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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point3〉 Who's Guardian
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四話〈一葵〉

 学校に到着した。けれど、不穏な空気をずっと感じていた。


 コンビニを出たあたりくらいだろう。妙な視線を感じて周囲を警戒していたが、どうやら俺はつけられてるみたいだ。


 おかげで優帆との会話にも集中できず、耳を引っ張られたり足を踏まれたりと散々だった。教室に入るまで優帆のちょっかいが続き、学校では「おしどり夫婦」なんて呼ばれる始末。本当に勘弁して欲しい。


 そもそもギャルっぽい優帆とオタクっぽい俺では不釣り合いだと思うんだが。


 ホームルームまでは十分以上ある。が、そこで双葉がやってきた。


 双葉の姿が見えたので、呼ばれる前に教室の外にでる。


「どうしたんだ、上級生の教室なんかに来て」


 肩で息をすしている。額にも若干汗が浮かんでいた。


「自分の目で確認しないと気が済まなくて」

「それで、どうだったんだ。なんとかなんたか?」

「一応。でも――」


 壁際にグイッと引っ張られた。そして耳元で「殺されちゃった」と言われた。


「どういうことだ」

「私にもよくわかんないよ。フレイアさんが捕まえて、かと思えばどこかから撃たれて、死んじゃったの」

「トカゲの尻尾を切ったってことか……?」

「あと、それだけじゃない。あの人だけじゃなかったの。この町には、あの人と同じようなことをしてる人がまだいるの」

「それじゃあ授業受けてる場合じゃねーだろ」

「たぶん、大丈夫だと思う。フレイアさんが見回りするって言ってたから」

「まあ、それなら大丈夫だとは思うけど……」

「フレイアさん、スマフォとか持ってないよね?」

「持ってないな。でもライセンスがある。こっちの世界でもライセンスは使えるし、向こうで覚えたアーツやアビリティなんかも使えるんだ」

「じゃあ連絡はライセンスですればいいんだ」

「そういうことだ。フレイアの戦闘力なら、ミカド製薬の差し金であってもモンスターであっても関係なく倒せるだろうし」


 と、自分で言ってふと疑問に思った。


 フレイアは強い。俺よりもずっと強い。俺を助けてくれたし、俺の目の前でモンスターをばったばったと倒してきた。


 じゃああの時、なぜフレイアは死んだんだ。


「お兄ちゃん?」

「お、おう。どうした」

「どうしたじゃないでしょ? それはこっちのセリフだよ。とにかく、もうホームルーム始まるから私は行くね」

「わかった。学校が終わったら一緒に帰ろう」

「うん。フレイアさんにもちゃんと連絡しておいてね」

「了解した」


 微笑んだ双葉が遠ざかっていく。その後姿を見て、短くため息をついてしまった。


 席に着くとすぐに先生がやってきた。先生の「席につけー」という声でホームルームが始まった。


 ホームルームが終わって授業が始まる。だが、授業の内容が頭に入ってくることはなかった。


 考えることが多すぎた。ミカド製薬、モンスター、フレイア、死に戻り。俺はあの日死ぬはずだった。死ぬはずだった俺が異世界に飛んで、異世界で死んだらこっちの世界に帰って来た。帰ってきたと思ったら時間が戻ってて、俺は同じ日をリスタートすることになった。


 あのモンスターがいなければ俺は死ななかった。そしてそのモンスターを作ったのはミカド製薬。ミカド製薬とはいったいどんな会社なんだ。どうやってモンスターを作ってるんだ。あの薬は、いったいなんなんだ。


 ぐるぐると回る思考。一巡し、また同じところに戻ってきてしまう。何度考えても、今ある情報だけでは点を線にすることができなかった。


 なによりも解せないことがあった。〈蒼天の暁〉の連中は強い。そんな連中がどうしてああも簡単にやられてしまうのだろう。


 いや、違う。俺は一度も「蒼天の暁メンバーがやられるところ」を一度も目撃していない。彼らがやられる前に俺が死んでしまうからだ。だが一人だけ、俺と一緒に死ぬ人間がいる。


 そう、フレイアだ。


「ちょっとイツキ!」


 ガンっと、机が揺れた。目の前にはふくれっ面の優帆が立っていた。


「なんだよ。ビビるだろ、急に机揺らすなよ」

「数分前からここにいるわ! 授業終わったってのにいつまでノート広げてるのさ」

「ああ、そうかそうか。そりゃ悪かった」

「お昼、食べに行くよ」

「おっけー」


 なんて言いながらも物凄い違和感が襲ってくる。


「おっけーじゃねーよ、なんで俺がお前と昼飯食わなきゃいけないんだよ」

「はあ? イヤなの? アンタに拒否権はないんだけど?」

「飯くらいいつものヤツと食えよ」

「二人共休みなんだよ」

「同時に風邪でも引いたか。タイミング良すぎだろ」

「今頃ダブルデート中だよ」

「遊びのために休んだのかよ。自由すぎんだろ」

「アイツらは時々そうやって休むんだよ。あの二人の彼氏は大学生だったり社会人だったりするからな」

「まさにギャルって感じだな。で、お前は?」

「は? ケンカ売ってんのか?」

「そのつもりはないが、どこにケンカする要素があったのかね?」

「その言い方がケンカ売ってるって言ってんの」

「いやいや、だって友人がそんな二人だったら男の一人二人紹介してもらえるだろ。なんでお前だけ独り身なんだよ。そりゃおかしいなって思うだろうが」

「別に彼氏が欲しいわけじゃねーし」

「ずっと独り身でいるつもりかよ」

「紹介されるまでもねーだけだよ」

「なんだ、好きな人がいるならアタックでもなんでもすりゃいいだろ。んでトリプルデートでもしたらいい」

「そういう言い方すんじゃねーよ。ほら、行くぞ」

「わあったよ。だから引っ張んな」


 優帆に袖を掴まれたまま購買に行くことになった。もちろん、サダとたっつんからは「よ、おしどり夫婦!」なんて呼ばれてしまったわけだ。が、優帆がぶん殴ってたのでいいだろう。


 購買でパン、自販機でジュースを買って、中庭の空いているベンチに座った。今日は天気もいいし、ちょっとしたピクニック気分だな。隣にいるのがもうちょっとお淑やかな女の子だったらとてもいい感じだ。


 そう、双葉みたいな感じの女の子だったらよかった。


「そういや、他の二人が休んだ時って今までどうしてたんだ?」

「ん? 一人だったけど」

「今日は一人じゃないんだ……」

「アンタがぼーっとしてたからだよ」

「どういう関係性があるのか説明が必要だと思うのだが……」

「ぼーっとしてるところに声掛けたら、なんていうか、流れで誘っちゃったのよ。それでいいでしょ」

「まあ、いいけども」


 パンを口に入れてはジュースを飲む。パンを咀嚼してはジュースを飲む。特に会話もなくそれを繰り返した。

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