ワカティナ防衛作戦(創視点)百二十六
黒騎士の巨人が自らの左足を切り落とした瞬間を目撃した創は驚きを隠せなかった。
何故なら、龍滅断頭斬による傷口を覆っていた黒炎の本質をあの僅かな時間で見破り、最適解の行動をとったためである。
龍滅剣技 三式 龍滅断頭斬は瞬時に処刑台を構築し、相手をギロチンの刃で切り伏せる技であるのだが、基本的にこの技は一撃必勝を体現したような技であるため、この技を使用したほとんどの場合は相手を一撃であの世に葬っていて忘れがちになっているのだが、実はこの技には追加効果が存在する。
その追加効果とは、龍滅断頭斬のギロチンの刃で切断された箇所には黒騎士の巨人の時と同じように黒炎が付与され、その切断された箇所の再生を阻害する効果がある。
基本的に中級神以上の神族や神よりも強力な力を持つ種族たちは救助となる場所が完全破壊されない限り体を再生させることが可能であり、最強生物である龍たちも彼女たちの弱点である龍核(龍の心臓とは別のものである)を完全破壊しない限りは翼や腕などを切断や破壊したところで瞬時に回復されてしまう。
そのため、龍滅断頭斬は相手を葬り去ることが出来なかった時の保険として、相手の傷を回復させないよう黒炎で覆い隠すことで阻害する追加効果が存在している。
これだけでも恐ろしい追加効果であるのだが、龍滅断頭斬にはもう一つの追加効果がある。
それは傷口を覆っている黒炎は一定の時間が経過すると、傷口からその対象の内部から全身へ向けて黒炎が目にも留まらぬ速さで燃え広がり、その対象を塵一つすら残らずに燃やし尽くすと言うものである。
この追加効果は一瞬で全身に黒炎が回るという超強力な効果であるのに、黒炎が全身に回り出す瞬間がとても分かりにくくなっており、もう一つの追加効果である傷の回復を阻害する効果に気を取られているうちに全身に黒炎が回っているという凶悪コンボになっている。
今までの戦闘の中でこの凶悪コンボが決まらなかったことがなく、回避不能だと考えていたので、黒騎士の巨人が全身に黒炎が回り始める前に足を切り落とすことで回避されたことに驚きを隠せなかったのである。
創が凶悪コンボを黒騎士の巨人に突破され、驚きに浸っていると、驚き過ぎるあまり手から離してしまったロンギヌスと龍狩りの大剣が創の周りをぐるぐる回りながら話しかけてきた。
ロ『はじはじ?固まっちゃってるけど、どうしたの?』
ロンギヌスは黒騎士の巨人の方へ視線を向けたまま固まってしまっている創が何故、その場で固まってしまっているのか不思議に思い、固まってしまっている理由を質問したのだった。
創「いや、ちょっと予想外の出来事に驚いてしまっただけだ。まさか、凶悪コンボまで突破されてしまうとは、あのアルミナ族の小僧は戦闘センスの方もなかなか悪くない。これからの成長も見越して、是非とも仲間に引き入れたいが、あの小僧はそれを望んではいないだろうな。ここはあの小僧のためにも生捕ではなく、命を刈り取ってやるのが、お前への償いだな...... 」
ロンギヌスに質問を投げかけられた創はハッとしたような表情を浮かべながら意識を現実世界に戻し、少し想定外のことが起きて驚いてしまったと彼女からの質問に答えた。
そして、創は今までに一度も突破されたことがなかった凶悪コンボを突破した黒騎士の巨人の戦闘センスはなかなかに悪くないと他人には異常に厳しく、自分には激甘な創にしては珍しく褒めていた。
創が独り言で敵である黒騎士の巨人を褒めているところを目撃したロンギヌスと龍狩りの大剣はあまりにも珍しい光景に自分たちの聞き間違いではないかと一瞬疑ったのだが、二人とも同じセリフを聞いていたということもあり、創が珍しく相手のことを褒めたのは事実であると断定し、すごく驚いたのだった。
ちなみに、他人には異常に厳しい創であるのだが、身内はとても甘い方であり、特に自分の妻や娘には異常なほど甘やかしている。
息子たちにも普段はわりかし甘やかしているのだが、基本的に彼の息子たちは部下でもあるため、結構厳しかったりもする。
もちろん、自分と最も親しい部下たちの集まりである王直属部隊のメンバーたちにはとても厳しい。
創は凶悪コンボを見抜けるほどの戦闘センスの持ち主である黒騎士の巨人をこれからの成長を見越して仲間に引き入れたいとも思ったのだが、自分たちの仲間になることを黒騎士の巨人は望んでいないことは分かっていたので、黒騎士の巨人は仲間に取り入れるために生捕にするのではなく、その命を刈り取る方向で進めることにした。
もしも、黒騎士の巨人の気持ちが変わるようであれば、創も彼を仲間に引き入れる方向へシフトするだろうが、きっと彼の心は変わらないだろう。
黒騎士の巨人からは生きる気力が全く感じられないのだから。
彼はこの創との戦いで命を落とさなかったところで、自らの手でこの世から旅立つだろう。
それほどまでに、彼からは生きたいという思いが感じられず、生き続けることがとても辛いように感じた。
彼はきっと、先に行ってしまった仲間たちの元へ行きたいのだろう。
創は感情にとても敏感である。
彼は相手の心を読まずともその様子や言葉を放つときのイントネーションなど、さまざまな要因から相手のおおまかな感情や思いを読み取ることができる。
もちろん、創は黒騎士の巨人の思いにはとっくに気づいている。
だからこそ、創は彼への償いとして、自らの手を煩わせないよう黒騎士の巨人を彼の向かいたい場所へ届ける義務がある。
創は黒騎士の巨人を彼の仲間の元へ届けることを決心すると、自分からだいぶ離れた位置で切り落とした左足を再生させ、こちらを警戒している黒騎士の巨人の元へゆっくりと近づいて行った。




