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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈actuality point 3〉 Kindness Piece
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一話

 誰かに身体を揺すられている。せっかく気持ちよく眠っているのにと、仕方なく目を開けた。


「やっと起きた」


 目の前には可愛い女の子。見慣れたフレイアの顔だった。


 なんか、もう慣れ始めている。こんなあり得ない日常だが、いろんなことがあり過ぎた。その出来事に飲まれてしまったからか、異世界でも現実世界でも「ああ、また死んだか」みたいな感じになっている。


 ここはナレットの宿屋か。見覚えがある。つまり俺のハローワールドは、日付を跨いだ瞬間というよりは、俺が眠った時にセーブポイントが生成されるってことだろう。これは収穫だ。


「おはようフレイア。身体の調子はどう?」


 身体をお越し、床に足をつけた。おそらくゲーニッツの肩で眠ってしまい、宿のベッドに寝かせられたんだろう。


「おはようなんだけど、それどころじゃないのよ!」

「なんだよ。寝起きなんだから勘弁してくれ。多少は慣れたけど、まだ身体が痛いような気がしてならない」

「んー!」と言ってジタバタし始めるフレイア。こういう可愛い部分もあるのか。


 なんて思っていたが、フレイアがある場所を指差していることに気がついた。


 彼女の向こうのベッド。そこには、もう一人誰かが眠っていた。


「お、おいおい。嘘だろ?」

「嘘じゃないんだってば! どうするのこれ! 一応ゲーニッツたちには私から簡単に説明しておいたけどさあ……」


 ベッドに寝ていたのは俺の妹、双葉だった。見間違えるなんてあり得ない。それに制服も着ている。


「もしかして、俺、連れてきちゃったわけ……?」

「そうとしか考えられないでしょ! あーこれ、双葉ちゃんの服買ってきたから!」

「それはありがとう。いやいやそうじゃなくて。どうすんのこれ。ゲーニッツにはなんて説明したんだ?」

「イツキの妹だって説明した。ずっと隠れさせておいたって」

「どうやって出現したんだ? ゲーニッツの上?」

「気づいたら私が担いでた。だからなんとか言い訳できたんだけどさ」

「よかったんだか悪かったんだか」

「しかもちゃんとキャスターライセンスも持ってたよ。ジョブは魔術師」

「どーなってんだよおおおおお……」


 そう言いながら頭を抱えた。


 ゲーニッツたちへの説明はそれでいい。が、双葉に対しての説明はどうやってすればいいのかわからない。


 いや、ここはいつものやつで乗り切るしかない。


「ん、ん……お兄ちゃん……」


 そしてこのタイミングである。


 起き上がり、俺とフレイアを見て、部屋を見渡した。


「お兄ちゃん、だよね?」


 格好がいつもと違うから少し困惑しているんだろう。


 ここで「いや、キミはなにを言っているのかな?」と言えればいいのだが、絶対に誤魔化しきれない自信があるのでその選択肢は却下だ。


 どうしたらいい。そうやって頭を抱えそうになった時だ。


「いいよ、また言えないことって言うんでしょう? 腑に落ちないし、納得もできない。でもね、お兄ちゃんが隠し事をしてて悪いことをしようっていう人じゃないって知ってるから。それにね、毎回毎回「俺のこと好きか?」って訊かれるのも恥ずかしいから」


 そう言いながら、双葉は微笑んだ。なにも変わらない。あっちで笑う彼女をそのまま持ってきたような、そんな笑顔だ。


 物分りが良い。頭がいい。可愛い。それ以上に、俺を信頼してくれているんだ。だから俺が隠し事をしていてもちゃんと受け止めてくれる。


「言わなくてもいいよ。私はお兄ちゃんのこと、大好きだから。でも話せるようになったらちゃんと話してね? それと、今の状況とこれからどうするのか」

「わかった。フレイアも参加してくれ。ゲーニッツたちにも説明しなきゃいけないしな」


 こうして、三人での作戦会議が始まった。


 ここがゲームのような世界であること、ジョブやスキルのこと、ライセンスのことを説明した。あとはフレイアだけは現実世界のことを知っているということ。


 双葉のジョブは魔術師。Pスキルはネザーワールド、世界中の人の生死を感知する。Aスキルはイルネスイミュにゼーション、病気に対しての免疫力を植え付ける能力。これだけ聞くと魔術師というよりは法術師の方が合っているような気がする。


 ゲーニッツたちには「妹であり、ずっと俺とフレイアと一緒にいた」ということにする。レベルが低いから隠れていた、という言い訳がどこまで通用するかはわからない。が、グランツからの質問を上手くかわせればいい。それはフレイアに任せることにした。


「魔女派の連中は今どこにいる?」

「グランツたちの部屋にいるわ。起きたら向かうように言ってある」

「んじゃ、行きますか。ボロは出さないようにしないとな。まずは信じてもらわないとどうにもならん。追い出されなんかしたら目も当てられない」

「そうね。じゃあ、行きましょうか」


 三人で顔を見合わせて頷いた。


 彼らの部屋に行くと、ゲーニッツ、グランツ、メディアが座っていた。雑談をしていたのだろう、部屋に入る前から笑い声が聞こえていた。主にグランツの笑い声だが。


「起きたんだね。とりあえず座りなよ」


 グランツに促されてイスに座った。


 ここで、前回と同じように挨拶をした。双葉の挨拶もなんとか終わった。突っ込んでこないところを見ると、双葉の自己紹介の中に嘘がないってことだろう。


 それもそのはずだ。フレイアに先導してもらい「俺たち兄妹はわけあり」ということにしておいてもらったからだ。


「えっと、まず俺たちには親がいない。気がついたらいなかった。で、最近フレイアと会って、行動を共にさせてもらってる」

「なるほど。フレイアは承知しているのかい?」

「その辺は大丈夫だ。というか、どっちかっつーとそっちの仲間だろ? 俺とフレイアが出会うよりも前から仲間なんだ。もしもフレイアが俺に懐柔された、という選択肢があったとしてもノーだ。俺は魔女派でもなければ政府でもない、もちろんデミウルゴスでもない。嘘かどうかはわかるんだろ?」

「うん、そうだね。嘘は言っていないようだ。でもフタバちゃんはレベルが圧倒的に低いんだけど、これはどういうことだい?」

「俺は過保護でシスコンなんでな、フタバに戦闘経験は一切ない」

「ふーん、特に嘘は言っていないみたいだね」

「Pスキルはハローワールドでちょっと先の未来を予知できる。Aスキルはレプリカモーションで相手の動きをコピーできる。記憶の中にあるその人の動きを再現できる能力だ。双葉のPスキルはネザーワールド、世界中の人の生死を感知する。Aスキルはイルネスイミュにゼーション、病気に対しての免疫力を植え付ける能力」


 グランツはチラリとフレイアを見た。つられて俺もフレイアを見るが、彼女は一つ頷くだけだった。


「おーけー、信じるに値する、と今は言っておこう。本当ならばライセンスを見せろと言われても仕方ないけれど、僕らはそこまで仲間を信頼してないわけじゃないしね。フレイアが信用しているなら大丈夫だろう」

「レベルは低いんだが〈蒼天の暁〉に入りたい。他に行くところもないし、俺も双葉もできる限りのことはする。雑用だってなんだっていいんだ」

「どうする、ゲーニッツ」

「いいんじゃねーか、別に。どうせフレイアが面倒見るんだろ?」

「乗りかかった船だからね、その辺は大丈夫よ。迷惑はかけないから」


 親はいない→この世界にはいない。


 双葉は妹→本当のこと。


 レベルが低いのは戦ってこなかったから→今まで戦闘の経験がないから正しい。


 どこにも所属していない→本当のこと。


 Pスキル、Aスキルについて→本当のことしか言っていない。


 これから魔女派に入りたい→そこしか行き場がないから仕方ない。


 こうやって、一番最初の問いのような「現在どうあるのか」という質問で上手くかわせたと思う。

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