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ヤラカシ家族の386日  作者: たかさば


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12/28 ☆大変スピーディーな、年末

「ねえ、この瓶全然あかない!!あけて!!」

「あかない。」


 年末のクソ忙しい中、娘と息子がてってけてってけやってきた。


 常日頃の整頓がなっていない我が家、あと三日で新年がやってくるというのに、玄関には一面の靴、傘はあちこちで立ちん坊、廊下にもらい物の山、リビングに寝転がる猫わんさか、キッチンに賞味期限切れの食いもんがずらりで、もうね、ホント忙しいのなんのって!!


 このままなあなあで過ごしては永遠に年はあけないという事で、意を決してあさイチから大掃除をしている家族がおりましてですね!!!


 玄関と廊下とリビングを任せたはずなのに、やけにへらへらした様子でこちらにやってくる子供達…ちょ!!あんたら大掃除どうしたんだ!!!


「何それ、あんたら掃除してたんじゃなかったの!!終わってからにしてよ!」

「もう終わったよ!!ソファの下から出てきた瓶の中に五百円玉入ってたからさあ!!!肉まんでも買ってこようと思ったんだけどあかなくて!!」

「肉まん食べたい。」


 むむ…私が一心不乱に冷蔵庫の掃除をしているすきに…片づけただと?!


 …首を伸ばしてリビングをのぞくと、確かにキレイになっている!廊下に続くドアの所にはゴミ袋が二つ、やけに景色が明るいのは…気のせいなんかじゃ、ない!普段全く片づけないくせになかなかのいい仕事っぷりじゃないか、そうとう仕事が早いじゃないか、なぜそのクオリティを普段から発揮しないのか!


「早っ!!だったらこっちも手伝ってよ!!」

「手伝うよ!でもおなか空いちゃってさあ!!満腹になったらやるから!!はい、あけて!!」

「あとで手伝う。」


 賞味期限切れの調味料のチューブや瓶食いかけのお菓子に謎の物体その他もろもろ…足元に山積みになってて身動きの取れない私に大きな瓶が手渡された。お徳用サイズのジャムの空き瓶の中に、五百円玉が五枚?入っている。誰だこんな所に入れたのは。…旦那っぽいな、多分旦那だな、よしもらってしまおう。


「もー、仕方ないな…。」


 ビンの蓋をパカリとあけてさしあげる。


「うわ!!!びくともしなかったのにすごい!!火事場のバカ力だね!!!」

「平常運転の普通の力だよ!!」


 別にピンチにも陥っておらず普通に平常心で開けましたけど!!…まあね!!多少は冷蔵庫の中の惨状に中てられて怒りがこもってはいたかもですけどね!!!


「ありがとー!!」

「ありがとう。」


 娘と息子は意気揚々とキッチンを出ていった。私はもくもくと掃除を続ける、続ける、続ける、続ける…。




「ねーねーこれ腐ってる?」

「…表面に白いもん浮いてるな、うん腐ってる。」

「洗う。」


 近所のコンビニで販売中の中華まんをすべて買い占めてきた娘と息子は、やけにテキパキと掃除を手伝ってくれている。…そりゃね、腹いっぱいになったからね、動いてもらわねば困りますよ。


 八個も買ってくるとかさあ…まあ、いろんな味食べることができてちょっとうれしかったけどさあ…。自分もちゃっかり腹ごしらえをしたわけですけれども。今年の餃子まんはクオリティが違うってね。そのうまさに食べ進める手は止まらず、あっという間に完食ですがな。まあいいや。


 ずいぶん難航していた冷蔵庫の掃除が、さっくさっくとすすんでゆく。やっぱさあ、三人いるとスピードが違うんだよね~。


 一人だと一回一回瓶の中身見て確認してって大変だけど、作業分担することで大幅なスピードアップが可能となるのですよ!私が冷蔵庫の中からいらないと思われるものを取りだし、娘がそれを分別し、息子が洗わねばならないものを洗う。瓶ってさ、洗ってごみに出さないといけないんだよね。


 賞味期限が切れてるのはもちろん、買ったはいいけど食べ切れてないやつだとかもどんどん捨てていく。娘が食べたいものは別途ケースに入れて、年内に消費を目指すシステム。あと二日しかないけど…。


「もうさあ、ジャムは小さい瓶で買えって言ってんじゃん、食べ切った方がお得なんだよ!こんな大きい瓶の買って、半分以上残ってんのにカビ!!」

「だってお父さんがどうせ食べるなら大きいのが良いっていうんだもん!!」


 こういうところで小金がかさんで食費を圧迫するんだよ!!!


「練乳なんて三本もあるよ、何であるのに買ってきて、あるのに開いてるのを使わず新しいのを開けるのか…!!!」

「新しい方が新鮮だってお父さんが!!!」

「クッキー作る。」


 どうせまたすぐに新しいのを買ってくるに違いない、私は息子に三本の練乳を渡した。砂糖の代わりに練乳使うクッキーはさ、私のレシピなんだけどね、今や完全に息子に委譲されておりまして…いやもう移譲か。時のたつのははやいものだ、卵を割るのに難航していた息子が、一人でクッキーを焼けるようになるとかさ…。


「…よし、おおかた終わった、あとは野菜室だけだ。ええと、飲み物の賞味期限チェック…。」


 うちの冷蔵庫の野菜室は、野菜室とは名ばかりで飲み物ばかりが入っていたりする。あんまり野菜を冷やす習慣がないってていうか。夏はスイカが入ったりブドウが入ったりするんだけど、基本ペットボトルや缶飲料ばかりが入っている。飲み物は案外サクサク消費していくからか、期限が近いものはほとんどない。


「…あれ、何これ!!変な封筒が入ってる!!!」


 六缶パックの野菜ジュースの下から、何やら茶封筒が一枚出てきて…わ!!何これ、一万円入ってる!!!旦那のへそくりか?!ヒャッホウ!!今日はこれでいい牛肉買っちゃお!!!


「ねえねえ!一万円入ってた!!今日これですき焼きやろ!!!」


 大喜びで娘と息子をふり返ると。あれ、なんか二人とも変な顔をしているぞ。これはいったい。


「それお母さんがひどいことになってへそくりしたやつじゃん!覚えてないの?!」

「ひどかった。」


 ・・・うそーん。

 ・・・全然、覚えてねぇ~!!!!


「ねぇ!その手に持ってるの、なに!!!向こう側に並んでる缶、何!!!」

「なにか持っている。」


 げげ!!!

 避けておこうとした缶を目敏く見つけた、善良な家族が二人!


「いや、これは賞味期限が近いのが出てきたからね、早く飲まないといけないやーつで―――!」

「リビングに貼ってある紙、見えないの!!!」

「禁酒って書いてある。」


 先週少々やらかしてしまった私はですね、二日酔いの覚めぬまま、家族全員の前で書をですね、うふふ、したためさせて頂きましてですね、あはは。


「でもさあ、飲まないで捨てたらもったいないじゃん!賞味期限近いから誰にもあげられないじゃん!…私が飲むしか!」

「バイト先の人に聞いてみる!!!ラインでも聞いてみる!!」


 娘は何やらスマホをポチポチやっているっ!!


「…ゆいのお母さんがもらってくれるって!!はい、全部没収ね!!」

「もらっておく。」


 ああー!酒が息子に持って行かれたー!娘はお買い物袋に手際よく缶を五本詰め込んでっ!!

 ちょ、なにこの手際のよさ!


「じゃあ、今から!!ごみを玄関横に移動させて!お酒を届けて!最高級の牛肉を買いに行こー!!!」

「行こう!」


 きちんと分別されたごみ袋を持って!!酒の入った袋を持って!一万円の入った封筒を持って!!!娘と息子がキッチンを出ていくー!!


 何この連携、行動の速さ!!いつもののんびりのほほん適当ばんざいが嘘のようにスピーディーだとぅ…?!


「お母さん遅いよ!」

「ずいぶん遅い。」


 行動の鈍さを指摘されてしまった私はですね、すごすごと、しっかりものの皆さんのあとを追ったという、お話、ですよ…(。>д<)

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