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第38話 リー〇21を超える

「で、これどうやって入るの?」


 タツヤがドラノブが付いておらず、代わりに扉の横の壁に魔道具が設置されているのを確認して言った。


「この学生証をスキャンするんだけど……」

「持ってねぇ」


 タツヤの問いに丁寧に答えたシルフィなのだが、タツヤはそんなものを持ってはいなかった。普通なら持っているはずなのだが、編入生など過去100年に存在せず、ソロモンも結構抜けているところがある為、タツヤは渡されていなかった。


 今ここで、タツヤの紹介が遅れることが決定………するかに思われたが救世主とは意外と身近に居るものである。


「先生が持っている可能性も……」

「それだ!」

「それに今入るだけなら私が開ければ」

「そうだ!舞〇の言う通り!」


 そして、タツヤは然り気無くどっかの一話NTR君の台詞を言っている。しかし、言わせてもらえるのであればタツヤはあのアニメを見ていない。


「いざ行かん!未知なる戦場へ!」


 大袈裟な男である。










 ザワザワ


「それではさっきから気付いているだろうがコイツを紹介する。コイツは編入生だ。ほれ、自己紹介しろ」


 教室へ入り数分後。

 扉のすぐ前で待機していたタツヤにやっと声が掛かった。


 そして自己紹介をするように促される。

 普通なら「名前、趣味、よろしく」みたいな事を言うのだろう。

 しかし、タツヤに普通を求めてはいけない……はずだ。


「コイツとか言わないで下さい、貧相な頭のハゲ。毛生え薬を差し上げましょうか?」


 開口一番、教師への暴言である。しかも然り気無く貧相な頭を気遣っている。


「さて、自己紹介だな。

 タツヤ・カンザキだ。よろしく」

「てめぇ!誰がハゲだ!停学にするぞ?!」

「では毛生え薬は渡しませんよ?」

「ハハハ、冗談に決まってるじゃないかぁ。それで?本当に生えてくるのか?」

「飲んで二分で生えてきますよw」

「よし、くれ」

「どうぞどうぞ」


 意外と普通な自己紹介をしたタツヤはキレはじめたハゲを丸め込むと小瓶に入った毛生え薬を渡した。


「おう!」

 ゴクゴク


 渡された毛生え薬をハゲは一気にそれを飲み干す。


「よし!カンザキはルーセントの隣に座れ!」

「ククっ。はい」


 タツヤは何故か笑いを堪えながらシルフィの横の席へと歩き始める。


 いろいろな視線を受けながらタツヤが席へ座る。

 そして、ハゲが黒板へ何かを書いているとき事件が起こった。


「ぷはっ!」

「ちょw」

「www」


 一定間隔でハゲの頭に毛が生え、そして抜け、文字を形成しはじめたのだ。


『わたしは』

『ハゲです』

『クスリに』

『たよって』

『毛を』

『生やして』

『います』


 不意打ちでこんなものを見せられれば皆笑ってしまう。ハゲがクスクス笑いにイラつきながらも二分が経った。


「シルフィ、目を閉じろ」


 タツヤが不意にシルフィへ言う。

 シルフィは何故か逆らってはいけない気がしてすぐに言われた通りにした。


 そして……


 ピカッ!


「「「目が!目がぁぁぁああ!!」」」


 閃光が教室を駆け巡る。

 生徒達の視界が戻ったとき、


「先生!髪の毛が!」

「おお!本当だ!」

「生えてるぞ!」


 ハゲの頭には大量の毛が生えていた。


「神だ!神の奇跡だぁぁぁああ!!」


 ハゲはその事実に狂喜乱舞しはじめた。

 そんな元ハゲをタツヤは実験動物を見る研究者のごとき目で見ていた。


「副作用はアレだけみたいだな、やはり」


【毛生え薬・ケハエール】

 タツヤがふざけて創った薬である。しかし、使用例は今回を含め三回。副作用は意図的に創ったアレ以外には無いはずだが、タツヤは実験体を探し続けている。



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