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18 時間が止まればいいのに

 テオドールが一人で無限の塔に向かったので、リネットはヘルヴィと二人で旅をしていた。

 女二人の会話は盛り上がった。

 特に楽しいのはテオドールの話だ。長所も短所も顕著で、そのどちらも愛おしい。彼の前世のエピソードを聞くのは、リネットにとって心地よい時間だった。

 アンリエッタの話も聞きたかったけれど、ヘルヴィは直接の面識がないので伝え聞いた話しかできないという。残念だ。


 集合場所に予定している町は、グルメの町として有名らしい。

 ヘルヴィと一緒に食べ歩きするのが今から楽しみ。

 けれど、もっと楽しみなのは、そこで待っていればテオドールが帰ってくること。

 できるだけ長い時間を一緒に過ごしたい。

 だけど足手まといになって彼の邪魔をするのは絶対に駄目だ。

 テオドールには成すべきことがある。それは彼一人の問題ではない。




 静かな夜。

 リネットは一人で宿の屋上にいた。

 銀色の髪を風に揺らしながら遠くを見つめる。

 その方角には不確定都市があり、最強のアンデッドと呼ばれるアンリエッタがいる。


「……もうあんまり時間、残されてない? もう押さえつけるの無理?」


 彼女はずっと頑張ってきた。もっと頑張れなんて残酷すぎて言いたくない。

 しかし――。


「ごめんね。もう少しだけ頑張って……今のテオドールじゃ、多分、届かない……」


 テオドールは強い。今の白騎士と比べても圧倒的だ。よくぞ人間という種族があの領域に至ったと尊敬してしまう。

 前世での研鑚。成功の保証がない転生魔法という賭け。一つ一つの積み重ねが今のテオドールを作っている。

 それでも彼自身の目的を果たすには足りないのだ。

 時間切れになる前に壁を破らないと、全てがご破算になる。


 そしてテオドールが成功しても失敗しても、リネットの時間はそこで終わる。

 ずっと一緒にいたいのに。

 最初は一目見たいだけだった。一言でも話せたらそれでいいと思っていた。

 終わりがあると最初から分かっている。期間限定の旅。だから別れに耐えられる。

 そのはずだったのに、どうしよう、耐えられそうにない。


 テオドールだけじゃない。ヘルヴィとも友達になってしまった。

 見るものはどれも新鮮だ。食べ物が美味しすぎて困る。もっと旅をしたい。色々な人に会いたい。


「時間が止まればいいのに」


 リネットは呟く。

 小さな声とは裏腹に、その言葉は大きな祈りを込めていた。

 町の明かりがさっきより少なくなっている。聞こえてくる喧騒が小さくなった。

 時間は流れる。誰にも止められない。


「ワスレナグサを見に行く時間、あるかな……」

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アンリエッタ視点の短編を書いてみました。こちらも読んでいただけると嬉しいです。

https://book1.adouzi.eu.org/n3392ia/

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