クリスマスは普通に済ます?
ガチムチ国から帰ってきてからなんとなくだらだらしていた記憶しかない。
とはいえ、冬は食べ物が美味しくなる季節。
そして、イベントも沢山あるので私達は休んでばかりはいられない。
特に大きい行事であるのが聖夜祭だ。まぁ、クリスマスなんだけども。
この行事は恋人たちよりもどちらかというと子供達のためにあるようなものだ。
なぜなら美味しいご飯とプレゼントが貰えるからだ。
クリスマスは家族にとっては家族全員で過ごす。恋人たちにとってはイチャイチャしまくる日なんでしょうねーケッ。
そんな風にひがんでもいられないので、とりあえず木でもとってきてもらおうかなぁ…あ、そういえば去年のがあったような…あんまり大きくても入らないから、去年のでいいかなぁ…
それに飾りも買って来なきゃいけないし。作ってもらおうとしてもいきなり大量に作るのは難しいからなぁ…買いに行くかぁ。
私はわざとらしく手をぽんとうって思い思いに過ごしているみんなを見回しながら言った。
おい、ナミラさんテーブルに変なうさぎの絵を描くのやめなさい。
この間見つかってお客さんがお酒ふいてたんだぞ。まったく、後で消しとくんだよ?
「そういえばもう聖夜祭だねぇって事でツリーの飾りを買いに行きます。」
「えー…寒いじゃないですかーやだー」
「ぐーぐー」
「ほら、だらだらしてないで!お金あげるから好きなの買ってきて。」
みんなにお金を渡して外に追い出した。どんなものを買ってくるかは少し不安だけど、人前に出るものだからそんな変なものは買ってこない。…はずだ。
ほこりっぽい倉庫からツリーと元からあったまだ使えそうな飾りを引っ張り出しておく。
ツリーはみんなが見える入口付近に飾って、そして飾りをつけていく…が、やはりこれではまだ心許ない。結構時間がたっているし、そろそろ帰ってくるだろう。
温かいスープでも作って待っててやるか。
オレンジ色の丸いとうもろこしみたいなのから身をとって、すり鉢ですり潰していく。
ペースト状になったら牛乳と一緒に煮詰めて、味付けをしていく。…甘い方がいいかな、胡椒は後からお好みでかけてもらうとこにしよう。
クルトンがわりのパンは…うーん、普通のしかないけどこれでいいか。
固めのパンをさいの目に切って、器に盛っておいて、傍らにスプーンをそえる。
うん、味もよくできているし、盛りつけも完璧だ。我ながら良く出来たと思う。
「何だかいい匂いがしますねぇ…あ、ただいまです先輩。」
「あー寒かったわぁーでも新刊出てたなー」
「おかえりー、スープ作っといたよ。さぁ、何を買ってきたのか見せるがいいよ。」
みんなが持っていた紙袋を受け取って、中身を確認していく。
ハモォヌちゃんはカエルのやつか。
うん、リアルなやつじゃなくてデフォルメされたちょっと間抜けな顔した可愛いやつだから、まぁ合格だよ。
え、これも飾ってって?なに、可愛い男の子だねーうん?このお兄さん股がってるねーお馬さんごっこかなー?…ホモじゃねーか、だめだよ!
オーガさん…はー…あれ?少なくない?飾り少なくない?いや、選んで来るもののセンスはいいんだけどさ、このガラスのお馬さんとか綺麗だしね?でも五つはいささか少ないんじゃないかと…あ、その手に持ってるお菓子ね?そのパイに消えたのね?
ミキレイさんは?あ、よかった、普通だねぇ。さすがミキレイさんだわ。期待を裏切らない。でもさ、百合とか薔薇とか椿とか…なんか…お花ばっかりだね?いや、華やかになっていいと思うよ?けどさ、百合が多いんだよっ!
…ナミラさんかぁ、うん、どんなの?あーはいはい、変だね。知ってた。何そのセンス、何でそんなうさぎとかりすとかセクシーポーズしてるの?なんで人型なの?ケモナーなの?どこで売ってるの?
…いや、個人的には好きなんだけどさ。
そして、飾り終わったツリーはカオスだった。誰だよ薔薇の中にうさぎ突っ込んだの。
多分、みんなが思ってるツリーはこんなのじゃないね。
じゃあ後は料理をつくるだけなので、手伝ってもらうことにしよう。
クリスマスのイベントやるってクレイモアさんや、ガルバディストさん…ギルドメンバー…サドガルマゾの皆さんに言ってるから来てくれるはずなんだよなぁ。
とりあえずクリスマスと言ったらケーキだ。だが私は本格的なお菓子作りは得意ではない。何故なら、分量が適当では行けないからである。
つまり、理数系だ。
クッキーやゼリーやらなら簡単だけども。もっぱら文系の私にはお菓子作りは合わない。なので、パン屋の娘さんにケーキを頼んでおいたのだ。
そういえば、その娘さんと街のおしゃれボーイは幸せにやっているらしい。うん、それは良かった。末永く爆発しろ。
クリスマスイベント一緒にどうですかと言ったら、娘さんは顔を赤くして。
「あ…ご、ごめんなさい、手伝いって言うか、あの、ほかの所っていうか…」
アッハイ。
なんとなく察した私は、快く送り出した。血の涙なんて流してなんかいないってば。
ケーキをテーブルの真ん中に置いて、他の場所を食べ物で埋めていく。
うん、完璧だ。
「おぉーい!来たぞナナセぇ!酒は用意してんのかー!?」
「おい、酒くせェぞクレイ。」
「だ、誰です?それ、クレイモアさんですか?」
「あぁ、珍しく酔っ払ってんだよ。だから気にすんな。あと、誘ってくれてどうもな。」
クレイモアさんに肩を組まれて嫌そうな顔から、爽やかな顔で言い放つガルバディストさんすてきです。でも、それよりもクレイモアさんが気になる。その女性の格好で言われるとなんだか違和感がありまくりです。
呼び方も変わっているような気がしますね。
「先輩、ケーキ食べていいですか。」
お皿とフォークを用意して待っていたオーガさんに、切るから待っててというと大丈夫です切れますと言ってケーキの方へ行ってしまった。
ケーキが足りるか非常に心配である。
バーカウンターの定位置に戻って、お酒を作りながらチカチカと光るカオスなツリーと騒いでいるみんなを交互に見る。
「…馬鹿やってるなぁ。」
遠くから見て大人ぶってこんなこと言っていても、両親には悪いが、家族だけで過ごした聖夜祭よりも、何千倍もこっちの方が楽しいのである。
「先輩なにしてんすか!いまハモォヌが面白いことしますよ!」
「無茶ぶりやん!」
あぁ、楽しい。




