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文化部員は転生したらしい。  作者: 冬鬼
2:今日も今日とて。
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八歩進んでお帰りください。

私は勇者が嫌いである。


だって、だって!勇者って勝手に人のタンス漁ったりするし、坪わるし樽壊すし、勝手に宝箱開けるし、なんかお金持ってっちゃうし!


一番許せ無いのは性格である。この頃人間らしい勇者もいるらしいが、大体の勇者がお人好し、自分勝手、自分が幸せならみんなも幸せになるべき!‥ほっといてくれ。


ここにも勇者がいるなんて、考えられなかった。魔物はいるが、魔王が暴れ回ってるなんて聞いたことないし、とゆうか魔王は今のところ血が途絶えているはずなんだけどねぇ‥‥でも、魔王の血を引いた人が何人か世界に散らばっているらしいね。

まぁ、そんな人に会うことないと思うけどね。


あぁ、魔王のことはいいんだ、私に危害を加えないし。

問題は勇者だ。

私が生理的に無理な大っ嫌いなテンプレ勇者。


「お金発見!」


殴り殺してもいいんだろ?


「君と同じぐらいの年の子はさー思っちゃうんだよ、自分に特別な力があるんじゃないかって、でもね、君には何のなんの力もないんだよ?盗み働いて、そこらへん跳ねてるノンアクティブのスライム倒しといてなぁにが一人前の勇者だ、あぁ?自分の立場もわからねぇのか、それともなに?それでも自分はゆくゆくは魔王を倒す勇者とかいっちゃう感じ?魔王も暴れ回ってない今の時代君みたいな子はただの盗人にしかならないんだよっ」


「‥‥‥‥‥‥」


下を向いてつまらなそうにしている勇者。‥私にはその耳にイヤホンの幻覚が見えるぞ。あぁいやだ、こんな奴が大人になると思うと反吐がでる!やっぱり正座じゃなくて殺しとけばよかった。


「‥ねえねぇねぇねぇ、私今なんていったかな?覚えてる人てぇあげる。」


「はぁ?」


今のはぁ?がとてもしゃくに障ったので手に斧を持って最大限の大きさにする。それをゆっくりと振り上げて勇者の頭の上でぴったり止める。


「あと、三秒以内に答えられなかったらこれ落とそうか。こんなに大きい斧ならさ、私が力を加えなくても君の身体なんて真っ二つだ。こわいねぇ。」


「え、ちょ、うごけなっ‥‥!」


「いちにぃさん。おわったよ、何で逃げないの?五秒ぐらいあげようか?」


勇者は顔を青ざめさせてぶんぶんぶんと顔をふっている。

‥こんな奴はどうせ怖い目にあっても反省しないでまた同じ事を繰り返すんだろ?学習能力のない奴なんだろ?

居なくっても困る人なんていないだろ?


でもそうしたら私が捕まっちゃうしなぁ、手が後ろに回るようなことはしちゃ駄目だよね。


両親の残してくれたものを思い出したら、なんだか急にやる気が失せてしまった。手に持っていた斧を小さくして、へたり込んでいた勇者に背を向ける。今日のご飯は何にしようか?


「へ、なんだよ、結局何もしないじゃないか。」


そう思ってるなら大間違いだ。それにも気付かないなんてかわいそうな奴。やはり頭の中が空っぽなんだな。目先のことだけ考えて、後のことを考えないで、勇者はまた同じ事を繰り返すのか。‥頭を丸めてやったが、これで反省するといいな。





「せんぱーい!」


「あぁ、ミキレイさん。どうしたのー?良い杖の材料は見つかった?」


「そうなんですけど‥‥やっぱりオーガちゃんと相談して、元となるのは金属が木かって話になったんですけど、二つ作るかどうか迷ってるんです。」


オーガさんが言う話によると、金属で作った杖はどちらかというと、攻撃魔法に特化するそうだ。木は治癒魔法とかに特化するらしい。はめるコアで一番の力が変わるらしいけど。私にはよくわからないことだ。


どうせ、クエストいったら両方いったついでに取れるしなぁ‥加工はミキレイさんにやって貰えばいいし。


「うーん、それはよく相談しないとねぇ。でも両方素材はとれると思うよ?採取のクエストでも今度行ってみようか?」


「いいですね!じゃあそうしましょうか。腕がなりますね!」


「あ、討伐系のクエストは私抜きで行ってね?私、争い事とか嫌いだからさ。」


食料になるならともかく、ならないならあんまり興味ないからね。



ミキレイさんと話をしながら歩いていると、前から大きな箱を抱えた人達がやってきた。何かあったのだろうか?


「おい!まだ足りないぞ!土嚢はまだか?」


「無いです!これ以上持ちません!」


箱の中は土嚢で、男の人達が去る方向を見てみると、街の入り口のようだった。なにか、液体のようなものが土嚢の隙間から垂れているようだ。‥少しとろりとしているそれはスライムのようだった。明らかに勇者のせいだろ。


この世界のスライムは基本的に温厚である。温厚であるが、仲間をたくさん倒されるとスライムウォールというものになって襲ってくるのだ。‥今回のものは規模がかなり大きいぞ、何体倒したんだ勇者。


素材のため、なら仕方無い、とはいえないのだ。だって、敵対していないのに仲間をばんばん倒されるし、スライムの素材が欲しいなら川の中にいる好戦的なスライムを倒せばいいのだ。


そんな事を思ってスライムたちはやってきたのだろう。本当に、だから自分勝手な奴は大嫌いなんだ。勇者はどこにいるんだ‥‥と辺りを見回すと、こんな時だというのにのんきにパンを食べ歩いている。


きめた、あいつをスライムのなかにつっこんでやる。


スタスタと、呑気にパンを食べている丸坊主の勇者の近くに行く。後ろからつかもうと思ったら‥‥私よりも大きなゴツゴツした手に先を越された。その大きな手は勇者の首根っこを捕まえて、スライムウォールに向かってぶん投げた。


「責任とってこいコノヤロォオオ!」


その大きな手を持つ、張本人ークレイモアさんは手首をコキコキとならしている。


「まったく、こんな事されちゃ困っちゃうわ。商売が成り立たないもの。」


「クレイモアさん、すてき!」


思わず手放しで賞賛を送った。スライムウォールも目的の勇者を捕まえたからかあっさりと去っていく。まぁ、勇者だし?死にはしないだろう。


「ミキレイさーん、ごめんね、帰ろうか。」


「あ!いきなりいなくなるんで探しましたよ先輩。ご飯作んないとうるさいですよー?」


今日は機嫌がいいから、少し豪華にして、デザートも作っちゃおう。






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