代償と恩返し
最近は少し治療院で時間が空くようになってきたので、半日営業にしてみた。
一人にかかる時間が短いこと、患者さんが減ってきたことが原因だ。
儲けは多すぎるくらいだが、お金はいくらでも欲しいので頑張りたいと思う。
空いた半日を使って、この日俺は一人で奴隷商のおじさんを訪ねた。
「おじさん、お久しぶりです。お世話になりました。クロの件もそうですが、メイサとサウに受付の仕事を紹介してくださりありがとうございます!」
俺はお礼をしに来たのだ。
「どういたしまして、といっても僕も保護した子の面倒をずっと見れる訳ではないからね。君なら雇ってくれると思っていたさ。この前少し治療院を覗かせて貰ったけど、三人とも元気で何よりだったよ。」
そう言うとおじさんはにっこりと笑った。
この人はすごい大人だなーと思いつつ、気になったので鑑定をかけてみた。
ミルフェンス・グレイファーム
年齢 《エイジ》44
職業ジョブ 奴隷商人
レベル 99/99
種族人間
技能
『奴隷魔法』 奴隷を絶対に裏切らないようにさせる魔法が使える
『経験値増量』 貰える経験値が多くなる
『夢救助』 夢で困っている人の情報と位置が提示される
『奴隷愛』 奴隷を大切にするほど、全ステータス上昇
※レベルに応じて効果上昇
状態ステイト 不眠症
犯罪歴 殺害(貴族23人、人間56人、獣人46人)
体力A 魔法力F 筋力A 智力A
…え?
「フレード君?どうかした?」
俺は驚いて止まってしまった。
父さんや母さんよりもずっと強い人を見たのは、魔法大会で魔術師達を見たとき以来だ。
それと、気になるのは犯罪歴だ。
少し前に見えるようになってから、悪い人かどうかはこの項目で決めていると言っても過言ではない。
だが、すぐに安心した。
二重鑑定でどのような理由で殺害をしたか調べた結果、奴隷を殺したり、奴隷に酷い扱いをした人を殺したみたいだった。
温厚そうな人なので、怒らせると怖いなと思った。
奴隷を大切にするいい人だと分かったが意外だった。
「な、なんでもないですよ。まあ、どうです?お礼に僕の回復魔法をサービスしますが。」
「そうかい?助かるよ、実は一回くらい私も経験したくてね。」
まず、グレイさんへお礼として回復魔法をかける。
グレイさんは凄くスッキリとした表情になった。
「ありがとう、最近悪い夢ばかり見て寝付きが悪くてね、疲れが取れず困ってたんだ、助かったよ。」
喜んでくれたみたいでよかった。
悪い夢ってことは、技能『夢救助』で何か見たのかもしれない。
メイサとサウも『夢救助』のおかげで助かったのかもしれない。
「よろしければ、診察無料券を何枚か渡しますよ、一回の回復魔法だけでは、恩が返せませんから。」
尊敬できるグレイさんに何か恩返ししたいと思い、言ってみた。
「そうかい、それならありがたく貰うよ。…その無料券は奴隷に使っても良いのかい?」
「勿論ですよ、誰にでも使用可能です!」
俺はグレイさんの為を思って言ったことだったが、本人は奴隷に使う気があるようだ。
本当にいい人だ。
「それは良かった、最近、一人新しい子が入ってきたんだけど、その子を治してあげたくてね。」
「あ、奴隷の子なら券を使わなくて大丈夫ですよ。今、僕は奴隷の治療を無料にしようとしているんです。期間限定っていう形は取りますが、結構長い時間やりますよ!」
俺は慣れてきたので、治療院開始当初から考えていたことを話した。
奴隷に大金を使えない人や、心のない人は後遺症の残る怪我とかも放置するかもしれない。
その事を考えた結果、このキャンペーンを落ち着いたらやろうと思ったのだ。
「本当かい?それはとても嬉しいよ。実は他にも古傷とか治らない子とかいてね、治してあげたかったんだ。」
「そうなんですか!大丈夫です、すぐにでも治しますよ。」
「ありがとう、君はいい人だね。三人も大切にしてくれてるし、そのまま大人になっても大切にしてな。」
グレイさんにそう言われながら、地下の広い部屋に案内された。
そこには10人ほどの女奴隷がいて、全員獣人だった。
リアルけものフレンズだ。
12~23歳までの年齢層だ。
グレイさんの後に続き、俺が入った瞬間、ものすごく警戒された。
こんな子ども相手に鋭い目付きで睨むのはやめてほしい。
「凄く警戒されてますね、安心して下さい、僕はあなた達を治療しに来た治療士ですよ。新しく出来た治療院から来たんですよ!」
僕は奴隷の女の子たちに笑顔でアピールした。
若干、学生時代に来たN○Kの集金人のような何もしないですよ感が出てしまい、余計に警戒されたのだが。
「ああ、彼はフレード君だよ。みんな、安心してくれ。彼は信用に値する男だよ。見た目は子どもだけど、頭はキレるからね。ほら、警戒解いて、仲良くするように。」
見た目は子ども、頭脳はおっさんだけどね。
うん?でも22歳以降になったことないし、様々な苦労を味わったことがないからおっさんではないか。
人生経験積まないと本当の意味で年齢は上がらないからね。
話はそれだが、グレイさんのおかげで少しは警戒を解いてくれたので、皆に回復魔法をかけてあげた。
鑑定で一番症状の重い子から治した。
まだ、七歳の狐の獣人だったが、他の獣人の女の子たちにとても大切にされているのが伝わってきた。
一瞬でその子を治して、その子が元気になった瞬間、皆驚いてくれたし、泣いて喜んでくれる子もいたので良かった。
他の獣人たちもそれぞれ何かしら気になる怪我や病気があったみたいで治せてあげれてよかった。
「「治った、治ったよ!うえーん。」」
泣きながらグレイさんに抱きつく数人の女の子達。
あ、ちょっと、抱きつくなら俺に抱きついてほしいのに。
…グレイさんめ、うらやましい。
「本当に助かったよ。この恩は必ず返すから。本当にありがとう、感謝しきれないよ。」
「「ありがとう!」」
グレイさんも目に涙を浮かべていた。
人に心から感謝されると、俺も凄く嬉しかった。
ああ、この世界に来れてよかった、神様ありがとう。
「いえいえ、どういたしまして!また、何かあったら遠慮無しに言ってください。あと、他の奴隷商の方に宣伝して貰えると嬉しいです。」
「ああ、勿論だよ!」
別れの挨拶をしたあと、俺は帰路についた。
家に帰り、父さんと母さんに奴隷を無料で治すキャンペーンの宣伝を頼み、自室で横になった。
「主よ、今日もお疲れ様なのじゃ。…ところで主、回復魔法を使った後、女の子達俺に抱きついてくれないかなーなどと、よこしまなことを考えてはおらんかったか?」
あ、ヤバい、エントは心が繋がってるから分かっちゃうんだった。
「バレたか。その通りでございます。ごめんなさい。」
最近体の成長とともに、心も思春期になっちゃってるんです。
そう思いつつエントに謝った。
エントは少し不機嫌になりながらも、怒ることはなく俺をじっと見てきた。
そして…
「…主は我だけを見てくれればいいのじゃ。」
そう言うとエントは俺に抱きついて来た。
心地よい森林の香りが俺を包んで、俺は凄く癒された。
「…エント?どうしたの?」
急なことで少し驚いたので聞いてみたが、エントは黙っていた。
だが、俺にはエントのヤキモチが伝わって来たので、少し微笑んで抱き返した。
「安心しなって。エントを放っておいたりしないからさ。」
エントを安心させるように言って強く抱き締めた。
だが、俺の慎重的にエントの胸に顔を埋めている状態なので、かなり恥ずかしいので、一旦離れたかった。
「…約束じゃぞ。主。」
エントの顔は赤くなり、凄く可愛かった。
エントが顔を見られたことに気付き、強く抱き締め治したので、窒息したが。
エントに寂しい想いをさせたことを悪いと思いつつ、エントとクロの両方を大切にできるような大人になってやると誓った。
余談だが、その日俺はエントを抱きしめながら寝たが、翌朝下着に違和感を感じてトイレで確認したところ、体が大人に近付いたことが判明した。
理性を保つ魔法を何重にもかけて、間違ってでも手を出さないようにしておいた。
「誰かが言ってたな、人生を学校に例えると、風俗は中退だって。俺はまだ、在校生でいいから真面目に暮らそう!」
そんな前世の教えを思いだしながら、安易にそういうことをしないと心に誓った朝だった。
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