第41話 決闘~盟約に誓って~
今回、タツヤがやり過ぎます。ご注意を!
「こ、この学園では身分をもちだしゅことは禁止だぞ!」
タツヤの身分告白を聞いてトーリスが噛みながら言う。しかし、タツヤや、他の生徒達からすればそれは彼自身にブーメランするだろ!というツッコミができる。
「それをお前が言うか……めんどくせぇな。そうだ!決闘だ!決闘すればいいんだ!勝ったほうが正しい。それでいいだろ!」
タツヤがうんざりした声で言い返す。そして、一転。良い考えだとばかりに提案をする。
そして、それを自尊心馬鹿は同意するのだろうか。
「良いだろう!やってやる!」
馬鹿はおつむまで馬鹿だったようだ。
後ろでソロモンとシルフィが唖然としている。タツヤの実力を知っていればそうだろう。
タツヤは内心で笑いながら(「ちょ、コイツまじか。相手の事も知らずに同意とかw」)インベントリから特殊な紙──魔法契約紙を取り出した。これは貴族や大商人が契約時にこぞって使用するものであり、血の契約に必要な触媒である。
「よし、ならばルールを決めよう。戦闘は明日午後3時に……どこ空いてる?「第一武道館なら空いてるよぉ」なら第一武道館で行う。武器は何を使おうが自由。魔法も同じ。魔道具もな。戦うのはトーリス・フォン・デオーチー本人と俺タツヤ・カンザキ。勝敗は死亡したら負け。そして、負けた者の関係者は勝者本人と勝者の関係者に関知せず、どの様な方法に於いても接触は禁止で破ったら全員死亡。
後は掛けるものだな。俺はシルフィをお前はどうする?」
「僕は……我が家の全財産を掛けよう!」
「よし、ならばこの紙にサインをして、血を付けて名前をなぞれ」
「そんなのは言われないでもわかっている!」
そして、すぐに契約をする。トーリスは馬鹿丸出しであった。
「よし、俺も書いた。次は契約呪文だな」
そして、二人は声を合わせ詠唱する。
『我らは契約を望む これは永遠であり 不滅 我らが血をもって証とする 執行者よ見届けよ 《血盟》』
詠唱が終わると紙が発光し3つに別れ二枚はタツヤとトーリスの体へ、もう一枚は然り気無く監視者として登録されたソロモンの体へ入った。
特殊契約魔法《血盟》──それは破ることのできない契約をする魔法である。そして、呪文に存在する執行者は決闘の際には出現し審判を務め、契約された内容を果たす。
「さぁ、楽しもうじゃないか」
トーリスの地獄が始まる。
◇◇◇◇◇
翌日
『こぉぉーれよりぃー!トーリス・フォン・デオーチーとタツヤ・カンザキの決闘を行います!司会は私マイクが解説はクリントン先生が担当します!』
『ワアァーーーー!!!!』
『これは《血盟》を使った決闘です!この学園では三回目ということですね、先生』
『ええ、これは珍しいことですからね』
『そして、試合に関して注意事項があります。ですがその前に今回の契約内容もといルールを説明しましょう!』
━契約内容━━━━━━━━━━━
1武器、魔法、魔法具の使用は無制限
2戦うのは本人達のみ
3勝敗はどちらかが死亡することで決まる
4敗者関係者は勝者関係者に関知しない
5ルールを守る
6賭けは守る
━━━━━━━━━━━━━━━━
『つまり!死亡するシーンがある訳です!お気をつけ下さい』
そして、マイクのこの言葉の五分後両選手とソロモンが入場した。
タツヤは完全装備。実用性の中に美しさがある逸品。
対してトーリスは装飾過多な鎧に剣だ。
『さぁ、両選手ご入場だ!』
マイクがテンションを上げながら二人を紹介する。
『まずは赤ゲート!ワロスバルス帝国侯爵家嫡男トォオオオオリスゥウウウウウ!フォン!デェエオオオオオチィィイイ!!』
そう、その言い方は地球での格闘技の試合でのアレだった。
『誰もが羨むようなそのルックス!正に貴公子!剣や魔法の腕もその見た目と同様に高い!』
『そして、青ゲート!謎の編入生!そして、その正体はアドル王国皇爵!さらにぃ!新たな国!セフィロダアト神皇国国王!タツヤァァアアアア!!カァアンザァキィイイイイイイ!!!』
『勇者と同じ黒髪に珍しい形の剣を使う謎の編入生!さらに魔法の腕もたしか!なんと多重展開を軽くこなす!そして、その容姿はぁ!超一級!』
『ワアァーーーー!!!!』
会場のボルテージもドンドン上がっていく。
『さあ、両者が中央へと立ちました』
「やぁ、よく逃げないできたね」
「はっ、こっちの台詞だな、ナルシ野郎。ママンにお別れの挨拶はしてきたか?」
「君こそこの世にお別れはしてきたかい?」
「いや、してないな。貴様ごときに負ける要素がないからな」
『両者の間で早くも火花が散ります!そして、試合開始まで三分をきりました』
『マイク君……執行者が表れますよ』
クリントンが言った瞬間、煙と共にスーツを着たコアラが現れた。
「「へ?」」
「やぁやぁ!僕がこの契約の執行者だよ!よろしくね。それじゃあルールを確認してね」
その姿に皆が驚いている間にも執行者は話を進めていく。
タツヤとトーリスは執行者に渡された紙を読み、執行者へと返す。
「確認したみたいだね。
それじゃあ、この決闘を始める前に二人に確認するよ」
それまでの楽しげな声から一転、執行者の声が真面目なものへと変わる。
「このルールに異存はないね?」
「「ない」」
「よろしい。
なら聞こう。君たちはこの盟約に従い戦うことを誓い、同意するかい?」
「誓おう!」
「盟〇に誓って」
執行者の問いに二人はしっかりと答える。
だが、これだけは言おう。
タツヤ…………言うと思ったよ!
「よろしい!
なら……離れてね。ああ、勿論剣を抜いてかまわない。このコインが落ちた瞬間に試合開始だ」
二人は言葉に従い離れる。トーリスは剣を抜く。
そして……執行者が指でコインを弾いた。
一回、二回、三回、四回……何度も回転しながらコインは地面へ落ちてゆく。
キィン
そして、落ちた。
「ヤァアア!!」
少し遅れてトーリスが剣を上段に構え、タツヤに突貫する。普通に見れば中々の早さとキレを持っているがタツヤから見れば、地球に居た頃であっても細切れに出来る程の遅さだ。
トーリスが剣を降り下ろす。剣がオレンジの燐光を帯びる。オレンジの燐光は、この世界での術技を使うと武器や体が帯びる。勿論、威力も高くなる。イメージとしては某VRMMOのソードスキルだ。
そして、タツヤはその剣を避けなかった。
「(取った!)グランディス流【剛斬】」
それを見てトーリスは勝利を確信する。だが……
「グランディス流【剛斬】ね……で?だから何?」
タツヤはソードスk…ゲフンゲフン、術技である【剛斬】を右手、しかも人差し指と中指で挟んで止めていた。
「大体、術技だって魔力を使うってのにそれを考えて使ってない。頭悪いのかな?」
『な、なななんと!!カンザキ選手!デオーチー選手の剣を指で止めています!』
ナチュラルにトーリスをdisるタツヤ。
「ねぇ、これで終わり?期待外れすぎるんだけど……マジで世界さんの方が強いぞこれなら。いや、言葉様のほうが強いか」
「『火よ 矢となり 敵を撃て《火矢》!」
「お、短縮か。でも、遅い。しかも弱い」
至近距離で放たれた魔法をタツヤは左手で払って消し去る。ただ手で払っただけで魔法が消えたのだ。
「ありえない!」
「うるさい、ナルシスト」
トーリスがそれを見て叫び出す。だが、タツヤからしたらトーリスの魔法など児戯に等しい……いや、児戯にも劣る。その為適当に返すのは当たり前であった。そのタツヤの適当な返答に再びトーリスは叫び出す。
「僕は!僕は選ばれしものなんだ!こんにゃ事があっていいはずがない!僕は貴族なんだぞ!ジョブだって英雄の卵を持っていて……転生してチートなんだ!女は全員僕に平伏すんだ!」
「ギャアギャアうるせぇ上に転生者かよ、コイツ転生させた神は後で処刑だな」
トーリスはまたもや禁句を言い放つ。
「そうだ!お前の知り合いも全員犯して…ギャボンツ!?」
次の瞬間、トーリスは壁に激突していた。
「転生してチーレムとかほざいてんじゃねぇぞ、三下!俺の女全員犯すんだってなぁ!調子にのってんじゃねぞ!ぶっ殺してやるよ、転生者」
タツヤは濃密な魔力や、オーラを漂わせながら言う。目なんて完全に据わっており、観客席の観客の一部などは失神している。
「但し、簡単には殺さねぇ。誰に喧嘩を売ったのか絶望の中で理解し後悔しろ。……《疑似不死付与》、《痛覚増幅》」
タツヤはトーリスに魔導を掛ける。属性としては前者が暗黒属性、後者が闇属性だ。
「あ、忘れてた。《狂乱不可》」
さらにタツヤは痛みや恐怖で狂うことが出来なくなる様に魔導を掛ける。
そして、刀を抜く。
「……さあ、死合おうぜ、転生者」
タツヤが言った次の瞬間……トーリスの首は宙を舞っていた。トーリスの体の前には刀を振り切った体勢のタツヤが居る。
「こんくらいは反応しろよ、雑魚。戻れ」
タツヤが言うと首がトーリスの体に着き、動き出す。
「お、お前!何をした!?」
たった今殺されたトーリスが唾を飛ばしながらタツヤに詰問する。
「お前の頭を切り飛ばした。そして、さっきの奴の効果で生き返らせた。……まだ一回目だ、まだまだ楽しもうぜぇ 」
「お、お前ええええええ!!!」
トーリスが発狂しながら、落ちていた剣を拾いタツヤに向かって突きだしながら突撃する。
「《無限〇剣製》」
タツヤが呟くと地面から剣が突き出す。
そして、その剣は柄ではなく刀身が上となり、地面から生える。つまり……
「ぐぎゃあ!」
トーリスは体を無数の剣に突き刺された。だが、すぐに生き返らされる。
「な、なんなんだ!僕は最強なんだ!勇者よりも強いんだ!」
「で?勇者より強い?嘘吐いちゃだめだろ?俺より弱いんだから。第一勇者最弱の奴よりも弱いぞ、お前」
トーリスの減らず口にタツヤは丁寧に返答する。
「さて、次いってみよう。《混沌ノ雨》」
「ぐぎゃあ!」
「《災禍ノ神罰》」
「……(消滅)」
「ウワァアァァア!!!なんなんだ!僕は僕は選ばれた選ばれた人間なんだ!それを、お前みたいなウワァアァァア!!!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね僕の邪魔するやつは死ねばいいんだああ!!お前の女もこの学校の聖女も全員僕が犯すんだ、僕が王なんだ、この世界は僕のためにあるんだ、女神も犯す!イヤァッハアアアア!!」
「あ、こういう狂い方は対象外なのか…」
何度も殺され、自らの思い通りにいかないトーリスは支離滅裂な事を言いながら奇声を上げる。タツヤはそれを見て魔導の効果を確認する。
「可哀想な奴…」
高笑いしているトーリスを見てタツヤは呟く。
「終わらせようか」
タツヤは刀を鞘に戻し、トーリスに告げる。
「おい、転生者。終わらせるぞ」
「お前の命をなぁ!!!」
「いや、お前何回も俺に殺されてそれは無理だろ」
そして……
「纏え《紫電》…神崎流【千片挽華】」
パンっという軽い音と共にタツヤの居た場所の地面が捲れ上がり、トーリスが挽き肉へと変わった。
「うへぇ、気持ちわりぃ。人に使うもんじゃねぇなこりゃ。……だけどな、俺の女に手を出したんだ。自業自得だろ。俺は……奪われるのが大嫌いなんだよ」
「勝者、タツヤ・カンザキだよ!」
タツヤが独白する。
そして、惨状を目にした周囲の反応とは裏腹に執行者はなんとも明るい声で勝者の名を呼んだ。




