ギリエニア共和国の崩壊まで五
男「ガイデア山の頂上にある始源の巨人が眠る神殿『ガイデア神殿』の鍵を譲ってもらおうか」
黒と白の毛が混じる男性はナタリアに自らの要件を話した。
男性からの要件を聞いたナタリアは信じられないという表情を浮かべている。
それも仕方ない。
代々王位継承した者にしか伝えられてこなかった秘宝を王家や歴史の長い他の山脈に住む巨人族でもない巨人たちの住む山脈群の外から来たであろう者が知っているのだ。
これにはガイデア神殿の鍵を知っている者なら驚かずにはいられないだろう。
まさか、ギリエニア共和国に代々受け継がれている秘宝の中でも最上位に位置するガイデア神殿の鍵を要求されるとは思ってもいなかったナタリアは彼からの要求への回答をすぐに答えることが出来なかった。
ナタリアが驚きのあまり思考がまとまっていないのも要因ではあるが、彼女がすぐに答えることができなかった一番の要因はガイデア神殿の鍵にある。
ガイデア神殿の鍵について語る前に前提として、ガイデア山自体が到達不能とされるほど険しい山であり、歴史の文献や古くから伝わる伝承などでガイデア山の頂上に到達した者は一度も存在していない。
ギリエニア共和国の中でも屈強な者が幾度となくガイデア山の頂上を目指し、ガイデア山に挑み続けて来たのだが、一度として、ガイデア山の頂上に到達した者はいない。
それどころか、ギリエニア共和国の中で最もガイデア山を登った者でも山の半分にも到達しておらず、ガイデア山がいかに登頂が難しい山であるのかが窺える。
そして、ガイデア山の頂上に関する情報は皆無であり、超古代の歴史書であったとしても頂上に何か建造物が存在するのではないかという曖昧な記述しか残っていない。
そのため、巨人たちの住む山脈群に住む多くの巨人たちの間ではガイデア山の頂上には何もないというのが共通認識であり、ガイデア山の頂上に何か建造物があると考えているのはごく一部の歴史学者しかいない。
そのように、存在自体が怪しいガイデア山の頂上にある建造物なのだが、実際にガイデア山の頂上には建造物が存在しており、ギリエニア共和国の王家にはその存在がギリエニア王国時代から言い伝えられている。
それがガイデア神殿である。
ギリエニア共和国に伝わる伝承によると、ガイデア神殿はかつて、巨人たちの始祖である始源の巨人がガイデア山に降り立った時、始源の巨人の最初の分身体たちが彼女の居場所として作られたとされている。
ガイデア神殿の姿が描かれた絵などはギリエニア共和国にも存在していないのだが、紡がれてきた伝承によると、ガイデア神殿は石英のように綺麗な白色の建材で建てられた建物であるとのことである。
そして、ガイデア神殿には巨人たちの始祖である始源の巨人が深い眠りについているとされている。
ガイデア神殿で始源の巨人が深い眠りにつく際、ガイデア神殿には強力な結界が貼られたらしく、その結界は根源を破壊するほどの威力の攻撃を受けたとしても余裕で耐えられるほどの防御性能があると言い伝えられている。
始源の巨人が深い眠りにつく際にこれほどまで強力な結界をガイデア神殿に張ったのかは不明である。
ガイデア神殿に張られている結界だけでも恐ろしいのだが、ガイデア神殿自体の防御性能も高いとされている。
ガイデア神殿に使用されている建材は貴重な素材が使用されているらしく、その素材は高い防御力に加え、魔力伝導率もミスリルやアダマンタイトなどの魔金属と比較にはならないほど高いとされる。
この二つの性質から、ガイデア神殿には超強力な防御魔術がかけられているらしく、その本来の防御力に加え、魔術の強化により、ガイデア神殿の防御性能は外に張られている結界よりも高い。
そんな強力な結界に加え、超強力な防御性能を誇るガイデア神殿に侵入することは不可能に近いと思われるのだが、とある物を使うとガイデア神殿には簡単に入れる。
それがギリエニア共和国に代々受け継がれている秘宝の一つ『ガイデア神殿の鍵』である。
このガイデア神殿の鍵はギリエニア共和国の宝物庫に納められている秘宝の中でもさらに特別なものであり、宝物庫にある隠しギミックを解くことによって入ることの出来る隠し部屋の中に納められている。
その見た目は鍵のような見た目はしておらず、大量の立方体が集合したような箱の形をしており、立方体と立方体の間は青色に光っている。
このガイデア神殿の鍵を保持していると、本来そのまま入ることが不可能であるガイデア神殿の周辺に張られている強力な結界に弾かれることなく、結界内に侵入することが出来る。
そして、ガイデア神殿の入り口にある扉に近づくことによって、この鍵は立方体から円柱のような形へと変形し、ガイデア神殿の扉にあるとされる窪みへ入れることで、ガイデア神殿の扉を開けることが出来るとされている。
そんなガイデア神殿の鍵であるのだが、このガイデア神殿の鍵がガイデア神殿に入るための鍵としての役割しかなかったのなら、ナタリアは黒と白の毛が混じる男性にこの鍵を渡していただろう。
だが、このガイデア神殿の鍵には鍵としての役割とは別にもう一つの役割がある。
その役割は次元を最も容易く破壊することが出来るほどの破壊兵器であった。




