ワカティナ防衛作戦(黄泉視点)五
魔法陣から召喚された黄泉は真っ直ぐワカティナへ向かう。
ワカティナに向かっている最中、黄泉は恐ろしい魔力の波長を感じ取る。
次の瞬間、ワカティナを中心に漆黒の波動が放たれ、あれだけ大量にいた化け物たちの群れが一瞬にして消滅した。
今の黄泉は全ての魔力を探知することができる。
そのため、ワカティナにいた化け物が先ほどの一撃で壊滅したのを確認することができる。
黄泉は一撃で全ての化け物を葬り去ったのを確認しながらワカティナに到着する。
ワカティナに到着した黄泉は鎖で拘束された跡のある鎧を着た騎士と対面する。
全長は3メートルほどと黄泉の二倍近くある体躯である。
騎士からはドス黒い魔力が溢れ出しており、空間を破壊しつつある。
このまま放置すれば、世界に大きな断絶が発生し、次元災害によって多大な被害が出てしまうだろう。
先ほどの一撃で世界にかかる負荷も許容量を超えかけてしまっている。
そのため、早急に彼を止める必要がある。
黄泉は目の前に立っている騎士に視線を向けたまま話しかける。
「ほとんどの力を失っているのにこの強さか。やっぱり生物としての次元が違うな。俺もだいぶ強くなったと思っていたが、まだまだみたいだ」
黄泉はそう呟きながら両手を構えると、空間に亀裂が走り、彼の両手に特徴的な漆黒の双剣が出現する。
黄泉はその双剣を掴んだ瞬間、双剣から強力な死の力が溢れ出し、双剣の周りの空間が死の力によって破壊される。
双剣への他者からの認識すらも死の力によって破壊され、黄泉の持つ双剣を認識することすらできない。
今はただ彼の両手にモザイクが握られているようにしか認識できない。
その認識すらも感知した途端に破壊されてしまうため、黄泉の持つ双剣にかかるモザイクは不安定に変化し続ける。
濃密な破壊の力と死の力によって、黄泉と騎士との間の空間は歪み、破壊され、混沌としている。
二人の間に静寂が訪れた時、黄泉が先に行動に移る。
黄泉はワカティナを覆い尽くせるほどの黒い粒子を発生させると、それを収束し、超巨大な槍へと変形させる。
そして、黄泉はその槍に死の力を纏わせ、騎士へ向けて放つ。
だが、いつの間にか鎖が巻きつけられた大剣を召喚していた騎士は破壊の力を帯びる魔力を剣に纏い、槍に向けて薙ぎ払う。
破壊の力と死の力が激しくぶつかり合い、空間を破壊しながら相殺される。
槍を相殺した騎士は剣を構えると、黄泉へ狙いを定め、
『断界烈波ーーーー』
騎士がそう唱えながら剣を大きく薙ぎ払った瞬間、破壊の力を宿した衝撃波が形成される。
衝撃波は空間を破壊し尽くしながら黄泉に迫り来る。
それに対し、黄泉は、
「死剣 枯水ーーー」
剣に死の力を集中させ、それを衝撃波に向けて放つ。
破壊の力と死の力はお互いを相殺し、空間のみを破壊する。
この数回の攻防で既に第二十次元は大規模な負荷がかかっており、次元災害が各所で発生している。
まだ小規模かつ未開拓地域や神がいない地域での発生しか確認されていないが、状況が悪化するのは時間の問題だろう。
そうして、周りへ甚大な被害を出しながら二人が戦っていると、
『おい!!バカ!!なんで普通に戦ってんだよ!!周りへの被害も考えられないのか!!』
いきなり黄泉の頭の中にヘルムの声が響き渡る。
頭の中に聞こえてくるヘルムの声は怒気が含まれており、黄泉の暴れ具合に相当キレているようだ。
まあ、普通に考えて甚大な被害が出そうになっているのに、それの対策を一切していないので、怒られても仕方ないのだが。
ヘルムに怒られた黄泉は騎士を相手にしながら答える。
「それならこっちの手伝いをしてくれないか?俺一人だとキツイんだけど」
『いや、こっちは怪我龍を連れているんだ。そっちの助けにはいけない。だから、さっさと神聖領域に引き摺り込め!!』
「まあ、やるだけやってみるが、相手が相手なんだぞ?こっちが押し勝てる可能性は100パーセントじゃないからな?」
『それくらいこっちも分かってる!!だから、早く試してくれ!!』
「了解、やってみるよ」
黄泉はそう言うと、何かの術式を編み始める。
それに呼応するように、騎士も何かの術式を編み始めた。
それと同時に、二人からは膨大な魔力が溢れ出し、世界を少しずつ侵食していく。
そして、お互いの力が接触した瞬間、激しくぶつかり合い、お互い飲み込もうとせめぎ合う。
最初こそ二人の侵食は均衡を保っていたが、少し時間が経つと黄泉の方が少しずつ押し始める。
そうして、黄泉が少しずつ押していき、最終的に騎士と自分を侵食した世界で包み込む。
黄泉の世界が騎士を飲み込んだ瞬間、二人は一瞬にしてどこかへ消えてしまう。
と思った次の瞬間、黄泉はどこからともなく現れる。
そんな彼の背中には眠りについている創が背負われていたのだった。
本来は神聖領域はまだまだ出てこない予定だったんですが、早く三章を終わらせたいがために出しました。まあ、ほとんど情報出てないので、実質出てないと言っても過言ではないです。いわゆる匂わせと言うやつですね。これは小説を書き始める前から構想していた奥義です。四年越しくらいに出せたんじゃないんですかね?ちな、設定資料集の方には神聖領域すらも超えるヤベェ技の名前が出ているので、どれか探してみてね




