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アスパシオンの弟子(コンリ版)  作者: 深海
王者たちの歌
69/104

王者たちの歌 11話 噴煙の技師

 キン キン キン キン 

 打つ 打つ 玉はがね 

 キン キン キン キン 

 打つ 打つ 金の床 

 聞こえてくるは、蒸気の音

 天立ち昇る、白き怒張

 負けじと金槌打ち鳴らせ

 はがねの聖地の名のもとに



「角度がちがーう!」


 すぱーん、と僕はハリセンで頭をはたかれました。

 ハリセンを持っているのは、灰色の衣をまとったずんぐりむっくりのおじさん――一級技能導師のテツダ様です。


「ぐううう」


 痛いです。悔しいです。なんで。こんな。ところで。


「どうして。僕が灰色の導師の弟子になって、金槌一日中振り下ろさなきゃならないんですかぁあああ!」

「だーまれこのくそ魔人! おまえのせいで寺院の結界装置が壊れたんだっての! 直していけったら直していけー!」

「うううう!」 


 涙目になってがっつんがっつん金槌を振り下ろす僕の頭を、ずんぐりむっくりの匠がビシバシハリセンで叩きまくってきます。

 このままじゃ僕は、マジで灰色の導師になってしまうような気がするんですけど……

ていうかもう強制的に、灰色の導師の見習いの服である、緑の服を着せられてるんですけど……


「うらあ! 振りがおっそーい! 一投入魂! 一級目指せー!」

「は、はいいいい!」


 僕はひたすら、金槌を振り下ろしました。

 熱く白熱する鉄の塊に向かって。

 





 やっと過去に着いたと思ったら、こんな大変なことになってしまったわけですが。

 そもそも。

 三つの泉の左側に飛び込んだ僕は、ものの見事に未来へすっ飛ばされてしまったのです。

 泉の中では時間が怒涛のように流れていました。僕の青いオリハルコンの衣がすっかり劣化してぼろぼろの糸くずになるぐらいに。

 慌てて浮き上がってみれば――どうも万年単位で時間跳躍してしまったようで、泉の外はいきなり海中になっていました。僕が死なない魔人じゃなかったら、たちどころに息が続かず死んでいたでしょう。

 すっぽんぽんの僕は、その時代で一番進化している知的生物らしい半魚人に捕らえられ、しばらくの間彼らの娯楽施設で見世物として展示されました。施設は海にぽっかり浮かんだドーナツ型のコロニーで、半魚人たちはいくつものコロニーを行き来して暮らしているようでした。

 コロニーの壁面には、この星に氷隕石が飛来して落ちたらしき伝説が描かれていました。

 それによると、どうも隕石衝突のために陸地がほとんど水没したらしく、僕ら人間の種はその時あっけなく滅んでしまったようでした。

 僕はひと月ほど恥ずかしいことにすっぽんぽんのままで展示され、イルカと一緒に行う曲芸を仕込まれていざショーのデビューとなる直前に、ようやく隙をついて逃げ出すことができ、三つの泉の右側へ飛び込むことができました。

 逃げる時にトレーナーの半魚人の美しいおねえさんが僕に協力してくれたのですが、僕はその見返りにおねえさんとしばし恋人のように付き合わなければならなくなり、おかげでげっそりやつれてしまいました。


「子供いっぱい作ろうね♪」


 とかそんな意味の言葉をニコニコして連呼されましたけど、なんとか貞操は保持。迫られた時はもうだめかとかなり恐怖でしたが、辛くもかわせて幸いでした。

 そんなこんなでようやく過去へつながる泉に飛び込めたのはよかったのですが。

 半魚人のおねえさんにもらった銀鱗の服はやはりばらばら。というか、数匹の銀色の魚に変じ、それから小さな稚魚と化し、最後には魚卵になって消えてなくなっていきました。

 泉の中で、ものすごい勢いで時間が遡ったのです。

 しかし今度は遡るのが足らず、「おじいちゃん」と出会った時代より少し前に出てしまったようでした。

 真ん中の泉には瞬間凍結している僕の姿が見え。廃院の周囲には結界も何もありませんでした。

 朽ちた窓から見えるウサギ保護区にはウサギだけでなく、家族連れの観光客が沢山来ていました。

 この時代にはここは立ち入り禁止ではなく、ウサギと触れ合える動物園のごとき仕様になっていたようです。僕のすぐ目の前、廃院の窓のすぐ下でも、美しい金髪の美丈夫が膝を落としてぶつぶつ文句を言いながらウサギにニンジンをやっていました。時代が分かったのは、この人のおかげです。 


「白の癒やし手アイテリオンは二十年も前に死んだはずだろうに、まだ力の残滓が残っているな」

「まだ気配の余韻が残っているなんてすごいですね。時の泉をご覧になられますか?」


 その金の獅子のごとき人はとても見目麗しい赤毛の青年を連れていたので、僕はつい見とれてしまいました。竪琴を抱えたその青年は片足が悪いのか、美丈夫の腕に支えられていました。


「いや、見ないでいい。過去にも未来にもこの有限の肉体を持っていけぬのだから、無用の長物だろうに。なぜにあれが作り出されたのか、よくわからぬ」

「そうですか。それで宵の殿下、気分はいかがですか? かわいらしいウサギをご覧になって、和まれましたでしょうか?」

「ふん、和むものか。なぜにこんなところでウサギの餌付けなどせねばならぬ。ラデルなら喜んだろうが、俺は好かぬ」

「ラデル兄様は、ウサギがお好きなんですか?」

「昔、使い魔を飼ってみろとウサギを渡したら、大喜びで俺の褥にまで持ち込んできやがった。朝起きたら俺の褥はウサギのフンだらけで……あいつは可愛らしい顔で泣きべそかいて謝ってきて……それが洒落にならないぐらい本当に可愛くてだな……」

 

 うわ。どこかで聞いたような話。使い魔だなんて、この人は韻律使いか何かでしょうか。黒い衣は着てませんから導師ではなさそうですけど。

 そういえば我が師も見習いだった頃はウサギの僕を抱いて眠っていたんだろうなぁ……


「ちくしょう! 俺の陛下を消してやる! 今すぐラデルを取り戻す!」

「お、落ち着いてください宵の殿下。ニンジン握りつぶさないで下さい。ウサギが怯えてます」


 金の獅子のごとき人は、どうやら溺愛するお弟子さんか何かをどこかの王様に盗られたみたいでした。

 我が師も、僕を失ってこんな風に憤ってくれたでしょうか……もしそうだったら、ちょっと嬉しいのですけど。でもあんな大失態を犯した身ですから、ものすごく罵られて呆れられて終わりだったかも。

 赤毛の美青年がしきりに美丈夫を宥める声を背に、僕は急いで踵を返し、真ん中の泉に封じられている自分を引き上げてみようとしました。しかし何か特別な韻律の技が必要なのでしょう。僕が知っている限りの浮遊系の韻律は全くききませんでした。泉の奥底の自分には全く手が届かず、泉の水に触れるとたちまち凍り付いてきたので、あえなく断念。また過去への泉に飛び込むしかありませんでした。

 どのぐらい流されていたらどのぐらい遡れるのか。皆目わかりませんでした。適当にまた上がってみたら。今度は真ん中の泉にも廃院にもとても強力な結界が張られていて、廃院の外に出ることができませんでした。白い胡蝶がそこかしこ飛んでいたので、白の導師アイテリオンが張り巡らしたものだとすぐに分かりました。

 僕が封じられてまだ間もない時期であったのでしょう。金髪の美丈夫がウサギに人参をやっていた場所――窓のすぐ下には、意外な人がいました。


「お、お師匠さま!?」


 それは間違いなく我が師で、ウンコ座りでべそべそ泣きながらウサギたちに人参をやっていました。


「うううう。ぺぺぇ……かわいそうになぁ……こんなところに封じられちゃって」


 お師匠さま、僕は壁一枚隔てたところにいるんですけど…… 

 ていうか。我が師に会いたいという願いが叶うなんて。もしかして神さまっているんでしょうか。


「こうしてウサギにエサやるのが、せめてもの供養だよなぁ」

 

 我が師の隣にはなんとヴィオがいて、頬杖をついてきゃっきゃと笑ってウサギを撫でていました。


「だよねえ。ぺぺかわいそー。きゃははははは」


 結界を破って出て行けば、僕はたちどころに白の導師に感づかれてしまいます。それでは元の木阿弥。またここに封じられるか、もっとひどいところに幽閉されるに違いありません。

 僕は断腸の思いで、また過去への泉に飛び込みました。

 もっと昔へ。白の導師の目の届かぬところ。僕が事件を起こす前へ。あわよくば、白の導師が生まれる前に出て。彼が生まれること自体を阻止することができれば――。

 と思いつつ。出てみた所は。


「ほら! 手を休めるんじゃねえ!」

「は、はいいいいい!」 


 まだ廃院になっていない時代の、噴煙の寺院だったのでした。

 泉から上がったとたん、何も知らない僕が踏みつけたのは人工的に結界を張る機械。ものの見事に寺院中に警報が鳴り響きました。即座にぞろぞろと大勢の灰色の導師たちが駆けつけてきて、すっぽんぽんの僕を驚愕のまなざしで眺めていました。

 やはり、有限の有機体がそっくり泉から上がってくることはまずありえないことだそうです。滅びぬ体の魔人だからこそ、時間跳躍できるのだろうと灰色の導師様たちは口々に仰っておりました。

 僕が至ったのは神聖暦で言うと六千五百年。つまり僕が事件を起こす、およそ八百年前でした。

 噴煙の寺院にあるいくつもの炉は赤々と燃えていて、灰色の導師と緑の衣の見習いたちが日々、鍛冶の技の修行を積んでいました。

 灰色の導師たちに囚われた僕は、有無を言わさず見習いの緑の衣を着せられて――


「だからテツダさま、結界装置、僕が壊したんじゃないんですけどおお」

「黙れ。お前が俺の放った光弾を避けなかったら壊れてなかったんだぞ。ほら、手を動かせ!」


 僕を狙ったがためにテツダ師が破壊した、結界装置の部品を作れと命じられてしまったのでした。

 こうして僕は思いがけなくも鍛冶の技を覚えることになり。運命の道へと踏み出したのです。

 六翼の女王ルーセルフラウレンを生み出した灰色のアミーケと同じ。灰色の導師となる第一歩を。

 




 噴煙の寺院の導師たちは、ほとんどがずんぐりむっくりのおじさんたちです。この辺りの主食である木の実は大変カロリーが高いので、どうしてもみんな太り気味になってしまうようです。

 修行のかたわら食料を採集したり、温泉街から物品を買い求めてくるのは、緑の衣の見習いの仕事。僕は他の緑の衣の弟子達と一緒に、たびたびお使いに出されました。もう完全に、テツダ師の弟子扱いでした。 

 テツダ師は僕が「おじいちゃん」の娘たちに嵌められた特殊な首輪――服従の首輪を僕にしっかり嵌めていたので、逃げたくとも逃げられない状況でした。そのため仕方なく、僕はこわした部品を作るまでの辛抱と割り切って修行に励みました。

 灰色の衣も緑の衣も素晴らしい性能の防火服であると知ったのは、この活気ある寺院に来てすぐのことです。炉の熱や火花による火傷を防ぐため、この寺院の衣には特殊な断熱材が織り込まれていました。炉を使う作業では、同じ防火布地でできたフードで頭を隠し、マスクもします。

 とくに見習いは炉の温度を一日に何度もチェックしたり、大きなふいごを踏み続けたりと重労働。しかし不思議なことに、防火の衣を着ているとちっとも暑くならないのでした。


「主な繊維はアラミドなんだが」


 テツダ師曰く、他にもいろんな材質を織り込んでいるそうです。


「粘性金属とか銀粉粒とか色々贅沢に使っとる。そばの鉱山で取れる橙煌石の粉末も混ぜてあるしな」 


 橙煌石はとても珍しい貴石で熱を吸い込む特性があるのだとか。

 砕いた鉱石を炭と一緒に炉で溶かして反応させ、マグマのような鉱物成分を容器に出滓。冷たい水で冷却。そうして取り出した純度の高い金属をまた溶かし。型に流し込み。金槌で打って部品の形を整える――

 緑の衣の見習いは、基本的な精錬作業をひたすら行わなければなりませんでした。

 鉄。錫。銅。金と銀。それから何百種類という合金。

 一体どれだけの金属を抽出したでしょうか。

 しかし特殊な機械で部品を削って細かい加工をする作業は、一人前の灰色の導師にならないとやらせてもらえないのでした。


「踏んで三年金槌五年! 研磨の技はそれからだ」


 僕はやけくそになってふいごを踏みまくり、金槌を奮いまくりました。

 なにせ時間はたっぷりあるのです。僕には、寿命がないのですから……。

 




 この時代。統一王国はまだ存続していました。王国を建てた灰色のアミーケと六翼の女王は、この寺院では二柱の夫婦神(めのとがみ)として祀られ、熱心に崇められていたのですが。王国自体は、継承争いの内紛などで王権が弱まり、斜陽の帝国となっていて崩壊寸前でした。 

 寺院は統一王陛下直下の機関として機能しており、陛下その人から直接注文を受けて、様々な細工物や兵器の部品を作ってきたそうです。しかし王の権力が衰えた最近では、大陸各地の州官や貴族たちからの依頼をこっそり受けるようになっていました。

 樹海州の高官プトリもその一人でよく寺院にやって来られました。テツダ師と特に懇意にしているその訳は、この師が樹海州出身であるからでした。


「すまんなぁ、ここじゃ『目』を作ってないんだわ。俺の一番弟子がヘイデンで作ってるから、そいつを斡旋してやるよ」


 ある日その高官に、テツダ師は機嫌よく独り立ちしている弟子を紹介しました。


「ついでに俺の末の弟子も連れてってくれんかね。灰色の衣を貰ったばかりだが、筋がいい奴でな。一番弟子に預けて、精密機械方面の技術を身につけさせたいんだわ」


 苦節十五年。

 毎日毎日ふいごを踏んで金槌を叩き続けた僕は、いつしか灰色の衣を貰えるほどのいっぱしの技師になっていました。


「灰色の衣の? ですがこの方は、青い衣を着ておられるようですが」


 首を傾げるプトリにテツダ師は苦笑しました。


「ピピちゃんは頑固な奴でなぁ。黒の寺院出身で別に師匠がいると言い張るんだわ。それで自家製でオリハルコンの布を復刻して、それを身にまとってるのよ。まだ自分は黒の導師の見習いだからって、灰色の導師の名前も固辞しちまってよ。最長老様がただ今おかんむりさ」


 ピピというのは、僕がとっさに名乗った偽名です。

 この時代、すでに白の導師アイテリオンはこの世に生まれ落ちているらしく、水鏡の寺院にいるようなので本名を名乗るのは控えたのでした。

 僕が灰色の衣を貰う資格を得られたのは、ひとえにオリハルコン製の特殊な布を再現できたからでした。オリハルコンの布は統一王国時代の初期に開発されたもので、寺院の倉庫にその切れはしと製法図が所蔵されていました。その布を織るために必要な金属糸を作るのには、まるまる五年かかりました。  

 出来上がった布が青いのは、瑠璃の粉末を加えたからです。この色だけは……どうしても譲れませんでした。早く緑の衣を脱ぎたくて、自由になりたくて、それで僕は死に物狂いでがんばったのです。

 が。


「あの。一人前になったんですから、服従の首輪を外してください」


 テツダ師に頼むと、とんでもない答えが返ってきました。


「あーすまん。首輪の鍵をヘイデンの一番弟子に送っちまったわ」

「ちょ……!」

「いやぁ、おまえ筋がいいから。ヘイデンでちょっと働いてこいや」

「また修行奉公しなきゃならないんですか? 嫌ですよ! 僕は黒き衣の、アスパシオンの弟子なんですよ? 蒼き衣の、黒の導師見習いなんですっ!」

「あはは、ほんと一途だなぁ。しっかし黒の技なんてよぉ、呪いで切った貼ったする原始的な技だろうに、どこがいいんだか。俺にはわかんねえなぁ」

 

 というわけで僕は有無を言わさず樹海州の高官プトリに連れられて、ヘイデンと呼ばれる所へ送りこまれてしまいました。

 そこはなんと……天に浮かぶ島であり。

 あの鉄のイルカたちが絶え間なく空を泳いで守っているところであり。

 しかも。

 僕が配属されたのは、まごうことなくかつて僕が灰色のアミーケから逃れて隠れた、あの島だったのでした。

 そう。「八番目の島」、オプトヘイデン――。





 オプトヘイデンは、遠い未来とはまったく様相が違っていました。

 島は完全に要塞そのもの。数百人から成る司令部が詰めていて、州同士の争乱が起こっている地域を鎮めるため、島の格納庫からひっきりなしに「鮫」とよばれる殺人魚たちが繰り出されていました。

 鉄の魚と一緒に、「ルファの兵士」と呼ばれる特殊強化された兵士たちも何千人と作られ、戦地に送り出されていました。

 その兵士たちは、一般兵の手足を機械兵器に改造するという機械化手術を施して作り出されており。しかも……


「みな目が赤いですね!」

「あれが破壊の目、ルファですよ。赤鋼玉の水晶体を利用しております」


 テツダ師の一番弟子、灰色のサナダ技師は誇らしげに、庭園にずらりと並んだ兵士達の列を指さして樹海州の高官に説明していました。


「一般兵士のものは大量生産品で機能が限定されますが、特注品となればどんな機能でも付加できます」

「ぜひ、注文したい。州長チェルリ様が御所望なのだ。機能はありったけつけていただきたい。加えて、神獣を操る波動を送れるようにできるであろうか」

「神獣操奏ですか。むろん可能ですが、神獣の再利用を禁止する大陸法に抵触しますよ?」

「統一王国は近いうちに滅ぶ。また神獣の時代が訪れよう。我ら樹海州の民は、王国が倒れたら緑虹のガルジューナをもってして、独立を果たす所存である。金子に糸目はつけぬ、どうか注文を受諾されたい」

「……わかりました。では、お作りいたしましょう」


 樹海州の高官プトリが大粒の金剛石をそっとサナダ師に渡したものですから、師は僕を助手にしてさっそく特注の「ルファの目」を作り始めました。

 あらゆる情報を詰め込んだ薄い眼膜を何十枚も貼り合せたものを、赤鋼玉の水晶体と合わせ、なじませている間。サナダ師は僕の義眼を作業用の顕微眼鏡でのぞきこんできました。


「おや。その瞳、このオプトヘイデン製ですね」 


 ずんぐりむっくりの師は、笑いながら言うのでした。


「でも私の銘ではありませんね。しかも製造年号が数百年未来とは。本当にあなたは、未来からやってきた魔人なのですね。実に面白い」

「あのう。首輪、外してもらえませんか?」

「よろしいですよ。この『目』をひとりで作れるようになったら、外してさしあげましょう」

「え」

「我が師テツダ様よりそう承っておりますので。しっかり私の技を仕込めと」

「ええええーっ」

「我が師にことのほか期待されておられますね。私も、お教えするのが楽しみです」

 

 さ、サナダ様お願いします。そんなこと言わずに……

 僕としてはもっと過去に行って、アイテリオンの誕生を阻止するとか、そんなことをしたいんですけど……


 こうして。不本意にも、要塞島での技師生活が幕を開けたのでした。

 今度は十数年どころではなく。およそ数百年に渡る、とても忙しい島生活が。





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