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第23話 タツヤ、貴族として対応する。

みなさん、受験頑張ってコメありがとうございます!

「俺は貴族だぞ!部屋がないなら他のやつを追い出せ!」


 午前11時。エルトール魔法学術研究開発都市の宿屋【ホテル・ブリュー】のロビーで怒声が響いた。

 大声をあげて怒鳴り散らしているのは言葉の通り、一目で貴族とわかるゴテゴテとした装飾過多な男(15歳)だ。何故こんな事になっているのかと言うと、どうやら彼がこの宿に泊まろうとしたところ、空き部屋が無かったため、特権意識に凝り固まった彼がごね出したのだ。


「お客様、申し訳ございませんがそれはできません。また、他のお客様の迷惑となりますので、お静かにお願いします」


 しかし、宿屋の従業員と思われるよく手入れされた白い髪をオールバックにしたラウンド髭の初老男性は毅然とした態度をくずさなかった為、かれこれ15分程このやりとりが続いているのだ。


 そんな中、空気を読まないアホが突撃する。


「あ、おっちゃん。部屋空いてる?あ、これギルドカードな」


 いちいち言うまでもないが、言っておくとタツヤだ。タツヤはギルドカードを出し、貴族を無視しながら初老従業員に話掛けた。

 その結果、こうなる。


「ようこそ、お越しくださいましたカンザキ様」

「このランク用の部屋は空いているか?二人分頼みたいんだが」

「はい。上位冒険者専用の特別スウィート【聖杯の間】でよろしいでしょうか?」

「かまわない。取り敢えず一週間頼む。いくらだ?」

「84万Zrとなります」

「なら、これd「おい!部屋は空いてないんじゃなかったのか!ジジイ!」……うるさっ、息くさっ。30㍍くらい離れてるのにめっちゃ臭ってくるぞ」


 問題無く部屋を取れたが息くさ貴族に絡まれる。そのあまりの臭さに思わず言ってしまったタツヤは全く悪くない。


 さて、タツヤが部屋を取れた理由だがそれはこの宿屋【ホテル・ブリュー】のシステムによる。

 この【ホテル・ブリュー】は、冒険者ギルドと提携しており、上位冒険者の為の部屋が常に用意されているのだ。その理由としては、上位の冒険者が低級の宿に泊まり問題が起こらないようにということが大きい。

 この【ホテル・ブリュー】は商業ギルド発行の宿屋ランキングで周辺国3位に輝いている。そのため、客もかなり来るのだが、先程の理由で部屋数が減るため、こういう問題も起こりやすい。だが、大体の者は例のシステムを理解するため、ここまで大きい騒ぎにはならない。


「お客様、お代が多いようですが」


 初老従業員は貴族を無視しながらタツヤに渡された金を見て、タツヤに話し掛ける。タツヤは少し笑うとすぐに言葉を返した。


「ああ、それは迷惑料みたいなもんだ。いつ来るかわからないような冒険者相手に律儀に部屋を取っておいたせいであんな馬鹿に絡まれる羽目になってしまっているからな」

「しかし、それでも多すぎですが」

「気にしないでくれ」


「おい!俺が馬鹿だと!」


 二人が話していると、馬鹿貴族が怒鳴った。ロビーにいた他の客もそろそろ我慢の限界の様で、拳を握りしめたり、手に持っていた羽根ペンを間違えて折ったりしていた。

 タツヤは馬鹿の方を向くと小学生の理論をぶつけた。


「え?俺は別に『あんな馬鹿』と言っただけで貴方の事なんて言ってないですよ?もしかして、自分の事だと思ってました?」

『プッ』

 

 その言葉を聞き思わず噴き出してしまう他の客達。確かに言ってしまえばその通りなので、貴族の言い分がおかしい。


「貴様ら!何を笑っている!

 それに貴様!さっきから何様のつもりだ!俺を誰だとおもっているんだ!俺はワロスバルス帝国子爵だぞ!

 さっきから笑っている貴様ら賤民とは違うのだ!」

「え、お前って、子爵家の息子(・ ・)であって子爵ではないだろ?だってまだ子供じゃん」


 キレた【息くさ豚子爵子息(笑)】の言い分に思わず、ステータスを見て突っ込んでしまったタツヤ。そんなタツヤに再び、豚は突っかかる。一番、怒りをかう方法で。


「黙れ、賤民風情が!だが、まあそうだな。その後ろの女を渡した許してやらんこともない」


 豚はエレーナを指差しながら言った。言ってしまった。身の程も知らずに。

 タツヤにとってエレーナはいきなり婚約させられた相手であり、特に恋愛感情を持っているわけでもない(というより誰にも恋愛感情を持っていない)が、一応身内(和眞、真奈、雪姫含む)だ。前にタツヤが勇者共に言った通り、タツヤの女(一応婚約者であるため)である。タツヤは身内は大切にする男だ。例えば和眞がリンチされたとしたら相手が米軍だろうがなんだろうが報復に行くほどに(地球に居た時の状態で一個師団くらいならほぼ生身で潰せる。まさに化け物)。

 そんな相手にこんな事を言ったらどうなるだろうか?いつものタツヤなら街ごと破壊しただろう。しかし、この時のタツヤはひと味違った。


「帝国子爵の子息ごときの木端貴族があまりふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ?一応、言っておくがこの女は変態だが一応【アドル王国王女】だ。貴様如きには勿体無いし、釣り合わないんだ。分かったか?家畜野郎。いや、家畜の方がまだ役に立つな。それなら・・・分かったか?ダニ野郎。

 あ、それと自己紹介してもらったから一応俺もしておくぞ。

【《王冠(クラウン)》ランク冒険者・アドル王国皇爵】タツヤ・カンザキだ。それじゃあ、木端貴族君?お前がどれだけ馬鹿な事をしていたから理解したら今すぐ回れ右して肥溜めに飛び込んでこい」


 貴族として対応したのだ。







 ・・・全く違うわ!

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