第24話 大侵攻?いえ、戦争です2
「あ、そうだ!タツヤに頼めば良いんじゃねえか?」
ディートヘルムが名案だとばかりに発言した。しかし、タツヤはそれを聞くと
「え?嫌だよ、めんどくさい。それに俺にやって欲しいんだったらそれなりの報酬を持ってこいよ」
「そうじゃぞ、兄様は神皇じゃからな。神も無償で人を助ける事はせんぞ。それに供物もそれなりじゃないとの?」
「アイリスの言う通りだぞ。それに冒険者でもあるからな、指名依頼でも出せよ、まあ、受けないと思うけど」
完全にやる気の無い答えを返し、アイリスも同調した。因みにアイリスの脳内順位は『タツヤ>>>>絶対に越えられない壁>>>>エレーナ>エルド>シリ>>>>ディートヘルム』となっている。……寵愛どこいった。
「つーか、糞王、お前がやれよ。強いんだから」
タツヤがかなりまともな事を言った。まったくもってその通りではあるが、近くに神皇と人外がいてはあまり説得力がない。また、この場合の人外とはタツヤではなくグレンch……ゲフンゲフン、グレン団長の事である。それと、グレン団長の武装だが、なんと鬼j…ゲフンゲフン、呪いの聖剣と呼ばれる嘗ての勇者が大罪の王を斬ったとされる剣だ。
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【大罪聖剣】
通称【呪いの聖剣】
元々は【聖剣】と呼ばれる絶対にして唯一の聖なる剣だった。それが断罪者となる勇者の手に渡り、大罪の王を斬った。しかし、王達は聖なる剣に抗い、勇者に呪いを掛け、大罪は聖剣に宿った。宿った大罪は【傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・暴食・色欲】の七つで、複数の世界で七つの大罪と呼ばれる。また、契約を行うと強力な力を得るが、御しきれないと暴走する。また、一定以上の適合率がなければ触った瞬間に体が朽ちる。
その能力は、契約者の能力の強化、大罪魔法と呼ばれる強化魔法の使用、契約者の感情による大罪の能力顕現、そして、聖剣と呼ばれし時の能力を使える。
現在の契約者はグレン・フォン・クロイツ。嘗ての勇者の末裔であり、適合率は394.2%。
大罪の性格
傲慢…ツンデレ、嫉妬…ヤンデレ、憤怒…フンデレ、怠惰…ダルデレ、強欲…わがまま、色欲…変態。
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「タツヤ、それは出来ないんだ………あれでも父上は国王だからね」
タツヤの言葉にエルドがそう返した。そう、あれでも国王だから前線に出られないのだ。
「じゃあ、どうすんだよ?」
タツヤはエルドに問う。しかし、その答えはやはり、
「タツヤ、やってくれないか?」
だった。まあ、それが一番適切な方法なのだから仕方無いといえば仕方無いのだが、タツヤはその「タツヤなら大丈夫!人外だから」と聞こえる頼みが嫌だった。でも、神族なので、タツヤは本当に人外なのだが。
タツヤは別に本当にやりたくないとは思っていない。ただ、めんどくさい、メリットが無いと思ってやらないだけだ。
金もある、武器もある、権力もある、地位もある、自分なら簡単に何処かに行ける、別に何をしなくても生き延びられる。その状況でなんのメリットがタツヤに有ろうか?はっきり言おう、何ひとつ無い。タツヤは困ってる人を見過ごせないお人好しでも無いし、勇者の様な頼まれれば何でもやるような自殺願望あるドMでもない。異世界で楽しく過ごす。ただ、それだけが今のタツヤの目的なのだ。
「俺を参加させたければ何かメリットか楽しみを寄越せ」
それがタツヤの思いだ。
しかし、このタツヤの思いはタツヤがある事に気付いた事で果たされる事となる。それは……
「テンプレは楽しいのでは?」
と、いうことだ。
勇者はいない、主人公もいない。ならば、俺が主人公になれば楽しいのでは?とタツヤは思った。それは自分のメリットになり、目的に関係するのではないか。これのメリットは楽しい、目的に関係する事にこれ以上のものは無い。
だが、とタツヤは思う。
俺は主人公ではないし、なりたいと思った事もない。それにめんどくさい事は嫌いだ、と。
しかし、それでも「楽しむならテンプレで!」と何処かで思ってしまう自分もいる、と。
そして、タツヤは決める。
「俺は、やりたいようにやる。
まずはこのくそったれなテンプレを楽しむ!」
楽しみのためなら、英雄だろうと勇者にだろうとなると。
そして、呟く。
「あ、でもメンドイのは勘弁な。それと魔王さんはチェンジで」
そして、ここから神皇による、英雄譚が始まる事となる。
これはまだ序章。
その英雄は楽しみを求めて、旅をする。
その結果できるのは英雄の神話か、旅行の神話か、それともその両方か。
この物語はまだ、始まったばかりだ。




