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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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1/17 ☆怪しいうさぎ

 朝、六時。

 まだ薄暗い幹線道路沿いの歩道を、一人…歩く。

 私は、雨の降っていない日は、ウォーキングに出かけるのが習慣となっているのだ。


 辺りがまだ暗いから、車のライトが…ずいぶん、眩しい。

 片道四車線の大きな道路の右側の歩道を歩く私を、向かってくる車のヘッドライトが容赦なく、照らす。

 そのまばゆい光をよけるように…俯き加減で、歩みを進める。


 車通りの多いこの道を抜けてしまえば…、あとはそれほど眩しさを感じるような場所はない。

 公園へと続く道は車通りも少なめだし、街灯もまばらにしかないからだ。


 大通りを曲がって、薄暗い閑静な住宅街の道へと入る。


 真冬の早朝という事もあり、人はほとんどいない。

 夏であれば…今の時刻はすでに日が昇っている時間帯であり、ウォーキングを楽しむ人々はそれなりにいる。すれ違う皆さんとあいさつを交わすことも多いのだが…冬はずいぶん、孤独だ。ウォーキングは、季節によってずいぶん…人気の時間帯が変わるのである。

 私は年がら年中、毎日同じ時間に同じ道を通っている。娘のお弁当を作って、手渡して、お見送りをした後ウォーキングに出るのが日課になっているからだ。


 日が昇るまでまだ時間がかかるので、暗くて良く見えないし…吹き付ける風もかなり冷たい。

 私はパーカーの紐を絞って…帽子部分を頭に密着させ、熱を逃がさぬようにした。


 今日は…少し雲があるな。

 でも…多分天気は、午後から、晴れ。


 空の端が青くなる頃、上空の雲が際立つようになる。

 それを見上げて天気予報をするのが、私のひそかな楽しみだったりする。


 公園の入り口にある階段をのぼりながら、今朝の冷え込み具合もチェックする。

 階段を上る時に、足もとが凍り付いていたら…かなりの冷え込みだという事だ。

 階段を上り終えて、目の前にある広大な芝生に霜が降りていたら…かなりの冷え込みという事だ。


 今日は霜が降りていない。

 …そうだなあ、起きた時、ちょっといつもより寒くなかった気がしたんだ。

 いつも底冷えしてるキッチンがそうでもなかったからね。


 ……よかった、いつもみたいに厚着してこなくて。


 私は毎朝、公園で流れるラジオ体操をすることにしている。

 厚着をしてくると、体操がやりにくくなってしまうのだ。


 この間の大雪の次の日の朝なんて、もこもこに着こんだ着ぶくれ姿で体操して汗だくになっちゃって大変だったんだよ……。


 ♪♪♪~


 ラジオ体操が始まった。


 私はいつもの場所で、いつものように…体を動かす。

 朝六時ちょうどに家を出ると、ちょうどイイ感じに荷物が置ける切り株の前でラジオ体操が始まるのだ。


 イチ、ニ、サン、シ。

 …ゴ、ロク、シチ、ハチ。


 ラジオ体操第一、第二と終わる頃には、空がずいぶん明るくなる。


 このころになると、ウォーキングの人たちが少しづつ増えてくる。

 少なからずいた、冬の早朝のラジオ体操を終えた人々が帰路に就くということもある。


 すれ違う人はいるが…早朝という事もあって、皆寒さに凍えて下を向いている。

 冬の朝は…見知らぬ人同士のコミュニケーションの機会を、減らしてしまうのだ。


 早朝ジョギングの人も少しづつ現れ始め、後ろから勢いよく抜かされてゆく。

 抜かしてゆく人は、私に声をかけることなく、走り去ってゆく。


 私は鍛え上げられた肉体を冬の空気にさらしている強さに感心して…その姿を見送るのだ。


 ……公園内を一周回ったあと、上ってきた階段を降り、自宅へと帰る。


 昇ったばかりの朝日を浴びつつ、今日一日のことを考えながら、明るくなった道を歩く。

 車通りの多くなった幹線道路を歩きながら、今日は何をしよう、これをしたい、あれもやらねば等々、予定を組み組み自宅へと向かうのだ。


 ……そして、帰宅した私は。


「あ、おかえりーって!!!何それ!!!その格好で出かけたの?!」

「おかえり」


 旦那のでけえ声と、息子の落ち着いた声に出迎えられましてですね。


「今日パジャマ洗う日だしさあ、洗う前に汚しとこうと思ったんだけど?」


 いつもだったら着替えて厚着して出かけるんだけどさあ、今日はちょっと温度も高めだったんで、フリースのパジャマ…うさぎの着ぐるみなんだけどね、それを着てウォーキングに出かけたんだよね!

 パーカーになってるから頭も寒くないし、帰ったら洗濯機にポイすればいいかなって思って!


「変な目で見られなかった?!怪しいよ!!早朝にピンク色のウサギ出現とかさあ!!!」

「いや別に…誰も何も言わなかった、むしろ誰にも声かけられなかった。」


「それって怪しすぎて誰も声かけられなかったパターンなんじゃ?!」

「ふふ、かわいい」


 ウサギを脱いでいる私を見て笑っている息子はというと、牛の着ぐるみを着ているわけですけれども。


 ……うちは冬の間、着ぐるみをパジャマにする癖があってですね。

 娘はヒヨコの着ぐるみをですね。

 なお、旦那は体型の問題で5Lサイズの地味なトレーナーである。


「じゃあ、着替えて朝ごはんにしますよ!今日はね、お姉ちゃんのお弁当の残りがいっぱいあるよ!」

「はい」

「お父さんも食べる!!」


 一瞬でテーブルの上のサンドイッチも卵とじもおにぎりもミートボールもなくなり。


「はい、じゃあ今日もにこやかに朗らかに行ってらっしゃい!」


「はーい!」

「はい」



 息子と旦那を見送った後、職場に行った私はですね。



「あ!!!春川さん、ちょっと見てよこれ!!!」



 やけに盛り上がっている、同僚たちが、おりましてですね。



「おはよ…うん?なに、どうした……」



 何事かと、覗き込んで、みましたらですね。



「謎のウサギ出現だって!!!ウケるwww」

「これ絶対高速横の大池公園だよね?」

「誰だよwww」

「今朝らしいよ、地味にバズってる!!」

「これうちの店で売ってるウサギの着ぐるみじゃんwww」

「うちの従業員じゃね?」



 ……どこかで見たようなウサギをですね。




 同僚の、ツイッターの画面で、見たと、言う話……。


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