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転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。  作者: Gai


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第205話 デカい

「…………」


ブスっとしたふくれっ面をしているミシェラ。


久しぶりに本気で双剣を使うイシュドに挑み、結果次第ではデカパイ呼びを撤回させるはずだったが……見事に薄皮一枚斬ることも出来ず、完敗。


現在、イブキやフレア、ヘレナの四人と女子会をしているのだが、ずっとふくれっ面が直らない。


「その、先日の様なことは、よくあるの?」


重い空気を何とかしようと、ヘレナが切り出した。


「そうですね…………ここ最近はなかったこと。先日ほど気合が乗っていた試合は、久しぶりではなかったでしょうか、ミシェラ」


「…………そうですわね」


イブキの言う通り、先日の試合はデカパイ呼びによるイライラが爆発した流れで行ったものではあるが、気合が乗っていたのは間違いなかった。


だからこそ、悔しさが一際大きい。


「もしかしたらだけど、イシュドとミシェラは……腐れ縁、というやつなの?」


「違いますわ。あのノット紳士と出会ったのは、高等部に上がってからですわ」


「そ、そうなの?」


当然ながら、事前情報としてイシュドが高等部からフラベルト学園に入学したことはヘレナも知っていた。

知っていたのだが……二人の雰囲気ややり取りを見ていると、かれこれ十年ぐらいは言い争っているように思えたヘレナ。


「喧嘩するほどなんとやら……という関係でもないのですね」


「当然ですわ。あいつは、いずれ絶対にぶった斬る標的ですわ」


今のところ、ミシェラの絶対ぶった斬るリストにはイシュドとフィリップの名前が記されている。


「そ、そうなんですね。では、出会った時からお二人の間に因縁? が生まれたのですね」


「因縁……私にとってはそうですわね」


「先程、イシュドの事をノット紳士と言っていたけど、初対面で失礼な事を言われたの?」


「そう…………………………いえ。それは、違いますわ」


それなり失礼な男ではあったが、それでも最初……そもそもイシュドにミシェラが絡んでしまった理由は、嫉妬の暴走。


つまり……完全なミシェラに私情である。


試合に勝てば、自分とデート出来る権利を「ふざけんなよデカパイ」と言われたことは根に持っているが、それでもフレアやヘレナに対し、自分の都合の良いように語る気にはなれない。


「面倒な接し方をしてしまったのは、私ですわ。ただ……あの試合の前から、そして試合が終わった後もあの男は…………ッ!!!!!!」


思い出すだけで怒りがこみ上げ、綺麗な顔に青筋が浮かぶ。


(…………デカいですね)


(…………デカいのは間違いないね)


(…………デカいですわね)


ミシェラがプンプン……ではなく、ブンブンと怒りを隠さず撒き散らしている時、三人はミシェラがイシュドからデカパイと呼ばれる由縁となった胸に視線を向けていた。


(私もそれなりの大きい方だとは思いますが、それでも……ミシェラさんの方が大きいですね)


(男たちの視線が鬱陶しいと何度も思ったことがあるけど、これは…………うん、女の私でも見てしまうわね)


フレアは留学生としてバトレア王国にやって来た理由的に、イシュドが強い女性にしか興味はないとしても……巨乳というのは、一つの武器であるのは間違いなかった。


イシュドも王女という立場ではあるが、フレアを抱きたいかと尋ねられれば「後で面倒にならねぇなら抱きてぇな」と答える。

故に、目の前のミシェラからはイシュドに対してそういった感情を持ってるようには思えないが……それでもフレアにとっては脅威となる存在という思いを多少持っていた。


「はぁ~~~~~……やはり、あの男は異常な狂戦士ですわ」


「……その言葉、度々口にしていますが、それがイシュドさんの現在の職業なのですか?」


~の戦士、~の魔術師、~の双剣士といった職業名の前に何かしらの言葉が付く、非常に珍しい職業が存在することはフレアも知っていた。


ただ、イシュドの詳しい職業までは知らず、友好的な関係を結びたいと思っているにもかかわらず、ステータスを覗くような真似は出来ない。


「違いますわ。そこは個人情報なので言えませんが、とにかくあの男は異常ですわ」


「いったい、どういったところが異常なのかお聞きしても良いですか」


「……まず、あの男……入学式前にガルフが愚かな男に虐げられていたのですが、そこに割って入ったイシュドは愚かな男を挑発しましたの。その後、愚かな男は挑発に乗ってイシュドを一度殴ったらしいですわ」


「「…………」」


あのイシュドを相手に、挑発に乗ってしまったからといって、殴り掛かる。

その恐ろしいまでの度胸、蛮勇に二人は思わず震えた。


「そしたら、イシュドは一発殴られた後、一発は一発だと宣言して、その場で殴った……いえ、蹴とばしたのかしら? とにかく、強烈な一撃をその場で叩き込んだのですわ」


「つまり……訓練場などに移動してからではなく、そういったやり取りを面倒だと思って……ということでしょうか?」


「相手が同級生であれば、あの男はわざわざそこまで考えないのでしょう」


「イシュドからすれば、本当に一発殴られたので、一発返しただけ。それが平常なのかと」


フレアたちが通っていたカルドブラ王国の学園内でも、生徒同士の衝突はあった。

ただ、基本的に訓練場以外の場所で喧嘩が起きることはなかった。


「そして入学初日から同級生と一対二の変則試合を行い、圧勝」


「確か、それ以降……イブキも含めて何人かの学生がイシュドと一対一で戦ったんですよね」


「……ですわね。その後、一番大きな試合……一対数十の試合が行われましたの」


「す、数十、ですか。そ、それは…………」


「その試合には、同学年以外の学生も混ざっていましたわ。ですが、結果は変わらず圧勝……ひとまず、これが物理的な意味でイシュドが異常だと示すエピソードですわ」


ひとまず……つまり、まだまだ他にもある。

その事実に、二人はまだカップに残っている紅茶が完全に冷めているのに気づかず、ミシェラとイブキの話に耳を傾け続けた。

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