね)


話は戻り、ガルフは元々受けた依頼が討伐系の依頼ではなく、調査系の依頼であることを伝えた。


「神隠し、ねぇ。偶にチラッと噂で聞くけど、アラクネが関わってたってことは、保存食にされてたってことか」


「そんな感じだったな。ぶっちゃけ蜘蛛系のモンスターはあんまり好きじゃねぇんだけど、あの光景はまぁまぁ薄気味悪かったな」


「「「「っ!!!!!」」」」


ミシェラたち四人は当時の光景を思い出し、顔色が悪くなる……奥歯を噛みしめるなど、表情はバラけているが、その様子からフィリップたちも何となく想像が出来た。


「イシュドも、その……アラクネに、人間たちが保存食にされている光景は、初めて見たの?」


「おぅ、そうだな。俺は………………一回だけ戦り合ったことがあったか? でも、そん時はアラクネが同行する前にぶつかったから、そんな光景は見たことがなかったんだよ」


レグラ家に仕える戦闘職の者たちも同じく、基本的にアラクネがせこせこと拠点を確保し、保存食を手に入れようとする間に狩られてしまう。


冒険者たちの中にはアラクネの恐ろしさを十分理解している者もおり、リスクを背負っても絶対に殺そうとする。

そのため、本当にイシュドは人間が保存食にされている光景を見たことがなかった。


「……なんか、流石イシュドって感じだな」


「んだよ。いきなり褒めてもなんも出ねぇぞ。つっても、さっき言った通り、俺は基本的にサポートしかしてなかったけどな」


「そりゃあれだろ。あんまり戦り合いたい相手じゃねぇからだろ」


「あっはっは!!!! まぁな」


まぁな、ではない。

超主戦力のくせにメインアタッカーとして戦わないとはどういうことか……と、普段のミシェラであれば思いっきりツッコんでいる。


しかし、アラクネとの戦闘時……それはミシェラにとって、寧ろ好都合であった。


「それじゃあ、ミシェラたちがメインで戦ったんだね」


「いつになく気合入ってたからな。俺はとりま糸にぐるぐる巻きにされてた村人とかを先に救出してた」


ミシェラたちは、ガルフの様にほぼ真っ白な状態からザ・レグラ家の考えをぶち込まれてはいない。


人質は、生きているからこそ人質としての意味を成す。

その考え自体は理解出来るものの、だからといって人質の存在を無視して攻められるかは別問題。


「重要なことだね。それで、ミシェラたちはどの様に戦っていたんだい?」


「……前衛三人、後衛一人の基本的にフルアタッカーですわ」


「な、なるほど」


「言っておきますけど、それしかフォーメーションがないのですのよ!!」


これまでそういったフォーメーションで戦ってきてはいたが、それでも頭悪いフォーメーションというイメージが強く、その考え自体は間違っていない。


フレアは後衛確定であり、得意魔法は攻撃がメインであるため、結局後衛アタッカーとなる。

そして四人の中で唯一タンクとして動けそうなヘレナは……アラクネが糸という拘束に優れた武器を使う状況から、ただの防御よりも攻撃が最大の防御になるため、結局全員がアタッカーとして動くという戦法しか取れなかった。


「いやぁ~~、結構爆笑だったな!!」


サクッと囚われていた者たちを救出した後、イシュドはのんびりと四人とアラクネの戦いを観戦していた。


「あなたねぇ……少し、性格が悪過ぎるんじゃなくて」


「んなもん、今更な話だろ」


アラクネ戦……鬼竜・尖やミノタウロスの様な身体能力に優れたパワータイプという訳ではなく、洞窟という戦場を自由自在に動き回り、糸という拘束武器を使うトリッキータイプに最初は苦戦を強いられた四人。


模擬戦の際、イシュドは偶に細剣や双剣、細剣の二刀流などの技術がメインの戦い方をすることもあるが……技術力があるから厄介といった次元ではない。


三次元の戦いを強制されることもあり、中々四人の攻撃が当たらない時間が続くも……そこでミシェラが泥臭くも飛び込んで斬撃をお見舞いし、アラクネの脚にダメージを与え始めた。


その結果、その泥臭さが伝播し、泥臭くとも勝利を掴み取るというスタンスでアラクネの起動力を削り、最後はヘレナのウォールブレイカーによって仕留められた。


「ってな感じだったな~~。いやぁ~~~~、最高に泥臭くて良い戦いだったぜ」


イシュドにとって、寧ろ好物な戦いである。

ただ、ミシェラがクリスティールの様な華麗な戦いぶりで敵を仕留めるのを目標にしていることを知っているため、イシュドにとって好物でありながら良い意味で爆笑してしまう一戦となった。

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