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文化部員は転生したらしい。  作者: 冬鬼
4:日常が万丈。
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あれも気の所為、これも気の所為。



なんだかこの頃見られているような気がする。それをみんなに言ったら自意識過剰も甚だしいと言われて少し傷ついた。まぁ、どうせ気のせいなのだろう。


だから、なんだか頭が重く感じるのも気の所為なのだ。


「…先輩、頭にドラゴン乗ってますよ?」


「やだなぁ、そんなわけないじゃないか。ほら鳴き声」


「ぎゃお」


……そんなっ…空気を読んでなかなくたっていいじゃないか。とりあえず、頭の重みは気のせいでないらしい。すっかり忘れていたのだ。ガルバディストさんからもらった卵の存在を。いつの間にか無くなっていたことにも気付かなかったし。


しかしさっきから尻尾がびしびし当たって痛い。尻尾をふるんじゃないよ。

手元に持っていた鳥の肉が消える。どうやら上のドラゴンが食べたようである。

ぐぐぐっと腹を持って引きはがそうとするが爪を立ててきて離れない。


「先輩血が出てるっすよ!」


「まじで?やべぇわこれ、信じられねぇ強さでしがみついてくる。」


諦めて手を離すと鼻で笑われた。なんて生意気なドラゴンだ。流石に温厚で有名な私にも青筋が入る。

こいつ討伐してやろうか。それで逆鱗をとってやろうか。


そして、低血圧感満載で起きてきたオーガさんに聞くと、ドラゴンの卵は小さくして引き出しに入れておいたらしい。いつの間にやっていたのか、気が付かなかった。それにしてもドラゴンどうやって出てきたんだよ。


「そんなのぶち破ってきたに決まってるじゃない。」


「キェエエエエアアアシャベッツァアアア!」


「言葉ぐらいしゃべるわよ。」


こ、こいつしゃべるぞ!じゃない、メスなのかこいつ!てっきり男の子かと…ドラゴンって言ったらオスのイメージが強いからなぁ、でも卵生むんだからメスでもおかしくないよねぇ。


色々と事情を聞くとドラゴンちゃんは卵の時からずっと見ていたらしい。闇堕ちして自我が無くなってしまったお母さんに潰されそうになったところを、ガルバディストさんがお母さんを倒して、お持ち帰りされたらしい。

てっきり殺されるかと思ったけど滑り込んだのはポケットの中。それから随分日が経って、ようやく出れたと言う。


忘れていたのは本当に申し訳ないと思っている。


「たまにはちゃんと散歩に連れて行きなさいよね。じゃないとあんたの髪燃やすわよ。」


「先輩がハゲちゃう!…ふっ。」


「なんで笑いを堪えきれないんだよ、もっと頑張れよ!」


早速今日の散歩よ!と言ってげしげしわたしの頭を蹴ってくる。女王様か、女王様キャラなのか。生まれ持った性格が女王様かってどういう事だ。私がMの気質持っていなかったら討伐していたところだよ。とにかく、頭を燃やされたら困るので、買い出しもかねて散歩に行く事にした。


「ところでドラゴンさんや、名前はあるの?」


「ないに決まってるじゃない。人間のいるところで生まれたら人間付けてもらうって決まりなの。」


「へぇ…何がいいかなぁ。」


よぉし、これは私の光るネーミングセンスを披露する必要があるようだねぇ、でも正直言って安易に決めちゃうからなぁ…これはみんなに聞いた方がいいね。


「パトラッシュにしようぜ!」


もう疲れたよ…を思い出すから却下。それに犬ではない。


「なんですかねー…あ、ホ」


却下。まだ何も言ってないと講義があったが言いたいことは分かっているんだよ、お前の口からホで始まる言葉は一つしかないんだ。


「ヴィルガナキーセントシュタイン…」


一番ましだったけどとても長かったので却下とさせていただく。あとセントシュタインってあそこだね、あのお城だよね?

多分、ピカソの本名ぐらい長かったと思うんだ。私も覚えていないけどね。


「え、何で決まらないんですか…じゃあ、ワサビ。」


「あら、それいいわね。」


まさかのOKがでた。え、ワサビだよ?ツーンと辛い緑色の調味料だよ?この三文字が何を掻き立てたのか知らないが、ドラゴン…もといワサビはこの名前を気に入ったようだ。


今日のおすすめを決めようと、お肉やさんでお肉を見ている時、何故か視線を感じた。頭の上に乗っていたワサビはハモォヌちゃんの頭の上に移動していたから、ワサビではないはずだ。では、一体誰が?


「せーんぱぁい…」


「おぉう!?」


後ろを振り向くと見知らぬ女の子がたっていた。年の頃を見ると大体みんなと同じぐらい。…ふぅむ、こんな綺麗なドレスを着たお嬢様みたいな女の子と、面識は無かったはずだ。


だかしかし、聞き間違いではなければこの女の子は私を先輩とよんだ。そう、ということは前世での繋がりがあるかもしれないのだ。


「やっぱり…忘れちゃってますよね…はは。いいんです。私、影薄いんですよ。」


「えちょ、待ちなさいって、しゃがむんじゃないよ。」


「ふふふふふ」


…思い出したぞ、この子。私たちの中では唯一女子力というものを持っていたと言っても過言ではない、妄想天使の異名をもつこの子を…!


「思い出した、もしかしてずっと見てたのって…」


「ええ!私です!あ、名前はユニイーナって言います。」


そう言って、ユニイーナちゃんはお嬢様らしい膝を折る礼を見せてくれた。


買い物をしている私たちのことを見つけて話しかけたいと思っていたのだけど、お嬢様なので、あまり一人で自由に出歩く事ができないらしい。

こうしてる間にも、多分執事が探しているだろうとのこと。おお、やっぱり執事がいるのか。って、こうしてちゃ駄目なんじゃないのか。


「いやぁ、気付いてもらってよかったです!このままストーカー生活送ってやろうかと思ってましたから!」


「いやいや、それは怖いって。ところでさ、私達今、みんな揃って外に出てるから会ってく?」


そんなに離れたところにはいないはず、と続けようとした。

だが、コチラに向かってくる砂煙を上げる人は…


「お嬢様ァァア!見つけましたぞ!」


「あー…無理っぽいですねぇ、すいません!また今度会いましょう!」


バツが悪そうに、しかめっ面をする。流石にこれ以上は心配させられないと思ったのか、クルリと踵を返して執事…かな?執事さんのところへ行ってしまった。


「あ、うん。海月館にもきてねー」


この言葉は、聞こえただろうか?


なんにせよ、今日は仲間が増えた一日だった。ユニイーナちゃんはお嬢様らしいからいつも会えるとは思わないけどお店に来るぐらいならいいんじゃないかなぁ…


「せんぱーい!いた!もう、迷子にならないでくださいよー」


「私肉屋に行くねーっていわなかったっけ?」


「あるぇ?そんなこと言ってましたっけぇ?」


「とぼけるんじゃないよ。」


ユニイーナちゃんにも、はやくみんなに会わせてやりたいと思う。






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