早起きする冬夜
次の日の朝。
冬夜は珍しく自然と目が覚める。
最近、誰にも起こされずに自力で起きられているなと思いながら体を起こそうとした時、自分の体に何かがくっついていることに気がつく。
冬夜が恐る恐る布団をめくってみると、そこには自分に抱きついて寝ている凪の姿があった。
凪を見た冬夜は大きなため息をつくと、彼女のほっぺたを力強く引っ張る。
ほっぺたを引っ張られた凪はその痛みから目が覚め、冬夜に涙目を浮かべながら抗議する。
「酷い!!寝てる女の子のほっぺたを引っ張るなんて!!これは許されないことだよ!!」
「じゃあ、自分の部屋で寝てよ。凪ちゃんが邪魔で起きられないし。それに、もう準備する時間なんだからちょうど良かったじゃん」
「うー!!冬夜のイジワル!!」
凪はそう言いながら抗議を続けるが彼女のことは無視してリビングへ向かう。
既にリビングには着替えた紫音の姿があり、冬夜の姿を見るなり驚きを隠せない様子で動揺し始める。
それもそうだ。
紫音が冬夜との生活の中でこんな早起きをしたのは数えるほどしかない。
そのため、共に生活する時間が長い紫音は他の二人よりも驚いてしまうのだ。
紫音が驚いて固まってしまっていると、
「そんなに驚く?まあ、自分でも少し驚いてはいるけど、それでもそんなに驚く?」
あまりにもオーバーリアクションの紫音を見て冬夜はツッコミを入れてしまう。
冬夜からツッコミを入れられた紫音は意識が現実に戻ると、驚きを隠せない様子のまま答える。
「だって、あの冬夜くんだよ?一人で起きられることなんてあり得ないとまで言われた冬夜くんだよ?驚かない方がおかしいと思うよ?」
「それ本人の前で言う?まあ、紫音ちゃんの言うとおりかもしれないけど」
「まあ、この前も一人で起きてたし、もしかして一人で起きられるようになった?」
「いや、多分なってない…… 本当にたまたまだと思う…… 」
冬夜は自信なさげに答える。
実際、彼が目覚めたのはたまたまであり、再現性はないだろう。
冬夜から起きれない旨を聞いた紫音は、
「それなら、これからも私が冬夜くんのこと起こしてあげるから安心してね」
微笑みながらこれからも冬夜を起こしてあげると宣言する。
そのように話していると、冬夜のスマホに誰からかのメールが来る。
一体こんな早い時間にメールを送ってくるなんて非常識なやつは誰だと思いながら確認してみると、クラスグループであった。
こんな早くにクラスグループにメールするなんて迷惑な奴もいるもんだなと思いながらメールの内容を確認してみる。
メールの内容によると、色々と準備があるからなるべく早く学校へ来てほしいというものだった。
せっかく早く起きたのだからゆっくりしたいのだが、流石にクラスグループのメールを無視するのは不味い。
冬夜はため息をついながら学校へ行く準備を始める。
そんな冬夜を見た紫音は不思議そうに問いかける。
「どうして学校に行く準備してるの?まだ学校に行く時間じゃないよね?」
「それが文化祭の準備で早く来るように言われたんだよ。本当に面倒臭い」
「そうなんだ。それなら先に朝ご飯の用意するね。ちょっと待ってて」
紫音はそう言うと、朝食の準備を始める。
冬夜がいつもの席について待っていると、紫音は冬夜の前に朝食を運んできてくれる。
「わざわざ用意してくれてありがとう。それじゃあ、いただきます」
冬夜はわざわざ自分の分を先に用意してくれた紫音に感謝の言葉を述べながら朝食を食べ始める。
そうして、先に朝食を食べ終えた冬夜は紫音に声をかけると、そのまま鞄を持って学校へ向かって行ったのだった。
冬夜が学校へ向かって行った後、眠い目を擦りながら制服に着替えた玲華がリビングにやって来る。
「おはようございます、紫音。どうして、朝食の用意が三人分しかないのですか?」
「それは冬夜くんが先にご飯を食べたからだよ。文化祭の準備で早く学校に行かないといけなかったんだって」
「あの冬夜さんが私よりも早く起きるとは…… 今日は雪でも降るのでしょうか?」
「確かに、冬夜くんが朝起きられるなんて夏に雪が降るくらいありえないことだもんね。本当に何があったんだろう?」
紫音たちは不思議そうに首を傾げる。
そんな二人の元に準備を終えた凪がやって来る。
凪は少し機嫌が悪いようで、顔がむすっとしている。
そんな凪を見た紫音は不思議そうに質問する。
「凪お姉ちゃん、どうしたの?何だか機嫌悪そうだけど」
「冬夜が寝てる私のほっぺをつねって起こしてきたの!!酷くない!?」
「それは凪姉さんが邪魔だからされたのでしょう?凪姉さんが悪いと思いますが」
「玲華酷い!!紫音は分かってくれるよね?」
「それは凪お姉ちゃんが悪いよ」
「紫音までっ!!もう!!みんな知らない!!」
凪はそう言いながら不機嫌そうな様子で朝食を食べ始める。
そんな凪を見た紫音たちは少し困ったような表情を浮かべながら朝食を食べ始める。
そうして、朝食を食べた三人は学校へ向かったのだった。




