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第36話 アニソン歌って?

「ただいまぁ……ってなんだこれ!?」


 ソロモンが入学式を終えて学園長室へ帰ってくると、学園長室は見事なカオス空間になっていた。

 天井や壁の上周辺には綺麗な星空が、床は草原。そして、壁には恐竜やドラゴンが映し出されていたのだ。


「何って……学園長室だろ?」


 タツヤはそんなソロモンに「何言ってんだ、コイツ?」みたいな目を向けて簡潔に答えた。しかし、その答えはソロモンの納得できるものではない。その通りではあるのだが、聞いている対象が違うのだ。


「もういいや。

 それより、タツヤ君。悪い知らせと良い知らせどっちから聞きたい?」


 ソロモンはタツヤに聞くことを諦め、なんとも使い古された台詞を口にした。

 この時タツヤが選ぶのはもちろん──


「んじゃ、良い知らせから」


 良い知らせのほうだ。

 大体の人間なら悪い知らせの方から聞くと思うが、タツヤはちがう。彼の自論である「こう言うのは悪い方を先に聞くと、後で聞いた良い知らせのせいで対策を忘れる可能性がある」という無駄な考えに基づいた結果だ。要するに舞い上がって対策を忘れるくらいなら後で聞いて落ち込む方が効率的だろ?ということだ。


「わかった。

 まずは入学式が終わったって事と、シルフィちゃんと同じクラスだよって事だね」

「ほう、では悪いほうは?」

「帝国の馬鹿皇子がシルフィちゃんとエレーナちゃんに手を出そうt……ひぃ!恐っ!殺気出てるから抑えて!死ぬから!」

「エ、ナンノコト?

 殺気ナンカダシテナイヨ?タダ、人ノ女ニ手ヲダシタ愚者ヲ殺ソウカナッテ考エタダケダヨ?」

「やめて!国際問題になるから!」

「大丈夫。俺ガ守ッテヤルカラ」

「僕が美少女だったらさぞかし喜んだであろう台詞だけど、生憎とそんな趣味もないし美少女でもないんだよねぇ!」

「フフフ、世界ハ哀ニ満チテイル」

「良い言葉っぽく言ってるけど「あい」って字が違う気がするねぇ!」

「弱クタッテ叩キ潰スンダ。理由ナラ貴様ガ作ッタ」

「その通りだけどやめようねぇ!」

「俺ノ女取ロウトシテ 結局貴様ハ死ンジャッタ」

「さっきから何か歌みたいになってるねぇ!」

「スピードの麻薬 オ前ハ中毒」

「麻薬!?」

「放課後 オ前ヲ殺シタ教室 机ノ上鮮血デ真ッ赤ニ染マル」

「恐っ!何その学園!?」

「差シ当タッテ皇子殺害 ドウヤッテ殺ロウ?」

「差し当たらないで!」

「刺サレテ終ワル命 無慈悲ニ奪ウ」

「落ち着け!」『ガン!(杖で殴りつけた音)』

「ハッ!俺は一体何を!?」


 ソロモンのファインプレーによってトリップしていたタツヤは正気に戻った。それだけシルフィの事が好きなのだろう。エレーナ?あぁ、まだ抱いてもらえていない可哀想な子ね。変態を卒業すればいいんじゃない?


「まあ、兎に角HRには出席してよ。もう少ししたら迎えが来るはずだから」

「俺は今すぐ屑皇子をあの世へお迎えしたいところだがな?冥府の神と混沌の神と完全悪の神に虐められればいい」


 タツヤは言う。


 その時だった。


「失礼します」


 誰もが惚れる様な美しい声──シルフィの声が学園長室に響いた。


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