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第29話 うちのサーヴァントが有能すぎる

「ん?かなり遠くだが、何かいるな………ほう、あれが悪魔……いやあれは魔人か」


 タツヤはモンスターを殲滅すると、遠くに人でもモンスターでもない気配を感じ取った。千里眼で確認するとそれは魔人だった。


 魔人──それはモンスターが進化した者だ。戦闘力は悪魔の下だが、最弱のゴブリンの魔人でも下級劣飛竜(ワイバーン)を倒すほどの強さをもつ。また、姿は人に近く、白目の部分と虹彩の部分の色がモンスターを含む他種族と逆になっている。

 タツヤ達が召喚された理由は悪魔人族の侵攻に対抗するためでえるが、その悪魔人族とは悪魔と魔人を含めた名称だ。もちろん、魔人と魔族は別物だ。

 魔族とは幾つか種族(普魔族、吸血鬼族、鬼族)の事を纏めた言い方である。

魔族の中で一番多い普魔族はヒューマンと変わらない姿ながらも魔力がエルフに次いで多く、身体能力も獣人に次いで高いが少し頭が弱い。

吸血鬼族は血盟魔法と呼ばれる種族の固有魔法を持ち、エルフ並みの魔力と人間以上獣人未満の身体能力を持つが真祖と呼ばれる最上位の吸血鬼はその例に漏れる。また、吸血鬼だが、普通の食事もできる。勿論、血も吸えるが、無差別ではない。基本的に皆礼儀正しく、盟属又は剣属、又はその両方を持つ。盟属は一種の召喚獣であり、個人の力量によって契約数等がかわる。剣属は召喚武器、又は固有武器と呼ばれ、各個人によって物が違う。継承はできず、自らに最も適した形となる。だが、それを使用できるかは個人により、盟属の方が簡単である。だが盟属契約はできないが、剣属を使用できるといった者もいる。剣属はどこぞの英雄譚の固有霊装的な物だと思ってくれれば良い。

鬼族は脳筋。ただこの一言に尽きる。身体能力は獣人の3倍以上で頭が悪い。本当に壊滅的に。だが、それでも情に厚く、涙脆い。


また、吸血鬼族、鬼族はモンスターと同一視されていない。理由は不明だ。

それと、魔族の王は魔王ではなく、魔帝だ。



「アイツが今回の首謀者か?まあ、取り敢えず捕まえるか。………出てこい《切り(Jack)裂き( the)ジャック( Ripper)》」


 タツヤは使い魔を召喚した。………自分で行った方が早いのに。

 召喚されたのは黒のスーツに黒のトレンチコート、黒の中折れ帽を被ったタツヤと同じくらいの身長の男。そして、その手には黒いナイフが握られていた。


 Jack the Ripper──かなり、有名な殺人鬼である。が、タツヤはコイツを創造するときに運命の偽りの聖〇戦争の狂戦士クラスのあの方を思い浮かべたため……


「どうしました?主よ」


 かなり、まともというか礼儀正しいというか、そんな人物になった。もちろん、腕時計になることもできる。さらに言えば姿も変えられる。


「アッチに変な奴いるだろ?アイツを適度にしばいてここに連れてきてほしいんだよね」

「承知しました」


 タツヤが命令するとジャックはその場から煙のように消えた。



 ◇◇◇◇◇


 何処かに逃げようとする魔人。

 そしてそれをバレずに見るジャック。彼はユニークスキルを使用した。


「《ロンドンの煙ザ・スモーク・オブ・ロンドン》」


「な、なんだ!?いきなり煙が!くそっ!なんなんだよ一体!

 まあ、良い!兎に角帰るぞ………よし、《転移石》で──使えない!?何でだよ!くそっ!

 ああ!もうこの煙は!

 《そよ風(ブリーズ)》…………なんで、使えないんだ!?」


 ジャックのユニークスキル《ロンドンの煙ザ・スモーク・オブ・ロンドン》。その効果は煙の範囲内にいると魔力の使用や、魔道具の使用、魔法の行使が出来なくなり、ジャックのステータスが上昇し、姿を隠すというものだ。勿論、実力差があればあるほどに破られ安いが、この魔人とジャックとでは差がありすぎるので破られる事はない。


「主の命ですので、命は取りませんが……静かになって貰います」

「なっ!だ、誰だ!?………ガハッ!?」


 ジャックは魔人の近くによると手に持ったナイフ──《切裂魔ジャック・ザ・リッパー》で素早く足の腱を切り裂き、気絶させた。そして、魔人を担ぐとタツヤの元へ急ぐのだった。



 ◇◇◇◇◇


「ただいま戻りました」

「ん、お帰り。お疲れ様、戻っていいよ」

「失礼します」


 タツヤは戻ったジャックに労いの言葉をかけると還した。


「よし、次は拷問だな。S子にでもやらせるか、来いS子!」


 タツヤは呟くと酷いネーミングの使い魔を召喚した。そして、出てきたのは変態だったとだけ言っておこう。




 結果報告

 魔人はコボルトの魔人で、転移魔法陣によってモンスターを送り込んだ。理由は人の血を流し、恨みなどによって魔王の復活を早めるため。


 とにかくテンプレで下らない理由だった。

 少なくともタツヤはそう感じた。







 
















 ◇◇◇◇◇


「おいおい、なんだよこれは」


 魔人の拷問を終え、タツヤが佇んでいるとギルドで会ったオッサン──ガゼルとその他数十人が到着した。予定よりも随分と早い到着だ。まあ、タツヤはそんな事もしらなかったのだが。

 そんな中、ガゼルが思わずと言った感じで口を開く。他の面々も凄い驚きようだ。


「これは……お前が一人で殺ったのか?」


 ガゼルがタツヤに問い掛ける。

 タツヤはめんどくさそうにしながらそれに答えた。


「そうだよ。他に誰がやったと?」

「まあ、確かに誰もいないな」

「だろ?」

「ああ、納得だしな」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 二人が話していると一人の男が間に入って来た。


「なんだ?」

「今、一人で殺ったといったのか!?」

「そうだが」

「な、名前は?」

「タツヤ・カンザキ」

「悪いが聞いたことがない。何者なんだ……」


「コイツはXXXランクだよ」


 その男の問いにタツヤは答えるが男は、さらに疑問に思った。そして、その疑問に答えたのはガゼルだった。


「XXXランク──『絶対者(ジ・アブソリュート)』か!?」

「『絶対者』!?」


 そして、その答えによって、タツヤが何者か分かった冒険者達は少し騒ぎになるのだった。

 主に噂の、XXXランクは子供だったのかと。

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