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代償と新たな二人

クロが僕の奴隷になり、母さん達の過去の話を聞いた次の日、俺はクロと買い物をしていた。


観葉植物を買ったり、薬草類や包帯を買ったりして、業者に運んで貰った。

そして、そのあと、余ったお金でクロの買い物をしていた。


「クロに必要な物は全部買うよ。欲しいものも何でも言ってね!」

「そ、そんニャ贅沢、クロは出来ないニャ!」


クロは本当に必要最低限の物しか買わないので、勝手に治療院の二階の部屋に、業者に言って色々運び込んで貰った。

衣装棚や鏡、沢山の服や下着に雑貨などなど、思いついた物を片っ端から頼んでおいた。

…お金、かなり無くなったけど。


「クロ、僕はクロが贅沢だと思うことも平然とやってあげることが出来る男になりたいんだ。だから、遠慮しないで言ってね。」


「クロにはもったいないニャ。でも、うれしいニャ!」


少し休憩した時にそんなことを言ってみた。

クロの笑顔はとても素敵だった。


「…クロ。」


その笑顔に心を奪われた俺は思わずクロを抱きしめていた。


「…ニャ、ニャ!?ご、ご主人様!?」


クロは温かく、心が安らぐ香りがした。

でも、何故かとてつもない愛しさと切なさが溢れだしてきて、無意識に泣いてしまっていた。

心の何処かで、五年後に離ればなれになってしまうことを考えてしまったのかもしれない。


「ごめん、クロ。もう少しこうさせて。」

「クロはご主人様のものニャ。遠慮はいらないニャ。」


クロも俺の背中に手を回して抱きしめてくれた。

いつまでもこの時が続けばいいのにと思った。



身長的にクロの胸に顔を埋める形になっていた俺は、しばらくして落ち着いたので、買い物を再会しクロと外食を済ませた。

奴隷は地べたで食べろとか言う人はこの街の飲食店では無いみたいなので良かった。


そしてその後、治療院までクロを送り届けた。


「それじゃあ、また明日ねクロ。あ、ちょっとこの後驚くことあるかも知れないけど。」


「また、明日ニャ、ご主人様。なんニャ!?その企んだ笑顔は。少し怖いニャ。」


ちょっと、怖がられてしまった。

まあ、クロと別れたあと、「ニャニャ!?ニャー!!」とかクロの驚く声が聞こえてきたので、やって良かったと思った。



それから、数日が過ぎ、今日は治療院で雇う二人の面接だ。


「さて、何人くらい来てるかな?」


毎朝決まった時間に僕の家に来てくれるクロと、話しながら治療院にやって来た。


「あれ?…誰もいない。」


夢かと思ったが現実のようだ。

予定では沢山の人がいて、選ぶのが大変になると思っていたのだが。


「だ、大丈夫だニャ、まだもう少し時間あるからすぐ来るニャ!」


クロに励まされたが、地味に悲しかった。

まるで自分で開いたパーティーに予想の半分も来なかった時みたいだ。


「多分、お客さんとしては来る人は多いけど、一緒に僕みたいな子どもの下で働くのが嫌な人が多いんじゃないかな?…他にもっといいバイト先だってあると思うし。」


詳しい事情は分からないが、人がいないのは事実なので焦っていた。

ちょうどその時だった。


「す、すみません、募集まだ空いてますか?」


駆け足で近付いてくる二人の姿が見えた。


「空いてるよ、ゆっくりでいいから走らずに!」


近付いてきた女の子は、パッと見は人間だが尻尾がスカートからチラッと見えたので多分、獣人の血が入っているのかなと思った。

しかも、顔が同じだから多分双子だ。


「二人は面接受けに来たってことでいいんだよね?」

「は、はい、そうです。お願いします!」


二人を治療院の中へ案内し、椅子に座ってもらい向き合った。

緊張している二人を相手に面接を始めた。


「二人は双子ってことでいいのかな?じゃあ、まず名前を教えてね。」


「はい、私は姉のレオル・メイサです。母が獣人で父が人間のハーフになります。」

「わ、私は妹のサウです。」

「「よろしくお願いします!!」」


二人は、虎かチーターか、そんなような獣人のハーフだと思う。

二人とも綺麗な黄色の髪で、姉の髪は長く、妹は短い。

肌は白っぽく、結構可愛い。

姉の方が若干目がつり目で、妹はタレ目なのが違うくらいで後はほぼ同じ顔だ。

二人とも猫科特有の目をしている。


「メイサとサウだね!二人はハーフで間違いない?」

「そうです、父が人間で母が獣人です。」


基本的にメイサが受け答えをしてくれるみたいだ。

そして、やっぱりハーフで合ってたみたいだ。


「二人はこの街で見たこと無いけど、最近来たのかな?」

「はい、つい先日までガルム獣国にいました。…三日ほど前にこの街へ移住しました。」


俺は11年間この街で育ったので、新しくきた人かどうかがが分かった。

最近は、彼女たちのようなハーフがたくさんこの街に来ているのを知っていた。


「やっぱり、最近だね。何でこっちに引っ越してきたの?」


ただ単に疑問に思ったので、聞いてみたら凄く悲しそうな顔をして、二人は答えてくれた。


「じ、実は…。」


メイサとサウが交代交代に説明してくれた。


二人の親は三年ほど前に事故で他界しており、二人は何とかガルム獣国で暮らしていた。

しかし、最近になって人間の血が流れている事を理由にひどい扱いを受けるようになり、ついには国から追い出されたらしい。


国に居られなくなった二人は、クロム王国に逃亡しようとしたが、国境の森で迷い困っていた時にたまたま通りかかった、奴隷商のおじさんに保護されてこの街に来たそうだ。

そして、そのおじさんに俺の求人を紹介されて来たらしい。


「…そうか、大変だったんだね。ごめんね、軽い気持ちでこんなこと聞いちゃって。」

「いえ、いいんです。事実は変わりませんから。」


なんかキナ臭くなってきた。

ガルム獣国は何を考えているんだろう。

少し不安だ。


「二人とも、安心して。勿論、僕は君たちを採用するから。治療院の受付しっかりやってくれる?」


この話を聞いたこともそうだし、元々二人しか応募に来なかったのでこれで良いだろう。


「「は、はい、もちろんがんばります!ありがとうございます!」」


二人は喜んでくれたみたいで良かった。

奴隷商のおっちゃんに今度お礼を言わないとだな。

そういえばおっちゃん何で森にいたんだろう?

…まあ、いいか。



俺は取り敢えず、二人にお金をあげて身の回りの準備をするように言っておいた。

二人は遠慮していたが、無理やりお金を渡しておいた。

明後日からついにオープンするので、明日打ち合わせをすることを伝えておいた。


大変だろうけど、がんばってほしい。

…面接の二日後にオープンさせるなんて、今気付いたけど鬼畜かもしれない。


二人と別れた俺はクロに先に、受付の仕事を教えておいた。


「頑張るニャ!」


クロは張り切ってくれているので、うれしかった。


「クロ、僕の治療院の絶対的なルールを破る人がいたら教えてね。僕が退出させるから。」

「わかったニャ!」


俺は、治療院を運営するにあたって、いくつかルールを決めていた。


1つ、揉め事を起こさない。

2つ、重症患者優先。重症かどうかは俺が決める。

3つ、種族や地位は関係しない、皆平等に治す。

4つ、従業員または治療院に危害を加えない。

5つ、ルールを破った者には適切な処分を下す。


木に掘って治療院の壁にもこのルールを張り付けておいた。

クロにはもう詳しく説明済みだ。

もし、ルールに不備があったら付け加える予定だ。


「さて、メイサとサウには悪いが明後日は忙しくなるからな。クロは見本に慣れるように頼むぞ。負担を大きくかけるが頼むな。」

「大丈夫ニャ!任せるニャ!」


笑顔で返事をしてくれるクロを頼もしく思いながら、俺は最終的な確認を進めることにした。



…ちなみに後で分かった事だが、冒険者ギルドに貼られていた求人表の給与の額がゼロが1つ足りずに、とんでも無い安値になっていた。

そりゃ、1月25000クロムで働く人なんていないわな。

…雇い主が子供だからって理由も強いかもしれないが。

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