2/2 ☆青い雪
「ねえねえ!!青い雪って知ってる?」
「何それ」
久しぶりに雪の積もったある日。
屋根の上に積もる雪を物干しざおでゴリゴリやっていた私に、娘が声をかけてきた。
「なんかツイッターでバズってる、ほら!!!」
娘の差し出したスマホ画面には、奇麗な水色の雪の画像。
・・・うわあ、すごく良い色!!
私は鮮やかな空の色も深い海の色も好きなんだけど、ほのかに青い色も好きなんだよね!!
なんていうのかね、「白?いやいやこれは水色なんですよ、ほんのり色付いているでしょう、ねえこの奥ゆかしい感じ素敵でしょう、でもね、私は青って宣言するのも申し訳ないから・・・ただ静かにここで佇ませていただきますね」的な・・・ものすごく消極的な存在感がね、尊いっていうかね。
「お母さんいつも空ばっか見てるくらい青色好きじゃん、一回くらい見といたほうがいいんじゃないの!!!」
「うーん、確かに…ぜひ見たい!!!」
幸い手ごろな雪は目の前にわんさかある。
今しがた屋根から降ろしたばかりの雪をかき集め、真ん中に穴を開けて覗き込むも…、まるで青さを感じない。
グぬぬ…これはいったい……!!!
雪かきの疲労感をもろともせず、スマホで情報を漁りあさり漁りあさり…!!!
息子も呼び寄せ、いろいろと調べてみたところ。
積もった雪が、光を吸収して青く見えるのだそうだ。
プールの水が青く見える、あれと同じ原理らしい。
良く晴れてるのになあ…、全然青くならないのはなんでなんだ。
「うぐぐ、中途半端にかき集めた雪じゃ、幻想的な青がみつかりゃしない…」
「諦めたら青は手に入らないよ!!」
「がんばろう!」
量が足りないのかと思って、庭の雪や車の上に積もる雪を一か所にまとめてみるも、まるで雪は青く輝かない。
むしろこう、なんかぐしゃぐしゃしてて水っぽくて、微妙な感じになってきたぞ…。
「無理だった…」
「まあまあ!!次に大雪降ったら見れるって!!たぶん!!!」
…いつか見られたらいいなあ、そんなことを思っていたのだが。
「こんにちは!!!」
あくる日の夕方、隣町の小田さんが…何やら荷物を抱えてやってきたぞ!!!
「あれ、今日旦那は公民館の改装に行ってるけど」
「うん、今一緒にやっててさ、奥さんが青い雪見たがってるって話聞いたもんだからね!抜けてきたわ!!!」
・・・はい?
「見てみて!これはね、蔵王のね…!!!」
小田さんは雪国の出身で、毎年八回はスキーに行くという強者らしい。
持ち込んだ大荷物は…写真の額にアルバム、ポータブルDVDプレイヤー!!!
人好き、話好き、おしゃべり大好き、自分大好き、常にマイペースで時間経過をまるで気にしない小田さんはですね。相当かなり話が長くてですね。
正直……町内会の集まりの時は近寄らないようにしている人なんだけどね?!
くそう、おそらく改装中にずっと話しかけられて辟易した旦那が…画策しやがったな!!!
「でさ!!!この‥ほら、雪の壁んとこ!!止めたげる、見てみて、ここ青いでしょ!!これはね、光が乱反射して、青が凝縮されてるからこんなにもいい色が出てんの!!この山の表面もさあ、よく晴れてないと青くなんなくって!!」
「ホントだ、青…
「こっちの方がよくわかるよ!!ほら!!どう見ても青いでしょ!!ここはねえ、センターハウスにも青いカレーが売っててさあ、すっごくウマいの!!」
「それは美味しそう…
「うまいと言えばさあ、これ見てよ、鎌倉の中で食べるきりたんぽ!!!美味かったんだわー、オレンジ色に染まってるのはね、暖炉の火が…」
ひいー!!
合の手を入れるヒマすら与えてくれねぇ―!!!
夕方四時半に凸してきた小田さんは、実に七時になって旦那が帰宅するまで嬉々として語り続け、晩御飯の買い物はおろか米すら炊くこともできず、外食をする羽目になってですね…。
「はあ…、もうしばらく青い雪はいいや…」
「心底乙wwwお父さん側としてはめっちゃ助かったけど!!!」
「ウケる!!断ればいいのに…」
「かわいそうだった」
旦那のおごりで夕飯をご馳走になる事になった私はですね。
葉山さんの居酒屋で、マリブサーフ、スカイダイビング、ブルーハワイ…オサレな青いカクテルをぐびぐびいただきながら、疲労を回復したっていう、お話…。




