ギリエニア共和国の崩壊まで十三
ナタリアは父である国王が待つ病室の中へ入った。
病室には大きなベッドがあり、その上に一人の男が座っていた。
この男は全身のあちこちに医療器具が取り付けられており、そのことから重体であることが窺える。
ナタリアはこの男の方へ近づくと、
「ただいま戻りましたお父様」
ベットの上に座っている男、父である国王に話しかけた。
「良くぞ生きて帰ってきたナタリアよ。それで、会合の結果はどうだったのだ?」
ナタリアに話しかけられた国王はまずは娘が無事に帰ってきたことに安堵した。
そして、国王は続けて会合の結果はどうだったのかと質問した。
「会合の結果はまずまず、、、いえ、私たちにとってはよかったと言えますね」
国王から結果を聞かれたナタリアは結果は良好であったと答えた。
ナタリアからの返事を聞いた国王はその結果に大いに安堵し、喜んだ。
だが、ナタリアが答える際に言い淀んでいたことに少しの不安があった。
ナタリアも国王が少しの不安を抱いていることに気づいており、すぐに本題に移る。
「あちらの要件としては一つだけでした。その要件さえ飲んで仕舞えば、この国は見逃してくれることを保証してくれるとのことです」
ナタリアは国王に会合で黒と白の毛が混じる男性からの要件は一つであったことを話した。
そして、その要件さえ飲んでもらえれば、この国のことを見逃してくれることも伝えたのだった。
ナタリアから黒と白の毛が混じる男性から出された要件は一つだけだったと伝えられた国王は複雑そうな表情を浮かべている。
それも仕方ない。
国王はその黒と白の毛が混じる男性から出された一つの要件を知らないからだ。
もしかしたら、一つだけと言ってもその一つがとても重大な案件である可能性もあるのだ。
国王が不安に思うのも当然だろう。
そんな国王はナタリアに質問する。
「その要件とは何なのだ?」
その要件とは何なのかと。
国王から質問されたナタリアは答える。
「それはガイデア神殿の鍵を引き渡すというものです」
ガイデア神殿の鍵を引き渡すことであると。
ナタリアから黒と白の毛が混じる男性の要件を聞かされた国王は凄く驚いた様子で固まる。
ナタリアも初めて聞いた時は驚いたのだ。
国王が同じ反応をするのも必然だろう。
国王は驚きのあまりしばらくの間は言葉を詰まらせていたが、少しずつ落ち着きを取り戻していった。
何とか落ち着きを取り戻すことが出来た国王は真剣な顔で何か考え始める。
そして、
「分かった。ガイデア神殿の鍵を引き渡すことでこの国を救えるというのならば、引き渡そう。あれは確かに貴重かつ大切なものであるが、国民たちの命には変えられない」
国王はガイデア神殿の鍵を黒と白の毛が混じる男性に引き渡すという選択を取ることにした。
国王がガイデア神殿の鍵を引き渡すことを選択したので、ナタリアは宝物庫へ向かうことにする。
宝物庫は王城の地下にある。
あの男からの要求を叶えるためにもナタリアは急いで地下へ向かう。
地下は王族以外の立ち入りが禁止されているため、整備などもされておらず、埃などが溜まっている。
階段は暗く、灯りは最低限しかない。
そんな階段をナタリアは全く気にせずに急ぎ足で地下へ向かうために降りていく。
そして、ナタリアは宝物庫へ辿り着く。
宝物庫は封印により、王族にしか開けられない。
それも現国王と王位継承権一位の王族のみだ。
そして、ナタリアは王位継承権一位であるため、宝物庫の封印を解くことが出来る。
ナタリアは宝物庫の扉に手を置く。
そうすると、宝物庫に貼られていた結界が解け、扉がゆっくりと開いていく。
宝物庫の扉を開けたナタリアはそのまま宝物庫の中へ入ろうとした時、頭に強い衝撃を受ける。
ナタリアは頭に強い衝撃を受けたことで脳が揺らされ、その場に倒れ込んでしまう。
ナタリアが倒れ込んだ瞬間、お腹の辺りに激しい痛みと焼けるような感覚に陥る。
ナタリアは状況が理解できずに混乱していると、後方から男たちが現れる。
彼らは生き残ったギリエニア共和国の権力者たちだった。
ナタリアがいきなりの裏切りに頭が真っ白になっていると、
「ガイデア神殿の鍵を使えば、あの忌々しい男も倒すことができる。その栄誉は我々のものだ」
権力者たちの中でも最も位の高い者がナタリアにそう告げる。
ナタリアは彼らが言っている意味が理解できなかった。
王家しか知らないガイデア神殿の鍵のことを知っていること。
それであの男を倒そうと無駄な行為をしようとしていること。
何よりもこの危機的な状況で裏切ったこと。
ナタリアは現状を理解できず、頭が真っ白になったまま固まってしまう。
そんなナタリアを無視して権力者たちは宝物庫の中へ入っていく。
そして、宝物庫の最奥に収められているガイデア神殿の鍵を奪い取ったのだった。




