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文化部員は転生したらしい。  作者: 冬鬼
4:日常が万丈。
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春の花の蕾が膨らむ頃。



さて、こちらでも春を告げると言われている花の蕾が膨らんでいくつか開花した頃。

皆様いかがお過ごしでしょうかね?


ここで嬉しいニュースを一つ。私以外にもやっと、海月館のみんながお酒を飲めるようになったんですよ、うふふ。


こちらには誕生日を祝うことはあるが、年をとるとされるのは誕生日ではないのだ。こちらの世界はいわゆる数え年方式で、春が来る事によって、同じ年に生まれた人達が一斉に年をとるのだ。


数え年とは、年齢や年数の数え方の一つであって、 生まれた時点、基点となる最初の年を1歳、1年とし、以降元日を迎えるごとにそれぞれ1歳、1年ずつ加える。

数え歳とも、単に数えともいうらしいね。


つまりは、生まれたときは0歳じゃなくて一歳。元日が来たら一つ歳をとって二歳となるのだ。つまり、誕生日は最初以外、年を取らない。ということらしい。


今日は春の花が開花したから、みんなやっとお酒が飲めるようになったものね。だから、お酒を飲ませてみたいんだけど、お酒飲ませたらあとが怖いような…酒乱になって魔法どっかんどっかん発動させちゃったらどうしよう。


でも、春の花が見頃になった頃に花見に行く予定であるので、その時はギルドの方々にお願いして連れてってもらおう。なんでもサドガルマゾのメンバーにしか知らされない、とても綺麗な場所があるのだそうだ。だから、一緒に連れていって貰うことにしている。その代わり、わたし達は酒を用意する。


花見に思いを馳せていると頭上から声が掛かった。


「あんたねぇ、フライパンから煙出てるわよ。」


「あら、ほんとだ。熱しすぎたぜ。」


「いいからさっさとご飯作りなさいよ。」


あたしの分もあるんだから、とイライラした様子で、ワサビがべしべし頭を叩いてくることにいささか殺意を覚える。その肉厚な尻尾を輪切りにしてステーキにでもしてやろうか。とは口がさけても言えない。この前うっかり口を滑らせて髪を燃やされたのだ。全部ではないけど、髪が肩にかかるぐらいになってしまった。


ま、まぁちょうど髪を切りたいと思ってたところですから?別に?怒ってなんてないですよ、鱗を剥がしてやろうかとは思いましたがね。


これ以上燃やされてしまっては困るので、ちゃっちゃとご飯を作る。卵を焼いて、お肉炒めて、サラダ作って…パンと穀物、どちらが良いかな…と毎回考えて結局は、両方用意するんだけどね。


「先輩、おはようございます。」


「おはよう、今日は業者さんがこっちまで来れないみたいだから、馬車置き場までお酒取りに行くよー」


「はーい。」


めんどさいねぇと口々にいいながら、ご飯を食べ終える。


今日は領主の開くパーティーで広場が使えないのだ。全員誰でも参加できるので、嬉しいことなのだが、この時ばかりは道を塞ぎやがってと思う。ただで美味しい料理をたべられることに変わりはないので、荷物を運び終えたら広場で少しつまんで帰ろうかと思う。


二輪車を引っ張り出して、馬車置き場までガラガラと引いていく。広場はやっぱり人が多くて、少し歩きにくいような気がした。その前によけてくれる人もいるので、ありがたい。


途中で何人かがふらふらと広場の中へ行ってしまうという事態が起きたが、お皿に甘いものを山盛りにして帰ってきた。帰ってきたしいいのかな…うん。オーガさん食べ歩きは危ないから気を付けてね?


「すいませーん、海月館です。」


「はい、お待ちください…あぁ、酒樽ですね。三番目の倉庫に入れてあります。」


糸目のお兄さんにありがとうございました、とお礼を言って、三番目の倉庫に向かう。私はここがあまり嫌いではない。

二番目の倉庫が動物が集められている倉庫だからだ。

色んな動物が集められていて面白い。しばし立ち止まって見てしまうようなこともある。


「オーガさん、なんかすげぇ見られてるね。」


「…誰にですか?ここ私たち以外に誰もいませんよ。」


不満そうな顔をしてそういうオーガさんに、そうじゃなくて、というと、その視線の先を指差した。


「あれ、蛇がさ、みんなこっち見てるよねぇ。」


「……………。」


鉄格子ではなく、網目状になった檻に入れられている蛇達がこちらを見ている。それは、仲間になりたさそうにこちらをみている!ではなく、なんとなく引き寄せられたから見ている、というような視線であった。


ふらふらと二番目の倉庫の方にいきそうになったオーガさんを止める。そっちは立ち入り禁止と書いてあるでしょうが。


そして、後ろからはキッ、キキッと変な鳴き声が聞こえたなんだ。と思って後ろを見るとナミラさんが鳴き真似してるだけだったなんだ、思ったが、よく見るとナミラさんは倉庫の方に向かってやっている。


そちらを見るとなにやら白いリスっぽい生物がぴょんぴょん跳ねていた。ナミラさんはこの動物とコミュニケーションをとっていたのか…って、ムツゴロウさんみたいだな。そもそも出来る方がおかしいわ。


二番目の倉庫でわちゃわちゃしていると、ハモォヌちゃんとミキレイさんが先に酒樽をとってきてくれたようだ。

…いやぁ、すぐに目的を忘れるような先輩で申し訳ないね。


重くなった二輪車を引っ張って、また広場につく。さっきよりも人が多くなっていて、賑わっているようだ。


それを横目に、人混みを避けながら海月館に酒樽を運ぶ。そんなに重いわけではないので、みんなには先に広場に行っててもらった。その方がすぐ無くなってしまう、美味しいご飯も食べられるだろう。


無事に荷物を運びおえた私は、置いていかれて拗ねていたワサビを連れて広場に向かった。

みんなは思い思いに楽しんでいるようで、特に何の問題も起こしてないようだ。出来れば、こんなに人の多いところで問題を起こして欲しくないものである。


ガルバディストさんにも出会って、ワサビを見ると女だったか。とワサビを触ろうとしたら、ワサビは後ろに隠れてしまう。ガルバディストさんに苦手意識を持ってしまったようだ。まぁ、ワサビとしては複雑なんだろう。


「ナナセちゃあん!お花見の話みんなにしてくれたァ?」


くねくねとした走り方でこちらに向かってくるクレイモアさん。やばいですその走り方、不定の狂気に陥りそうです。


少し目を逸らしながらまだです、と言うとそれは、大変!あたしが言ってくるわ!と私の前から走り去ってしまった。


…みんなが不定の狂気に陥らないことを願って…まぁ、変なのは慣れっこだから大丈夫か。

なにはともあれ、楽しい花見になりそうだと、私は思った。





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