六話
魔女派は政府との繋がりも太くなり、どんどんと規模を拡大していった。その中でライセンスという特殊な身分証明書を発行した。
ライセンスは冒険者、というよりもモンスターを討伐する人間にのみ発行することにした。ライセンスを持つ者はスキルや魔法を自由に使えるように、それ以外の人間は能力を抑制する腕輪を生まれながらにしてつけるようにした。ライセンスを持つ者は力を持っていると言えるため、その者たちが犯した罪は一般人よりも遥かに重くした。
ライセンスを持つ者、冒険者とでも名乗らせよう。増大するモンスターを倒させて、その代わりに報酬を払う。お互いにとっていい関係を作れるだろう。
モンスターは強さごとに別々の場所に転送することで、自分のレベルに合ったダンジョンを選べるようにした。モンスターをワープさせる装置を完成させるまでに何百という年月を有したがなんとか形にはなった。それまではモンスターがごった返しているような場所で、冒険者たちは苦戦を強いられていたのだ。ようやくこの世界の体系が整いつつあった。
ライセンスの発行、ダンジョンの作成、クローン技術の完成、それらを同時進行させてこの世界を「自分が思い描く世界」に作り変えた。そう、まるでファンタジーの世界へと変貌を遂げたのだ。
いくつもの課題はあった。それらを解消したのは、昔ニュースで見た内容だった。
・重力エネルギーの抽出、他のエネルギーへの変換
・ブラックホールの解明、カー・ブラックホールの小型化
・量子テレポーテーションの原理と応用
この課題であり、スキルや魔法という、今まで未知だった想像以上の力がそれらを可能とした。
クローン技術も確立されつつあり、私はようやく両親のクローンを誕生させることができるようになった。まだまだ不完全ではあったが、これでようやく両親に再会できると少しだけ喜んだ。
しかし、その喜びも一瞬だった。
「だれ?」
母親の髪の毛から取り出したDNA。年齢も四十代から五十代を想定した。でもそれは母ではなかった。母親の姿をした別のなにかだった。
その時、自分がした過ちの重さに気がついた。
どうして両親が死ぬまでそばにいてあげられなかったのか。息を引き取るまで手を握って、感謝と愛をささやいてあげられなかったのか。クローン技術があったとしても、それが本人でないことくらいわかっていたはずなのに。
その日、部屋で一人で泣いた。けれど誰かがドアをノックした。ゲーニッツだった。その手にはグラス二つと酒瓶を持っていた。
「どうしようかと思ってな」
そう言って眉根を寄せて笑っていた。
「それで酒盛り?」
「困ったらこれよ」
「まあ、そうだね。そうだよ」
悩んだところでどうすることもできやしない。もう、立ち止まることも戻ることもできないのだから。
その日、私は今までにないほどの酒を飲んだ。浴びるほどに飲んで、吐いて、飲んで、泣いた。そしてゲーニッツと初めて一夜をともにした。酒を飲んだ勢いもあったが、どうしようもない切なさと苦しさを紛らわせたかった。後悔なんて微塵もない。
次の日は酷い二日酔いでなにもできなった。従者たちに心配されたが、なぜかそれ以上になにかを期待されているような気がした。
そこからクローンがどの程度のレベルなのかを調査した。
私が作ったクローンは本体よりも遥かに劣るものだった。それを知ったのは、母のクローンにスキルを使わせたことで判明した。
未来視を頼み、少し先の未来を見てもらった。どうやらこのままいけば私が思い描く未来が実現するらしい。
が、次の瞬間に母が苦しみ出した。目から、鼻から、口から血を吹き出したかと思えば首を押さえたまま地面に倒れ込み、絶命した。
こんな形で母の死を目の当たりにするとは思わなかった。平静を装いながら、私は自分の胸の中が黒く塗りつぶされていくのを実感していた。




