第20話 聖女と書いてヘンタイと読む。
学園都市───それは都市郡国家エルシュタインという完全中立の都市国家にある都市の1つである。正式にはエルトール魔法学術研究開発都市という。
ここでは日夜、魔法や学問が研究開発されている。そういった理由によりこの学園都市には優秀な研究者が集い、優秀な者を育てる為の学園のレベルが他の国家よりも断然高いのだ。その為、学園──エルトール魔法学園には各国の貴族や富豪の子息が多く入学しようとする。しかし、平民が居ないのかというとそうでもない。奨学金制度や特待生制度があるためだ。だが、それでも貴族平民問わず来るもの拒まずという事ではなく、誰でも入学できるわけではないので、やはり貴族の比率が多くなってしまう。
さらに言えば、各国によって貴族の平民への対応も違い、横柄にする者ももちろんいる。また、国柄平民に優しい国の貴族の子息でも思春期であり、さらに難関校に受かった為、自分は選ばれた人間だと思い横柄になる者もいる。
学園では爵位やらを持ち出すのは御法度なのだが、それでも止めない者が多いのは仕方無いと言える。
「なあ、エレーナ。取り敢えず学園に行けばいいか?」
「はい。生徒は寮に絶対に入るので学園に向かってください。あ、でも入学し終わるまでは宿に泊まらないといけないので」
「それなら俺の家で良いだろ。まあ、王族の体面やらがあるなら宿を取ってくるが……」
「とても魅力的ですが」
「宿を取ると。なら【王冠】とかしか泊まれない部屋でも取るか。それなら後で良いしな」
「はい」
タツヤとエレーナは馬車の中で今後の予定を起てていた。勿論、タツヤ作の馬車だ。外見は王族用馬車よりも立派なので十分だろう。また、外を見ると中々に豪華な馬車がちらほらと見える。恐らくエレーナと同じく入学しにきたのだろう。
そこでタツヤがふと疑問に思った。
「なあ、入試って無いのか?」
入試の有無である。一応学園の概要については聞いていたのだが、肝心な所を聞いていなかった。一部しか入れないというからには有るのだろうが、エレーナは入試を受けたとは言ってなかったし……ということだろう。
「入試ですか?
私は聖女認定を受けているので有りませんよ」
「聖女認定?」
聖女認定──また、新しい言葉が出てきた。タツヤはそれを呟くとエレーナに説明を促した。
「聖女認定というのは、称号とジョブに聖女が付き、教会で認められる事です。ですが、称号のみでは認定はされません。称号に聖女が付くことが稀にあるからです。《聖女》のジョブは神託を受けると就け、そのジョブに就くと同時に聖女の称号が付きます」
「ふぅーん、神託ねぇ。それってさ、ヌルゲーじゃね?俺と話すだけで誰でも聖女になれるから」
「聖女になるのはこの世界の神の神託のみなので」
「あ、そう。まあ、別に聖女を造ろうとな思ってないからいいけど」
「そうですか」
「まあ、エレーナは聖女と書いてヘンタイと読むんだろうけど。パンツ返せ」
「…………………」
エレーナがタツヤにパンツを返すつもりは無いようだ。




