第25話 密会
途中わかりにくいです。
草木も眠る丑三つ時。
ようするに午前2時。宿【ホテル・ブリュー】の屋根の上に人影があった。
腰に細身の剣……刀を帯び、風に外套の裾をたなびかせながら男──タツヤはとある人物の魔力を追跡していた。その人物とはソロモン。つまり学園長である。
その理由は昼、タツヤとエレーナが学園長室に行った時のある事にある。あの部屋は一見普通の部屋であり、行われた事も聖女の到着報告とタツヤへの依頼という言ってしまえば特に特徴もないことだった。
しかし、そんな中でタツヤはある事に気付いていた。
それは学園長室に盗聴機、いや盗聴の魔道具が仕掛けられていたのだ。それもとても小さく、学園長並み(人類最高クラス)でしか気付けないものが。
そして、タツヤは考えていた。さすがに依頼内容があれだけっていうのは有り得ないよな。たぶんコレのせいで話せないんだろうな。と。
その結果が現在の状況だ。
「見付けた。《転移》」
そして、タツヤは転移した。
「むふふふ、今日もフーナちゃんは可愛かったなぁ」
ソロモンは自宅のソファに寝転び本を読みながら先程まで居たキャバクラ的な飲み屋の女を思い出しながら呟いた。
因みにフーナちゃんは青髪の巨乳美女らしい。
「おいおい、教師がキャバクラなんて行っていいのか?」
「!?」
そんなソロモンに誰かが話し掛けた。もちろんタツヤだ。というより、人類最高クラスの学園長が張った結界の中にバレずに入れるのはタツヤくらいだ。
「まあ、そんなことはどうでもいいか。ところで、学園長室の盗聴機は外さないのか?外しといてくれたらここまで来る必要がなくて楽だったんだが」
「おお、君か。(ちょ、まったく気付かなかったよ?魔力やら結界やらの揺らぎも感じなかったし)」
「と、そうだった。依頼内容の確認に来た。流石に学園に入れだけじゃないだろ?予想だが学園長室では話せない内容のはずだ」
「それは今度話す予定だったんだけどねぇ。まさかアレに気づいてここまで気を使ってくれるとは思ってなかったよ」
「そんなことはいいから、依頼内容を話せよ。昼に言った報酬はそれ込みの額なんだから」
タツヤはそう言うと魔導で椅子を創り出し、そこに座った。それを見てソロモンがひきつった顔をしているのだが、タツヤは気にすることなく、コーラを取りだしグラスに注ぐ。
「ほら、はよせんか」
「はぁ、わかったよ。
依頼内容は学園に入学することと言ったけど他にもいくつか。一つ目は学園内で女子生徒達の男への免疫をつけること。二つ目、学園の機密を漏らしている者を調べること。できれば捕まえてほしい」
「ふむ、二つ目は理解できるが、一つ目はよくわからん。まさか、男子部と女子部に別れていて女子部に入れなんてことじゃないよな?」
「その通りだね」
「ふざけんな!俺は某織斑君でも、雑用王子でもねぇんだよ!なんで女学なんてはいらねぇといけねぇんだ!つーか、免疫ってなんだよ!共学にすればいいだろ!」
「まあまあ落ち着いて。まだ続きがあるから。
三つ目は入学してくる帝国の王子関連で何かあったら止めてくれってことかな」
「……転移魔法使いのことか」
「!?……よく知ってるね。その通りだよ。帝国の転移魔法使いを使って彼が何をするかわからない。それこそ女子寮に忍び込んだり資料を盗んだり、誰かを殺したりね」
「やることセコいなぁ。まあ、それはできたらでいいんだろ?」
タツヤはコーラを飲み、グラスに再び注いでから言う。
ソロモンはタツヤを見ると頷いた。
「なら、それでいい。
さて、次は入学の話だな。共学にすればいいだろ。それとも生徒会長さんが女で男嫌いだったりするから無理とかだったりする?」
「まあ、それもあるけど……貴族が多いから恋愛されるとっていうのが昔からあってね」
「それで別れたままだと。だけど、そのせいで今度は免疫やら耐性やらが無くなってしまったと」
「そうなんだよ」
「なら、そうだな。選択制の授業を追加すればいい」
「どういうことだい?」
「学園はやる科目が決まってるだろ?それを学ぶクラスも。だったら、必須科目と選択科目を作って選択科目は男女同じクラスで学ぶことにすればいい」
「?」
「例えばさ、今は歴史と算術と魔法と武術をクラスでやってるだろ?」
「そうだね」
「逆に言えばそれしか学園ではやっていない。
それならその四つを必須科目にして、他に上級応用魔法科、攻撃魔法科、支援魔法科、魔道具製作科、剣術科とか作ってそれを選択科目として選ばせればもっと深く自分の学びたいことが学べるだろ。んで、その選択科目は男女共同で学べばいい」
「うーん、確かにそうだね。そうすれば今までの流れを断ち切ることもなく耐性もつくか」
「ま、考えといてくれや」
タツヤは一通り自分の考えを話すと椅子とコーラを消し、転移した。それをソロモンは見送るとタツヤの言っていた事を実現させるために考え始めた。
「適当に考えたけどまあまあの出来だよな?」
タツヤがそんな事を言っているとは知らずに。




