紫音と初めて会う二人
冬夜は靴を履き替えた後、群がる男子たちを薙ぎ払い、校門を目指して歩く。
佐藤とアレックスも冬夜が掻き分けた道を後ろからついて行き、人だかりを抜けていく。
そうして、校門に辿り着いた冬夜は門の前で立って待っている紫音を見つける。
そんな紫音の周りにはこの学校でも有名なヤンキーがおり、彼女に言い寄っているようであった。
「なあ、俺らと遊びに行こうぜ?絶対後悔させないからよぉ」
「興味ないので話しかけないでもらえますか?」
「おいおい、俺らにそんな口聞いちゃって大丈夫なのか?俺らはここらでは有名だぞ?痛い目に遭いたくなかったら素直に言うこと聞いたほうがいいと思うぜぇ?」
「私言いましたよね?話しかけないでと。貴方、口臭いので話しかけないでもらえますか?正直気持ち悪いです」
「て、テメェ!!」
ヤンキーは紫音に馬鹿にされたことに激怒し、彼女へ掴みかかろうとする。
次の瞬間、ヤンキーの手は誰かによって止められてしまう。
ヤンキーは自分の邪魔をしたものに怒りを滲ませながら視線を向けた瞬間、彼の表情は真っ青に染まる。
何故なら、ヤンキーの手を持っていたのは怒りの感情を全面に滲ませている冬夜であったからだ。
このヤンキーは過去に冬夜へ喧嘩を売り、ボコボコにされた経験がある。
そのため、ヤンキーは冬夜のことがトラウマになっており、彼の顔を見るだけでビビり散らかしてしまう。
そんな天敵である冬夜が目の前に現れた。
ヤンキーは絶叫しながら冬夜の手を無理矢理払い除け、そのまま帰って行ってしまった。
冬夜は紫音へ手を出そうとしたヤンキーをボコボコにしてやりたいところだったが、わざわざ追いかけるまでもないため、大きなため息をつくだけで済ませる。
そうして、ヤンキーを追っ払った冬夜は、
「紫音ちゃん、大丈夫だった?」
紫音の方へ近づきながら心配そうな様子で声をかける。
「うん、大丈夫だよ。だって、冬夜くんが助けてくれたからね」
「それなら良いけど、あんまり相手のことを煽らないでね?紫音ちゃんなら返り討ちにできるのは知ってるけど、それでも心配なんだから」
「ああいう頭の悪い連中にはしっかりと伝えないとダメなんだよ?だって、頭が悪すぎて言語が理解できないからね」
「まあ、確かに。ああいう連中は殴らないと理解しないもんね」
「流石冬夜の彼女だ…… 話す内容が物騒すぎる…… 」
二人の会話を聞いていた佐藤が少し引き気味で呟く。
アレックスも佐藤の言葉に共感するように首を縦に振りながら洞爺たちのことを見ている。
そんな二人を見た紫音は不思議そうに質問する。
「冬夜くん、この二人は?」
「ああ、この二人は佐藤とアレックスだよ。いつも仲良くしてる友達。前に何回か話したことあるよね?」
「ああ、いつもゲームとか一緒にしてる友達だよね。この二人が佐藤くんとアレックスくんだったんだ」
紫音はそう言いながら佐藤とアレックスを観察するように見つめる。
そして、紫音は二人に笑みを浮かべながら、
「初めまして、私は冬夜の婚約者の紫音です。いつも冬夜と仲良くしてくれてありがとうね?」
二人に感謝の言葉を述べる。
絶世の美女の笑みが直撃した佐藤とアレックスはあまりの美貌に見惚れてしまう。
しかし、冬夜が忌々しそうに咳払いをしたことで二人の意識は現実に戻り、
「いえいえ!!冬夜には普段からお世話になっているんで!!」
「僕も冬夜には色々と助けられていますし、大切な友達なので」
二人は謙遜した様子で受け答えをする。
あまりにもソワソワした雰囲気に冬夜はため息をつくと、
「というわけで、今日は紫音ちゃんと帰るから先に行くから」
冬夜は二人に別れの言葉を告げてそのまま歩き始める。
紫音は冬夜について行くように歩き始めると、後ろへ振り返り、佐藤とアレックスに笑顔で手を振って別れを告げる。
そんな二人は紫音に見惚れながら手を振り返す。
そして、冬夜たちが見えなくなった後、佐藤は放心した様子でアレックスに話しかける。
「なあ、アレックス…… 俺今まで生きてきた中で紫音さんほどの美人には会ったことない気がする…… 」
「実は僕もなんだ…… いや、テレビとかネットとかでもあそこまでの美人は見たことない気がする…… 」
「あの人が冬夜の彼女なのか…… 何となく美人なんだろうなと思ってたけど予想以上でびっくりしたよ…… 」
「僕もだよ…… まさか、あそこまで美人とは思いもしなかった…… 」
「やっぱり面のいい男は面のいい女とくっつくもんなんだな…… 世界は残酷だ…… 」
佐藤はそう言いながら自分の惨めさをひしひしと実感し、涙を流し始める。
そんな佐藤をアレックスは慰めようとするが、彼にかける言葉が見つからない。
アレックスも紫音を見たことで世界の残酷さをより鮮明に理解することができた。
あれだけ女性人気のあるアレックスでも紫音ほどの女性とは付き合うことは難しいだろう。
その事実に気がつき、アレックスはなんやかんや自分はモテると自惚れていたと実感した。
そして、自惚れていたことに気がついたアレックスは佐藤になんと声をかければいいか分からず、
「とりあえず、僕たちも帰ろうか…… 」
佐藤と一緒に帰ることしかできなかった。




