ぼくのかんがえた最強の
今回はほぼ説明会です。
「先輩、じゃあ私ギルドに報酬取りに行ってきていいすか?」
「うん、お願いねー。」
「こんにちは!師匠いらっしゃいます?」
「はいこんにちはー、オーガさんは寝てるから大人しく待ってようね、昨日は遅くまで何かしてたみたいだから。」
そう言ってナミラさんが出て行こうとしたので、私はナミラさんにゆで卵を持たせてあげた。そして勇者くんにはサービスでミントソーダを出してあげる。勇者くんはオーガさんが躾てくれたようで、なかなかの好青年になっている。オーガさん尊敬するわ。
そして何を思ったのかナミラさんはあろうことか玄関口でゆで卵をたたえる歌を歌い、その美声で玄関口に人を集まらせてしまった。まぁ、これで海月館の知名度があがるならいいかな。‥そうだなぁ、吟遊詩人を雇ってみてもイイかもしれないね。卵‥なんか忘れているような‥なんだっけ?まぁいいや、大したことじゃないだろう。
ちなみに海月館とはこの私達が住んでる建物の名前である。両親が戻ってこないなら名前を変えてしまおうということで、あみだくじで決めた。そうしたらこの名前になった。ちょっと変えなかった方が良かったなと後悔したぐらいである。まさかネタとして考えただけのものが当たるとは思わなんだ。
そういえば、このお店をやっていると忘れるけど私達全員、一応ギルドに登録しているのだ。あまり顔は出さないけれど、ちょっとした採取の依頼なんかはお金ももらえて採取もできて一石二鳥である。ギルドに登録したのは、そう昔のことではない。
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あれはどんどん仲間が増えて、そろそろギルドに行こうと私が提案したのだ。ギルドまではそう遠くない道のりで、歩いていける距離である。
途中で新しい露店があったので帰りにでも覗いてみようとか思いながら、クレイモアさんの所属していたギルドにつく。ちなみにこのギルドの名前は、サドカルマゾという。
だが、あまり名前は使われない。この街でギルドといえばサドカルマゾのことだと伝わるからだ。
「すいません、ギルド登録、5人お願い出来ますか?」
「はぁあー‥はい、ギルド登録ですね‥ではこの水晶板に一人ずつ手を乗せてください。」
なにやら元気の無さそうな受付嬢さんに水晶板を渡され、手を押し当てることにする。私は水晶板を持って、ハモォヌちゃんから水晶板に手を押し当てた。
しばらく当てていたら水晶板と繋がっているらしい受付嬢さんの隣にある木でできたレジスターみたいな所からギルドカードなる物が出てきた。次々に順番に水晶板に手を押し当て、全員分のギルドカードが出来上がった。
この世界は剣と魔法の世界なので、ギルドや冒険者が多数存在する。
王都に近ければ近いほどギルドの数が増えていく。王都の方が大きい仕事があって、お金もたくさん稼げるからね。私達のいる街はそんなに王都とは近くないから、あまり大きな仕事はこない。依頼を受けるにもお金必要なんだけどね。それでも日本円に直して二十円とか、一番高くて八百円ぐらい?
あと、ギルド協会が管理してる危険な場所に採取に行きたい場合は、クエストは受けるがお金はかからない。でもそこにあるものは持ってきてもいいっていうね、まぁ、人から受けた依頼じゃないからね。
そして、すべてのギルドは繋がっていて、大変な依頼が王都のギルドに舞い込み、王都の冒険者、戦士、騎士達が歯が立たなかった場合、他のギルドに連絡して腕っ節の強いやつが出張する事だってあるのだ。ガルバディストさんもそのひとりだった。
基本的にギルドは一つにしか所属出来ない。だから、他のギルドに変わるときというのは引っ越した時やそのギルドで問題を起こしたときなどだ。めったにそんな事はないが。
ギルドが変わることは珍しいが、ギルドから脱退することは案外簡単である。いきなりやりたいことが出来たから、隠居したいから、家庭を持ったから。理由は様々だ。ギルド側は咎めはしない、そんな権利ないし、送るときは盛大にお別れパーティーをするぐらいだ。
クレイモアさんも前はガルバディストさんと並ぶような冒険者だったが、今は優しいおねいさんである。何がなんといおうとおねいさんなのである。本人は、やーね、ついてるからただの女装よ、といっていた。そのくせおじさんとかいうと怒る。怖い。
冒険者は基本的には受け入れられることが多いが、やはり余所者を受け入れたくない村もあるようだ。私はその村がどんな理由で拒むのかは知らないが、怪我している冒険者まで拒むのはおかしいと思う。
私たちの街は受け入れる派だ。でなければギルドなど存在しない。
「なんで私生きてんだろ‥人間って汚い‥あ、これ。スタンプ押し終わったのでギルドカードお渡ししますね。」
「お、おう。‥あの、何があったか知りませんけど、元気出してくださいね。海月館っていうお店に来て頂ければ何かサービスしますんで。」
さりげなく宣伝して、ギルドにある食堂の椅子に座った。
ギルドカードは赤っぽくて、白色で文字が書いてある。ギルドには一つ一つ象徴する宝石や花やらなんやらあるらしく、ここのギルドはレッドジャスパーという宝石が象徴らしい。
「はい、これがギルドカードだよ。身分証明書にもなる‥まぁ、パスポートみたいなもんかな。」
「へぇ、これ年齢とか性別とか‥色々書いてあるんですね。その人が得意とする攻撃方とかも。」
「まあね、色々わかるよ。これにこなした依頼回数とかも記録されて、大きい仕事をして成功したら星がついたりするし。星が多い人は間違い無くすごい人。わかりやすいよねー。」
「戦闘したことないんすけど、武器が針って‥‥」
「針?‥あぅん、あれじゃない?おばあちゃんがくれたっていうあの針。人間ようじゃなかったんじゃない?」
「マジかよ。」
こうして私達はギルドカードを手に入れた。チーム名とかいるのか?
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「ただいまー!見てくださいよこれぇ!そこの露店のおばちゃんから野菜もらっちゃいました!ついでに駄菓子屋の糸引き飴引いてきたら、他の飴がくっついてきて全然取れなかったんで、おばちゃんがお詫びって事で全部もらいました!」
「またか!ナミラさんおばちゃんに人気だもんね‥相変わらず運がいいなぁ、飴あとでばらしてあげるね。で、ギルドの報酬は?」
「あ、これです。」
ナミラさんから野菜と飴と報酬であるお肉の塊と、お金が入ってるであろう袋を‥受け取れなかったのでナミラさんでわけておくように頼んだ。
「師匠、おはようございます!今日も鍛錬お願いします!」
「うぇー‥」
「オーガさん頑張って、カントリーなしっとりクッキー作って紅茶用意しとくから。」
「よしやってやろうじゃないか。」
今日も海月館は平和です。




