第31話 チョロインなの?
なぜ、こうなった。
深夜のテンションこわいです。
「おや?気絶をしているようだ。さっきまでは起きていたのに。まあ、今はその方がいいか」
タツヤは壁にもたれ掛かったまま気絶しているシルフィを確認すると呟き、次にリントヴルムの方へ向かった。その白く美しい体は先程のタツヤの回復魔導によって完全に治っていた。
「おい、起きてんだろ?」
『むぅ、わかってしまうか』
さらに、既に意識も戻っていた。流石は龍というところか。
「分かるさ。それにしても……【雷龍王】に成った個体が契約しているとはねぇ。お兄さん驚きだよ」
タツヤは軽く鑑定を行いながら言う。
「しかもお前【雷龍王】であり【雷龍王】でないっていうね。いっそのこと【白仙龍王】とでも名乗ったらどうだ?因みに今作った名前な?」
『お主のせいでそれになってしまったのだが……。まあ、良い。それで、なんと呼べばよい?神皇陛下か?』
「喧嘩売ってんのか?普通に名前で呼べばいいだろ。」
『ふむ、ならそうさせてもらうか』
「あと、もうちょい女っぽいしゃべり方しろよ。はっきり言って男にしか聴こえんぞ」
『ならお主も子供らしく喋れ。例えば〔あれれー、おっかしいぞぉ〕とかな』
「そんなのは見た目だけは子供の人しか言わねぇよ。つーか、なんで知ってんだよ」
タツヤはリントヴルムの冗談に苦笑いしながら言う。
というよりこの光景。端から見ればドラゴンと話す危ない人だ。
「取り敢えず、テメェは会長さんの事見守っとけ」
『おや?シルフィとは呼ばないのか?』
「あ?」
『なんでも無い』
タツヤはそれを聞くと邪神(笑)の座っていた玉座の方へ向かった。そして、その周辺を調べてまわる。
「このダンジョン擬き現象はあの邪神(笑)の影響で間違い無さそうだな」
少ししてタツヤはそう結論を出した。
まあ、どう考えてもそれしか原因は無いのだが。
「んみゅ?」
そんな声とともにシルフィの目が開かれる。どうやらお目覚めのようだ。
「と、まあ取り敢えず用件は済んだ訳で俺はさっさと退散しようと思うわけだ」
『シルフィを置いていくつもりは無いだろうな?』
「まあ、置いていくつもりは無いが一緒に帰るつもりも無い」
『どういうことだ?』
遠くでリントヴルムとタツヤが話している。
「まあ、あれだ。初対面の奴に化け物呼ばわりされても何も思わんが、少しでも関係を持った奴に言われるとキツいなぁっていう人間的心理に基づいて、転移石っていうヤツを用意しておくから自分で帰ってって感じだ」
『人間的心理とか言ってる時点ですでに化け物ですって認めてる気がするんだが』
「化け物じゃねぇし!俺、神だし!似たようなもんだけどちげぇし!」
『どんな神も土地が変われば化け物と呼ばれるがな』
「女神ティアマトがゲームではドラゴンとして敵キャラとして出てくる的なやつだろ?あれ絶対にリー〇ャ様が見たら発狂すると思うんだ」
『ちょっと何言ってるかわからないな』
「ふむ、仕方ない。
まあ、兎に角化け物呼ばわりは結構好みの女にやられると俺でも傷付くから先に帰るってことだよ」
『そんな事を言っているが、シルフィも化け物と呼ばれることがあるぞ?』
「あんな可愛らしい化け物が居るわけねぇだろ。化け物っていうのは神の中でも異質な俺や魔王みたいなヤツのことを言うんだよ。それとお前さもうちょいましな武器渡そうぜ?あの剣ってお前の素材のランクの高さでSSSランクになってるけど本当ならEXになるだろ?」
『流石に加工できる者が居ないのだ。しかも化け物認めてるし』
「近くには……だろ?適当に拉致するか呼び出せば良いだろ?」
『犯罪者や悪党の台詞だな』
「失敬な。こちとら異世界出身の超健全男子高校生だぞ」
『超健全男子高校生とやらなら普通邪神をぶっ殺したりしないと思うぞ』
「それなら普通16歳とかの女はモンスターと戦ったりしない」
『世界が違うのだよ、世界が』
「俺は言葉派だぞ?因みに友達の勇者は刹那派と世界派に別れる」
『なんの話だ』
「え?勿論スク〇イの話ですが?違うのか?」
『違うわ!ってシルフィが起きてる』
「え?嘘、じゃあ帰るわ」
タツヤはそう言うと立ち上がる。
シルフィはそれを見た瞬間に赤面する。その理由だが、なんとタツヤは……全裸だったのだ。そう、このバカはあろうことか即席で浴槽を創り、風呂に入っていたのだ。それで早く退散だのなんだのとほざくのだから驚きである。
しかもシルフィさんはタツヤのナニまでしっかり見ている。ムッツリなのだろうか?
「ちょ、ちょっと待って!」
シルフィが声を出した。
なぜ今声を出したのだろう?完全に見えていたことを自己申告するようなものなのに。すごく大きいと思ったことを自己申告するようなものなのに。ナニがとは言わないが。
「いやん」
『アホかお主は。童貞というわけでもあるまいし』
「な、何故わかった!?」
『雰囲気』
「雰囲気でわかるものなのか?」
『知らん』
その間もタツヤとリントヴルムはふざけている。はっきり言ってリントヴルムは結構バカなのだろう。
『取り敢えず服を着ろ』
「そうだな」
リントヴルムの言葉に従い、タツヤは服を着た。その際、シルフィさんが残念そうな顔をしたのだが気のせいだと思いたい。
「さて、じゃあ帰るから会長さんの事ヨロシク」
「ちょ、ちょっと待って!」
タツヤがリントヴルムに言うと再びシルフィが声を出した。彼女はタツヤを引き留めているようだ。
「なに?あ、コートか」
タツヤはシルフィの方へ歩いて行くと、シルフィが手に持っているコートを手に取った。
「それじゃあ帰るから、後はあの駄龍と頼むぞ」
『誰が駄龍だ!』
「お前しか居な……ウチにも駄龍がいたわ」
タツヤはシルフィに声を掛けると今度こそ帰ろうとした。だが、それはリントヴルムの抗議に阻まれ、その間にシルフィに腕をホールドされていた為、さらに帰り難くなった。
「あのー、どういう状況?」
タツヤはリントヴルムに訊ねる。なぜ、この男はこういうことだけ鈍感なのだろうか?いや、鈍感ではないときもあるが。
『お主……わからんのか?』
リントヴルムはそうタツヤに訊く。
「いや、わからんから訊いてるんだが」
『お主、マジか』
「いや、本当になんなの?」
『普通に考えて恋しちゃったのかな?とか思わんのか?』
「いや、思わん」
『お主、女心を分かったらどうだ?』
「正直、心に女も男もないと思う」
『あぁ!もう!お主、バカだな!バカなのだな!簡単に言えば!今!シルフィは!お主に!恋を!しておる!のだ!』
「いや、有り得んだろ。バカかお前は」
『バカはお前だあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!シルフィ!もうその鈍感男にキスしたれ!それでようやくわかる!』
リントヴルムはそう声を荒げながらシルフィを唆した。
流石にこれではシルフィも……あ、徐々に顔が近付いてる。
「なんなの!?ねぇ!」
タツヤがリントヴルムに問い掛ける。
『簡単に説明すると!男苦手!なのにお前に嫌な感情を抱かない!しかもイケメン!変なの(邪神)に襲われた!貞操&命の危機!助けてもらう!恋に堕ちる!だ!』
「えぇー、なにそのチョロイン」
そんな事をしている間にさらに顔が近付いてる。
『恋にチョロいもクソもあるか!いったれ!シルフィ!』
タツヤの呟きにリントヴルムが反応し、さらにシルフィをそそのかす。
「その……私じゃ……ダメなのか?」
そして、シルフィが赤面しながら言葉を発した。
そして、その意外すぎるチョロインの言葉にタツヤの動きが止まった次の瞬間……二人の唇が触れた。
『しゃぁ!ナイス!それで鈍感男もイチコロだあ!』
リントヴルムうるさい。
まあ、ここで言っておくとタツヤはキスするとアレになる。そう、つまり今までは軽く触れる程度だったのに、いきなり舌まで入れるディープなやつになるのだ。
まあ、これから先のことは各々のご想像にお任せするが、わかったことはシルフィはチョロインということと、意外と激しいということだ。まあ、どこでなにをしている時のことかは言わないが。
『展開はええええええ!!!!』
リントヴルムうるさい。
チョロインにしてもチョロすぎですね、シルフィさん。そして、すぐに手込めにするタツヤ恐いです。
最後に。
チョロすぎてごめんなさい。
怒らないでください!




