ワカティナ防衛作戦(ヘルム視点)十八
ヘルムは久しぶりに後輩と最悪な出会いをして複雑な心境になる。
そんなヘルムを他所にナムルは話を続ける。
「それで、ヘルム先輩はここへ何の用ですか?と聞かなくても大体分かります。ブレイカウスの奪還に来たのですよね?」
ナムルはヘルムたちの目的を見事に当てる。
いや、普通に考えてヘルムのような大物がこんな場所へ来る理由なんて限られているので、当てられて当たり前か。
ナムルから目的を当てられたヘルムは気分を切り替え、答える。
「ああ、そうだ。話が早くて助かるぜ。それで、ブレイカウスはどこにいるんだ?」
「はは、教えるわけないじゃないですか。私はここの責任者ですよ?侵入者にそんなことしたら私の地位が下がってしまいますよ」
「やっぱり、お前は俺たちを裏切って混沌に誘いし者たちに入ったのか…」
ヘルムはそう言いながら鋭い視線をナムルへ向ける。
それに対し、ナムルは飄々とした態度で答える。
「ヘルム先輩、そんなに睨まないでくださいよ。すごく怖い顔をしてますよ?」
「御託はいい。お前は私欲で混沌に誘いし者たちに入ったのか?答えろ」
「はい、そうですよ。私は自分の意思で混沌に誘いし者たちに入りました」
ナムルはさも当然かのようにヘルムへそう答える。
それに対し、ヘルムは鋭い視線を向けたまま質問を続ける。
「なんで、お前は俺たちを裏切ってまで混沌に誘いし者たちに入った?」
「それはですね、私を次のステージへ連れて行ってくれたからですよ!!」
ナムルはそう言いながらポケットから取り出した注射器を自分へ刺す。
注射器には何かの液体が入っており、その薬が何か違法なものであることは容易に想像できる。
ナムルがその薬液を体へ打ち込むと同時に、彼からは荒れ狂う激しい魔力が溢れ出す。
それと同時に、ナムルの姿が変化していき、最終的には人型の龍のような姿になる。
今のナムルは古龍にも匹敵するほどの力を持っており、レイルアルマは警戒態勢に移っている。
その姿を見たヘルムはもう手遅れだとため息をつく。
彼は完全に力に取り憑かれてしまった。
もう、彼を昔のような好青年に戻すのは不可能だろう。
そう思ったヘルムは剣を構える。
『ヘルム先輩、本人ならいざ知らず、分身体で今の私に勝てるとでも思うのですか?自惚れすぎじゃないですか?さあ!!死んでください!!』
龍人へと変化したナムルはいつの間にか召喚した剣でヘルムへ斬りかかろうとする。
次の瞬間、
『なにぃぃいいいいい!?!?!?!?』
ナムルは突然、紫色のオーラを纏う漆黒の鎖に縛られる。
それは龍を縛るために編み出された龍縛鎖と呼ばれるものだ。
これは龍騎兵団が編み出した基本的な魔導術であり、あの強大な力を持つ龍を縛るために生み出された鎖である。
龍縛鎖はただでさえ、その捕縛力が高いのに、この鎖には龍特攻があり、龍種にはより強く縛り付ける効果がある。
そして、龍の力を己の身に宿してしまったナムルはこの龍縛鎖の餌食になってしまった。
ナムルはヘルムが龍縛鎖を使えるという事実を知らなかった。
それもそのはずだ。
ナムルは誰にも龍縛鎖を使えることを話したことはない。
知っているのは彼の古くからの知り合いだけだろう。
龍縛鎖に縛られたナムルは逃れようにも動くたびに鎖はより強く縛られ、紫雷が全身に走り、強烈な痛みに襲われる。
もがき苦しんでいるナムルにヘルムは近づいていく。
ナムルはヘルムが近づくたびに悲鳴を上げ、もがき苦しむ。
そんな彼にヘルムは冷たい視線を向けながら話しかける。
「お前は表面しか見てないから負けるんだ。昔から言っているだろう?相手をパッと見で判断するなって。まあ、今更言っても遅いか」
ヘルムはそう言うと、剣を振り上げる。
『へ、ヘルム先輩!!反省します!!混沌に誘いし者たちも抜けます!!どうか助けてください!!』
そんなヘルムにナムルは必至の命乞いをする。
そんなナムルに対し、
「最後まで、お前は生き恥をかくんだな。まあ、お前らしいと言えば、お前らしいか」
そんなことを呟くと同時に、剣を振り下ろした。
その瞬間、ナムルは木っ端微塵に切り刻まれ、彼の神核も木っ端微塵に破壊される。
後輩を自らの手で葬ったヘルムであったが、
「さて、邪魔者も消えたし、さっさと探索を続けようぜ?」
特に気にしている様子はなく、唖然としているレイルアルマに声をかける。
ヘルムに声をかけられたレイルアルマは正気に戻ると、そのままヘルムについて歩く。
ヘルムにとっては元知り合いの裏切りなんてものは何回も経験している。
彼はとても長生きなのだ。
長く生きていれば、そういうことも起こり得るだろう。
そうして、ヘルムたちはブレイカウスの捜索を続けたのだった。
ナムル君ですが、本当は戦闘シーンももっとあったり、彼のクズエピソードもあったのですが、面倒臭いし、これ以上三章続けるのはグダリが限界突破しそうなので、飛ばします。四章からはこう言う飛ばしは無くなり、普通になると思います。今の私の方が小説書く能力が圧倒的に高いので




