【番外編】七.五行目を読み取る想像力。
×月△日
今日はグラスの代わりに埃を被り始めたドラゴン(のクリスタル漬け)を磨いた。
何でかって言うと、何か先輩に「オーガさんそのグラスすり減ってない? ってかもうピカピカだしそろそろ違う事して欲しいんだけど!!」と言われて、思わず「じゃあ別の物磨きます」と言っちゃったからだったりする。
んで、そのドラゴンの卵だけど、磨くついでにパクって来た。
今私の部屋に有るんだけど、豆電球位の大きさはあるから机の引き出しに仕舞ったり出来なくて不便だったからうずらの卵位まで縮めてみた。
いくらクリスタルに入ってても、仮にも卵だし、縮めちゃって大丈夫なの?!って話だけど、クリスタルの中にあるものは外からの影響(時間の経過など)を受けないそうだ。
この前暇つぶしに何となくで設計した小ぶりのからくり箪笥を木材だけミキレイちゃんに切り出して貰って魔法でちゃちゃっと組み立ててその中に仕舞って置いた。
折角からくり箪笥を作ったので、ついでに一昨年の誕生日に両親からプレゼントして貰ったモノクルも仕舞って置いた。
銀で出来た蛇を模したフレームに、透き通ったレンズ。蛇の目になっているのは不透明で緑色な石だ。何となく蛇には緑のイメージがある。某魔法小説の魔法学校の寮のイメージカラーのせいだと思う。
これは仕事人間の両親からのただ二つの贈り物の片割れだからね。大切にしなくちゃ。
ちなみに、今着けてるモノクルは二つの贈り物のもう一つのもう片方。去年の誕生日に貰ったモノクル。
基本的な構造は変わらないけど、目になっている石が透明で木の年輪みたいな模様が有る。
別に視力が変わったとかじゃないし、こっちのレンズは魔法式だから交換の必要が無いのにうちの親は何故か誕生日に毎年モノクルを贈って来るのだ。
偶然か必然か一年に一度はモノクルのレンズ部分が大破するので結果的には丁度いいんだけど。
ちなみに今年はちょっと前まで一昨年に貰った方を使ってたんだけど、ギルドに行くってなって何かちゃんとした格好の方が良いかなぁとかで去年貰った方を使い始めた。
こうやって古いのが使えなくなる前に新しいのを使い始めたのは初めてだったりする。
………って、何故に私は自分のモノクルについて語ってるんだろうか?謎だ。
そんな事より、今日は他にもっといい事があったんだった―――――
* * *
「あ、あのパン屋さんのラスク的な物美味しいんですよ先輩!!」
「買わないからね?」
「チッ」
今日の買い出しは珍しく先輩と一緒。
普段なら先輩は酒場を切り盛りするためこの時間から仕込みをしてるんだけど、今日は買いたいものがあるからー、と先輩も一緒。
他のメンバーはあのリラクゼーション施設並に色々な設備が充実している無駄に広い家を掃除をしている。
掃除よりは……と思って自ら志願した買い出しだけど、こんなに暑いんじゃあ掃除も買い出しも大して変わらない。
実はTHE・暇人な私はメンバーの中で一番買い出しに駆り出される回数が多かったりする。そのせいでこの市場については先輩の次に、いや、最近のお店事情については私の方が詳しくなってしまっていた。
それによって更に買い出しに駆り出される回数が増えて悪循環だ。働きたく無いでござる。
あー、あの店閉店セールかぁ、短い命じゃったのぅ。
なんて考えながら二人仲良くとことこ歩いていると、あ、あんな所に見た事の無い面白そうで怪し気なテントが!!
テントの中の様子が知りたくてガン見してたら、ラッキーな事にそのテントの前を通り過ぎる時ちょうど中に居たお客さんがテントから出てきて、捲れた入口からその時店内に並べられて居た『あるもの』がちらっと見えた。
あ、あれは!!
「ねーねー、先輩?」
「何だいオーガさん」
「杖が欲しいんですけど」
そう、杖だ。杖なのだ。この世界には魔法の精密なコントロールやパワーアップの為に杖があるのである。あるのであるってなんか語感が良いね!もう一回、あるのであるー!!
ドラゴンの一件から魔力のコントロールがある程度安定し始めたからと言って油断は禁物!!転ばぬ先の、それこそ杖じゃあないですか!!
「ニートが何を言ってらっしゃる」
「働きたく無いでござる」
だって面倒だし。
「クエストとか受ければ良いでしょう? オーガさんならすぐに杖ぐらい買えそうだけど」
それが出来たら今頃苦労して無いよ?兎に角私ゃあ杖が欲しいんじゃい。
こうなりゃ論破だ。メッタメタにしてやんよ!!
「いやぁ、クエストを受けるのにギルドに入って無いんじゃ一々書類提出とかしなきゃで凄い不便ですし、稼げるクエストって難易度が高いですから、ギルドに入ってすぐの低いパーティーランクじゃ受けれないんですよ。結果的にギルドに入っても簡単なクエストをひたすらこなして受けたい依頼が受けれるまでランク上げって言うモゲモンのレベル上げより面倒な事を…………って、ワタシモゲモン厨違うヨ? 一番道路でパートナー百レベにしようとして十レベで諦めた事なんて無いヨ? 違うヨ?」
やばいやばいバレる。私が十五歳にもなってモゲモン厨なのがばれ「はいはい。オーガさんがモゲモン厨じゃ無いのは分かってるから」
なかった。良かった。ってか、話が逸れてきてるぞ頑張れ私!!論破だ論破!!
「なら良いんですよ。それより、杖です杖!! ちょっと位良いじゃないですか!!たかだか日本円で五万円位程度の価値でしょ? 安いワンルームの家賃位じゃないですか!!」
「だから見て行きましょうよー、杖」と、必死に説得を試みるが先輩は動じず言い返して来た。
「うちもこれで割とカツカツなんだよ? お小遣いあげるとすぐにお菓子に替えてくるオーガさんに杖買ってあげる程余裕ないよ。それに五万円って結構大きいお金なの分かってます?」
「オーガさんの金銭感覚ェ…………」とか、先輩酷いわ!! そうやって私を罵って楽しんでいるのね?! この、この………………
「このロリコン変態ケチ野郎!! 先輩だってカクテルの材料買い込み過ぎて目ぇ回してんじゃ無いですか!! どっこいどっこいじゃいこん畜生!!」
言ってやったぜ。論破だ論破!!
「何それ酷い。だって、オーガさんに杖の必要性を感じないんだもん。」
はい? いやいや、
「何言ってるんですか先輩!! 家を出る前から不安定だった魔力のコントロールが先輩見付けた時位から本格的に危うくなってきて今上級魔法封印してるんですからね?すらんぷなうですよ!! 後、『だもん』とかキモいですよ!!」
「え? オーガさん上級魔法とか使えちゃうの?」
食いつく所そこですか。そう言えばまだ皆に言って無かったなー。でも別にそこまで重要な情報でも無いだろう。取り敢えず論破だ論破!!
「使えますよ。魔法は得意ですからね。」
「いやそれもう得意不得意の次元じゃないよね!?」
そうなんですか? とキョトンとしてたら、暫くの間一人で百面相してた先輩が、「あ、もういいや。ごめんね?」とか悟り顔で言ってきた。
あれ? 何の話…………あ、杖だよ杖。
「杖は?」
「やっぱり忘れてなかった!!」
「忘れる訳無いじゃないですかばかたれ」
忘れる訳ないじゃん馬鹿なの? 死ぬの? 先輩なの?
「酷い!! ばかたれって言われた!!」
「良いから杖ですよ杖。どうするんです? 買ってくれるんですか?」
「え? あー、えーっと………………あ! 分かった!! 杖は買わないけど、杖の材料を買って行ってミキレイさんに作って貰おう? それなら安くていい杖が手に入るでしょ?」
あ、その手が有ったか。あぁ、でもそれなら私が作った方が良いかな?
杖作りは魔法絡みの儀式がやたら多いんだよねぇ……。全く。面倒極まりないねぇ。
「材料買ってくれるなら私が作りますよ。……いや、やっぱミキレイちゃんと二人で作ります。工程が多いんですよ杖作りは。後、材料も自分で採りに行きましょう。杖に使うとなるとどれも上質な物を使わなきゃいけなくて何だかんだで高くつくんですよ」
「え? オーガさん杖作れるの?」
食いつく所そこかよ。全く先輩の話のツボは相変わらず理解出来ないなぁ。
「本で読んだのと、近所に杖職人のお爺さんが居てその人の手伝いを暇つぶしに良くしていたので」
「へー」
* * *
と、言う訳で杖は現在作成中だったりする。
ミキレイちゃんと全材料を一から集め0から作る杖、どんな仕上がりになるのか楽しみだね!!
材料の中でも一番手に入りにくいのは杖のコアとなる石だと思う。店で買うと無駄に高いあれはギルドのクエストでしか中に入れなかったり、パーティーランクの高さでで中に入れる人が制限されてたりする所に有るから、取りに行くならギルド加入必須だったりする。
ちなみにギルドについてはうちのメンバー全員でパーティーを組んで入る事にした。
いつか暇な時にねって先輩は言っておりましたぞ!! 何時になるかは知らないよ!!
取り敢えず手に入る物から採りに行って作っていこうと思うよ!! 頑張るぞ!!




