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第29話 目には目を化け物には化け物を!神殿攻略!

「邪魔」


 ドォーン!ピチューン!ザシュザシュッ!ズバァン!ズドン!ジュワァ!


 タツヤの一言と共に放たれた複数の魔導で一本道で大量湧きというとんでもない罠のもと出現したモンスターが焔に焼かれ、雷に貫かれ、風の刃に切り裂かれ、増された重力によって潰され絶命する。

 そこに残ったのは見るも無惨なモンスターの死骸とタツヤの「やり過ぎたかな」という声だけだった。


「なんなのですか?これは……」


 シルフィが先ほどまでとは違う口調で呟く。今までの口調は作っていたものなのだろうか。タツヤはそれに突っ込まず、口を開いた。


「一層目からこれか。この先はどうなることやら。会長さん、気を付けろよ」


 タツヤが優しい。まさかあのタツヤが人を心配するとは。






 旧神殿第一層。

 それは神殿の中の階段から降りた先の事だ。そこからがダンジョンとなっている。しかし、厳密に言うと旧神殿はダンジョンではないのだ。

 ダンジョンとは【迷魔核石】と高濃度の魔力のある領域のことを言う。その為、幾つかの形のダンジョンに別れるのだ。

 ならばこの旧神殿はなんなのかという疑問を持つだろう。それは後々にわかることとなる。




「なあ、会長さん。ちょっと戦ってみてくれよ」

「わかったわ」


 タツヤは前方にミノタウロスを確認するとシルフィに声を掛けた。シルフィはその声に短く答えると腰から細身の片手半剣を抜いた。その刀身は曇りひとつなく、神殿の壁にあるヒカリ苔(ひかる苔ののこと)の光を反射し美しく輝いていた。


「SSSランク武器、素材は龍。それも高位の。あれは……爪と牙か」


 タツヤは呟く。

 その間にシルフィはミノタウロスとの距離を詰め斬りかかった。ミノタウロスはシルフィのスピードについていけず中途半端に出した右腕をシルフィの剣に切り落とされた。


「『雷光をもって 白龍の息吹を成す 貫け雷の槍《雷槍(ライトニングランス)》』」


 彼女の詠唱が終わると共に虚空から紫電の槍が姿を現し、その瞬間にその場から消える。しかし、その雷槍は消えてはおらずミノタウロスの頭に突き刺さっていた。そして少し遅れてから雷鳴が聞こえた。


「ヒュー。やるねぇ」


 タツヤは拍手をしながら呟く。完全にふざけた口調だが、その言葉の裏でタツヤは頭の中でいくつもの考えを浮かべていた。

 それはシルフィに関することだ。彼女の魔法にある『雷光をもって 白龍の息吹を成す』という節。あれは本来《雷槍》の詠唱にはない物だ。まあ、詠唱とは魔法を発動するにあたって自らのイメージをハッキリとさせる為の手段でもあるのでオリジナルという可能性もある。しかし、彼女の《雷槍》には何故か龍の力が感じられたのだ。

 そして一瞬の内に考えた結果、タツヤの中で1つの結論が出た。それは『龍が加護を与えたのでは』というものだ。そうすれば、納得がいくからだ。通常加護というのは神又は精霊王と呼ばれる者達しか与えられない。そしてその場合、与えた者の魔力が加護対象に付与されることはない。しかし、龍が加護を与えることはほぼ無い。ならばあり得るのではないかという風に思ったのだ。

 そして、そうなると気になるのがその龍のことだ。しかしこれはタツヤの中ですぐに結論が出た。その龍は『リントヴルム』と呼ばれる龍ではないかと。その理由は『雷光』と『白龍』のところから導いた。リントヴルムは稲光や流星を発すると言われている。そして白のリントヴルムを見たものは幸運にもなると。この二つからタツヤは結論を出したのだ。

 そして、それはシルフィを鑑定したことによって事実だとわかった。

 しかし、加護ではなく契約だったが。




「お疲れ。なんか飲むか?」

「遠慮する。それより急ぐのでは無かったか?」

「まあ、そうだな。取り敢えず白王とかいうヤツのとこまではな。折角だ。アイツの初陣にしよう」

「アイツ?」


 シルフィの言葉にタツヤは何も言わず彼女に向かってウインクすると、ある者を呼び出した。


「『出よ、終焉の黒き王』」


 その言葉と共に虚空に隙間が生まれた。そして、そこから出るのは黒き骨の手。その手は隙間を広げ中から品の良い黒のローブを来た黒い骸骨が出てきた。そして、タツヤの前に跪く。


『我が王よ。ただいま参上しました』


 絶対的な強者の雰囲気を持つ骸骨は頭を下げながら言葉を並べる。

 この骸骨はグランドクエストである【死城の攻略】における【死城】の主であった。

 《ワンメイク》とタツヤが呼ぶ一体のみの種族。

 種族名【極致に至りし終焉を呼ぶ破壊の王キング・オブ・ターミナス】個体名【(むくろ)】。固有属性【終焉】を持っており、大和、十六夜、神楽と並ぶタツヤの最強眷属シリーズ第3位の実力者である。因みにいつもはタツヤの人型眷属と共に畑仕事に精を出しており、魔法を使って味覚や胃袋を創り、食事を楽しんでいる。


「顔を上げろ」

『ハッ』


 タツヤの言葉に顔を上げる躯。シルフィはその様子を見て冷や汗を流している。それほど迄に躯の威圧の様なものが強く、本能的に恐怖するのだ。


「まず、躯。少しその威圧を抑えろ。会長さんがビビってるだろ」

『申し訳ございません!すぐに抑えます』


 タツヤがシルフィの様子を見て言う。

 そして、シルフィの顔色が少し良くなったのを確認するとタツヤは本題に入った。


「躯、初陣だ。目標は不遜にも【冥府の白王】と名乗るゴミ。本当の王というものを見せてやれ」

『ハッ!必ずや御期待にお答えします!』

「それなら行くぞ」


 タツヤはそう言うと歩きだす。躯もそれに続いて歩く。シルフィは少し遅れてから二人を追いかけた。




 旧神殿第25層中層と呼ばれる区画にタツヤ達は突入した。

 ここに来るまでに遭遇したモンスターは躯により殲滅させられた。その中にはSSSレートモンスターも含まれていたのだが、特に時間を掛ける事もなく終了した。


「ゾンビが増えてきたな」

『そうですな』

「この流れでいくとグールでも出てくるかもな」

『梟とかですか?』

「一度やりあってみたいとは思うが違うだろ。赫〇があるグールなんてこの世界で見たこと無いぞ」

『残念です』

「お前も相当染まってきたな」


 こんなほのぼのとした会話をしているが、周りには殺されたモンスターの死骸が転がっている。それにこんなよくわからない会話をしているため、シルフィが困惑しているのだが、二人は全く気づいていない。



『『『グギャラァアア』』』


 25層の広い空間には三体のバジリスクが座していた。


「なあ、これってさXXランクの奴が挑戦したときとは比べもんにならない難易度だよな?」

『そうですな。流石にこれは不可能かと』

「まあ、もう死んでるけどな」

「え?」


 タツヤの言葉通りバジリスクはすでに事切れていた。

 何が起こったのか。それは簡単である。完全消音の拳銃で撃ち抜いただけだ。

 その証拠に今、バジリスクの頭が弾けとんだ。その様子を見てシルフィが声を出すが、二人は既に歩き始めている。


「はぁ、張り合いねぇ」


 タツヤの言葉が静かな部屋の中でこだました。









 旧神殿第49層階段前の部屋

 ここが【冥府の白王】が確認された場所である。


 三人はあれから凡そ三時間がたった今。この場所へとやって来た。驚異的なスピードでの攻略である。


 そして、現在。

 部屋のなかでは【冥府の白王】と【極致に至りし終焉を呼ぶ破壊の王】が相対していた。その後ろではポップコーンとコーラを宙に浮かべた観戦モードのタツヤと、どんな事が起きるのかハラハラしているシルフィがいた。


「きたな、愚かな冒険者d『【汝が生は終焉へと至る 《終生》】』

「グハァ」

「えええええええええ!?」


 白王が何か言っている間に躯が魔法を使用した。


 結果。

 白王は消え去った。

 戦闘時間凡そ6秒。余りにも早い死だった。


「お疲れ、戻ってくれ」

『お疲れさまでした!』


 タツヤは躯を労い、戻した。


「さて、取り敢えず、依頼の半分は完了だな」


 タツヤは階段を眺めながら呟いた。


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