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それでも俺は異世界転生を繰り返す  作者: 絢野悠
〈expiry point 7〉Count down
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八話

 ドンっと、すごい勢いでなにかにぶつかった。ルイが作り出した水晶の壁だ。アイツのAスキルはこんなふうにも使えるのか。というか、もしかしたら使えるようになったのかもしれない。


 この短期間で成長しているのは俺だけではないということだ。


 ルイが使う水晶は強度が高い。今の俺で壊せるかどうかはわからないが試してみる価値はある。水晶に攻撃するのもそうだが、ルイから視線を切らなければ致命的なダメージを与えられることもないはずだ。


 ルイの動きを監視しながら魔力を込めて一回、二回、三回と水晶に拳を打ち付ける。三回目でヒビが入って、けれど水晶を砕くには至らない。ルイが右側面から強襲してきたからだ。


 左側に逃げようとして地面を踏みしめた。が、俺の体は動かない。正確にはなにかが邪魔して左に飛ぶことができなかったのだ。


「そういうところが甘いんだよ」


 顔面に一発。視界がぐらつく。


「下手な正義感で」


 腹部に一発。胃からなにかがせり上がってくる。


「邪魔をしないでよね」


 コメカミ、眉間、首、肩口、胸、鳩尾、腹と何度も殴られた。水晶の壁があるせいでいつもより痛みが増している。障害物のせいでダメージが後方に逃げないからだ。


 重ね重ね打ち込まれるルイの攻撃で水晶の壁が割れて吹き飛ばされた。その衝撃を利用して森の中に身を隠す。


 誤算がいくつかあった。一つはしばらく見ないうちにコイツもレベルを上げてきたらしく、スキルの練度が予想以上に高くなっていたこと。なにかを水晶に閉じ込めたり、小さな水晶を飛ばしてきたりとその程度だと思っていた。だが壁を作りだて攻撃に転用してくるとは思わなかった。この分だと水晶の壁を使って防御もしてくるはずだ。


 もう一つは予想以上に攻撃力が高かったということだ。素早いだけが取り柄のやつだと思ってたのに、前回戦ったときよりずっと攻撃が重かった。


「隠れてないで出てきなよ!」


 とは言われるが素直に出ていくわけにはいかない。なにか策の一つでもないと水晶の壁にすべてを阻まれるだけだ。


「なにか、なにかないか……!」


 俺のAスキルは正直使いみちがそこまでない。今まで戦ってきたやつの動きを使えば、たしかにただただ正面からぶつかっていくよりずっといいのは間違いない。それでも俺が今まで戦ってきたのは「俺よりもレベルが低い相手」が中心だ。俺よりレベルが高い相手は基本的に武器を持っていたりするため、俺の戦闘スタイルに活かせる部分はかなり少ない。


 だが、素早いヤツの回避力、上手いヤツの立ち回り、力強いヤツの突進力。そうやってなんとか組み合わせて、俺の体に馴染ませていくことは可能だ。


 短く深呼吸してから木の陰から体を晒す。


「ようやく出てくる気になったね!」


 姿を晒したのと同時に一気に直進。例えばフレイアやゲーニッツなんかはこういう動きが得意だった記憶がある。


 ルイが水晶の壁を生成するが、アイツが壁を作り出すよりも速く突進すれば問題ない。俺の背後に壁が生成させるのだからそれも当然だ。


 ここは拳を前に出すよりも体当たりした方が確実だ。そう判断して類の胸元に飛び込んでいった。


「がはっ……!」


 接触と同時に左腕を突き出して胸ぐらを掴む。吹っ飛びそうになるルイの体を引き寄せて鼻に続きをかました。今度は声にすらならないらしく、涙目のままこちらを睨みつけていた。


「まだまだ!」


 拳を振り下ろそうとしたところで、その拳が透明な壁で阻まれた。水晶の壁は大きさを自由にコントロールできるらしいが、拳一つ分くらいの小ささまでコントロールできるのは知らなかった。


 俺の動きが止まったことをいいことに、ルイは足の裏を俺の胸に当ててそのまま力強く蹴り飛ばす。距離が離れるのはマズイと、すぐに立ち上がって再度前進。今度は突進力を加味したようで、壁は前方に設置された。


「こっちだってなあ」


 さっき試した感じだと、水晶の壁を壊すのにはある程度の殴打で四発分のダメージが必要になる。あの程度の攻撃なら、四発分を省略することもできなくはない。


「学習してんだよ」


 体全体ではなく腕のみ強化のために使う魔力を増やしてやる。あとはこの突進力があれば、一発とはいかなくても二発で壊せるはずだ。


 素早い左ストレートで壁を叩けば軽くヒビが入り、体がぶつかる前に右ストレートを打ち込めば、バリンという音を立てて水晶の壁が崩れ去った。普通の人間にはまず見えない、それくらい早い二連撃だった。


「これは、なかなか」


 余裕ぶってるルイの顔面を殴りつける。


「なめんじゃねーよ」


 もう一発と思ったがさすがに止められた。伊達に余裕かましてるだけじゃないって感じか。


「なめてるのはどっちだろうね」


 今度は俺が顔面を何度も殴られた。ガードしようとするとボディに蹴りが入る。でも予想よりも勢いが強いためどちらかしか防御できないのが現状だ。


「ボクはボクのやるべきことを遂行するためだけにここにいるんだ。だから――」


 チクリと、脇腹に小さな痛みがした。なにかが脇腹に刺さったのはわかったが、それがなにかまではわからない。


 できればルイと距離は取りたくないが、今は確認のために後退するのが正解だと思った。

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