第34話 ほのぼのはフラグと化すのか
「やぁ、来たね」
タツヤが来たのを見つけたソロモンがニコニコと手を振った。その装いは上品な濃紺のローブだ。一応学園長だからだろうか。
「おう。それよりちゃんと依頼料を振り込んでくれたみたいだな」
「いやぁ、冒険者時代の貯金が吹っ飛んだよ」
「あっそ」
「あ、それとこれが君の制服だよ」
ソロモンはそう言うと手に持っていた袋をタツヤに渡した。その中には白のブレザーと黒のスラックス、赤ネクタイ、Yシャツ、黒の小箱が入っていた。
「げ、白かよ」
「あ、それと色を変えるのは駄目だからね。因みにネクタイもそれで学年が分かるようにしてるから駄目だよ」
「うへぇ。まあ、良いか。俺、白って着ないんだけどなぁ。まあ、着るか《個室創造》」
タツヤは魔導で小部屋を創り出すとそこに入っていった。
数分後
「ちょ、何かすごいことになってる!?」
「なんだよ?別にちょっと付与とかしただけだろ」
「それでちょっとだったら国宝はゴミになるねぇ!」
「お前、国宝をゴミとか言っていいのか」
普通に制服を着たタツヤを見てソロモンが驚愕する。それは然り気無く追加付与された効果にだ。正確に言えばその予想効果に。それはソロモンクラスの者が見なければ分からないが、分かる者が見れば驚愕することしかできない様な物だった。例として言えば攻撃完全無効&完全反射などだ。清々しい程の魔改造である。
「ところで、このラペルピンはなんだよ?」
「ん?僕の趣味。似合ってるよ」
「男に褒められても嬉しくねぇよ」
「確かにねぇ」
ほのぼの空間が広がっている。
「学園長!入学式が始まりますから来てください!」
「わかったよ。それじゃあ君は学園長室で休んでるといい」
「りょーかい」
そんなやり取りをしてから学園長とタツヤは別れた。
◇◇◇◇◇
╋ソロモン╋
「いやぁ、本当に面白い子だよねぇ。ところで豚はどうだった?」
「学園長、豚呼ばわりは止めてください。まあ、見たところクズですね。それに早速問題を起こしました」
「どんな?」
「聖女エレーナ殿に無理矢理迫って軽く反撃を受け、他の聖女にもまあ、色々やり、シルフィ君に止められ、そこで彼女を犯すだのなんだのとほざき……とこんな感じですね」
なるほどねぇ。やっぱり、帝国の皇子はそんなものだったか。彼の兄は公明正大なできた人間だったんだけど。まあ、今の帝国から彼の様な男が生まれたことの方が珍しいんだろうねぇ。
それにしてもエレーナちゃんにシルフィちゃんか。一番手を出しちゃいけない娘達に手を出したみたいだ。一応言っておかないと。それにしても少し遠いよねぇ。講堂までが。
「う~ん、彼マズイかもねぇ」
「マズイ?」
「君、さっきの子を見たよね」
「はい。彼が編入生ですよね」
「うん、そうなんだよ。そして、タツヤ君、セフィロダアトって言う新興国……と言ってもアドル王国が改名するだけだけど。まあ兎に角セフィロダアト神皇国っていうところの国王なんだよねぇ」
「え」
「それに、ホテルブリューでの噂は知ってるかい?」
「はい。黒髪の美青年が……って、あ」
「そう、タツヤ君なんだよ。しかも……純粋な人間ではない」
「どういうことですか?」
「詳しくは分からない。だけど彼は完全な上位種だ。逆らってはいけない程に高い位置にいる」
僕は隣にいる腹心のレナード君に言う。
レナード君は疑うような顔をしているけど、タツヤ君のことは本当にわからない。僕のオリジナルスキル【総てを知る森の神の眼】でも分からなかった。このスキルは神の文字を冠してるだけあって本当に総ての事を見通せる。つまりどれだけ隠蔽能力が高くても隠された物が見える。しかし、例外もあると知っている。それは眼よりも上位の存在には効かないということ。それはスキルを授かった時に頭に浮かんだ説明で知っている。そこから分かることは簡単。タツヤ君は上位の神の可能性がある。ということだ。
「さらに彼は自分のものに手を出されるのが嫌いと言っていた」
「まさか!」
「エレーナちゃんは婚約者、シルフィちゃんも同じ。要するにタツヤ君がそれを知ったら」
「戦争になる」
その通りだ。
森神よりも上位の彼と帝国が争ったとして勝つのはどちらかなんてすぐに分かる。タツヤ君が勝つに決まっている。
「それ、マズイですよね?」
「うん、マズイねぇ。だから、あの豚のことはよく見張っといてよ」
そうしとかないと僕がタツヤ君に怒られちゃうからねぇ。




