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第57話

「さて、お前」


タツヤはフレインを見る。


「さっき俺は申し開きがあるなら出てこいと言ったな。出て来たということはそういうことだ。言ってみろ」


たしかにそんなことを言っていた。

てっきり無視して楽しく殲滅殲滅ぅ☆といくのかと思っていた──現にさっき死ぬ覚悟云々と言っていた──が、そんなことはないようだ。しかし、そう言われてもフレインからすれば申し開きなど「部下が勝手にやりました」という相手を納得させるには不十分というより、不誠実な事実しか持っていない。そんなことで納得するような相手ならなんとやりやすいことか、フレインはそう思わずにはいられなかった。

話してみてわかる、この神崎達也という男。その心の表層だけとはいえ、本人の言葉を聞き感じたそれはなによりも大きかった。

最初はただの子供、それも力を傲る愚者かと考えた。だが、話をするとどうだろうか。確かに言っていることは傲慢で強欲、なにより自分勝手だ。自分のために力を振るう。歴代の暴君そのものだ。だが、力を振るうのには理由が……自分勝手で、そして他人を思うがための理由がある。たとえそれが己自身の平穏のためであっても、その中には慈愛があった。

そんな男には誠実に応えたい──そうするしかないとも言う──だが、それを許す答え方がない。


フレインはその口を閉ざしているしか無かった。







「どうした?言ってみろ」


タツヤは黙っているフレインに再度声を掛ける。


「……部下の独断によるもので、敵対の意思はその部下を除いた貴族会の面々には一切無い」


これしか言うことはない。いや、言えることはなかった。

部下や家族を守るためにフレインが出来るのは事実を言うことだけ。これを言った結果死ぬのだとしても、せめて自分だけで済むように、そう思わずにはいられなかった。そして、同時にこれは死んだなとも思ってしまった。もし自分が逆の立場であれば、こんなことを言われれば疑うことは回避できないだろう。つまり、それは相手からしてもおなじだ。

娘の花嫁姿は見たかったな、いや相手の男は殺す。などということも何故か考えてしまう。とことん死ぬことを確定事項として捉えているようだ。


「そうか」


だが、そんなフレインの考えとは裏腹にタツヤは短く頷くだけに留める。フレインは知らないことだが、タツヤは相手の心も読めるし、洗脳だって簡単にできる。言ってしまえば疑うなどということはするだけ無駄で、フレインが考えたようなことはタツヤには無縁だった。


「なら、その貴族を連れて来い。ああ、その前に……」


タツヤはエルドに目配せをして、一巻のスクロールをフレインに渡させる。


「読め」


そのスクロールの内容を纏めると、『速やかに神皇国軍に投降し、エルクスの統治権を移譲せよ。抵抗する者には制裁を行うが、人道的な扱いを約束する』といったものだ。それを貴族らしく長ったらしく格式張った感じで書いたものがこのスクロールである。


「それに書いてある通り、人道的な扱いを約束しよう。

具体的には強姦強盗は絶対にない。というより、うちの軍でそんなことをすればヤった奴は良くて死刑だ。とりあえず、納得してもらおうか」


タツヤはスクロールを読み、顔を上げたフレインにそう告げた。

反抗などできるはずも無い。フレインに出来るのはこれを了承することだけ。



こうして、エルクス侵攻はひとまずの終わりを告げることとなった。













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