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第23話

第23話


「ナスカ連合国についてですが、まずは魔王が倒された後のことを話しておくべきですね。魔王がいなくなり世界が平和になったわけではありませんでした。一部の魔族が戦争をやめようとしなかったのです。しかし、勇者マサムネは魔王を倒した後、魔族との闘争をやめました。理由は、自分のやるべきことは世界にあだなす魔王を倒すことであり、魔族を滅ぼすために行動していたのではないと。当時は全ての魔族を滅ぼせという意見もありましたが、魔族の中でも魔王に支配されていただけで、我々に敵意を持っていなかった人達も存在していました。そういう人達のためか勇者は一切の闘争に関わらず、逆に貧しい魔族の人達に救援作業をしていました。そのおかげで一部ではありますが魔族との交流ができ、人と交わり子を成すようにもなりました。そして、今ではその者達を獣人族と呼ぶようになっております。その理由や人と違うということで、ロスタリカ大陸にあるトラキアやナスカの魔族に被害にあっていた地域では亜人の差別があります」


異世界あるあるネタだな。人種差別ならぬ亜人差別。というか、獣人族ってそうやってできた種族だったんだ。


「話がそれてしまいましたが、さきほど話したように敵対行動をしていたのは魔王軍の一部の者達でした。そういう訳で、無理に勇者を巻き込めば勇者を敵に回すことになるので、残党はこの世界の軍隊が対応していました。その中でもっとも功績を残したのが当時のナスカ王国なのです。勇者が動かない中、ナスカの軍は残党の被害を食い止め世界に己が力を見せつけました。被害にあった国々は次々にナスカの傘下に入り、ナスカ王国はナスカ連合王国になったのです」


「正直、傘下に入ったというよりも守ってほしけりゃ下に付けって感じか?一応世界を救った勇者に文句を言うのは筋違いだし、自分達でどうにもできないから仕方なくじゃないのか」


勇者みたいに何の得もなしに行動するようなことは国ではしない。

領地を得るために助けてやるから下に付けとでも言ってそうだ。


「当時がどういうことがあったのかは存じませんがおそらくそうだったのでしょう。では、国の特徴に戻します。気候は範囲が広いため地域によって異なりますが、首都であるナスカ王国はここと同じ穏やかな気候です。特徴といっても工業や農業、漁業などあらゆる分野において世界トップクラスを誇っています。ただ、さきほど話したように亜人に対してあまりよくない状況になってしまっている地域があるのが問題でしょうか」


「そんなもん人と亜人の違いだけで、どこに行ってもそんなもんはあるから特徴でもないだろ」


黒人差別とか、ユダヤ人を差別とかあったしな。日本でも部落という人達がいて、人なのに人よりも下の存在で別の生き物みたいな感じで差別をしていた歴史がある。


「そうでございましたね。確認の内容ですが、こんな感じでよろしかったのですか?」


「ああ、ためになったよ。他にもあるだろうけど今はこれくらいでいい。というよりもこれ以上は覚えきれそうにない」


暗い話が混じったからおどけてみたが正直本当のことだ。エリーゼは笑ってくれたのでよしとする。話疲れたのか紅茶をしばらく飲んでいた。俺も話に夢中になってしまい紅茶が冷めてしまい入れなおすために飲みきった。それを察してエリーゼが自分の分も一緒に入れなおしてくれた。


「では、今度はわたくしからのご質問に答えていただきませんか?」


しばらく静かな時間を過ごしていたがエリーゼが聞いてきた。


「いいぞ。どんだけ答えられるかは別になるけど」


「そうですね。まずは……」


こうしてエリーゼの質問タイムが始まった。どんなことを聞くのかと思ったが、俺のいた世界でどういった楽しいことがあるのか。この世界にはない物はどういった物なのか。そんなどうでもいいような内容だった。どうでもいい内容でもエリーゼには興味が湧いたみたいで結構盛り上がってしまった。


「さて、時間になりましたのでお嬢様と交代してきます」


時間を確認したエリーゼは立ち上がった。


「もうそんな時間なのか。エリーゼならこのままリリーを寝かすとか言いそうだったんだけどな」


「いいえ、それではお嬢様のためになりません。やさしくすることと、甘やかすことは違います。お嬢様は何が起ころうともヨシアキ様の旅について行くおつもりです。自分が御守をされることはお嬢様の望んでいることではありません。ですから時には厳しくすることもメイドのお仕事なのです」


忠義の塊だな。


「メイドというよりも保護者だな」


ほめる言葉よりもこの言葉が出てしまったのは、

ここまでしてくれる人物に巡りあえたリリーがうらやましく思ってしまったからだろう。


「最後に1つご質問してもよろしいですか?」


「なんだ?」


エリーゼがまっすぐこちらに向きなおし真剣な目で


「あなたはお嬢様を1人の女性としてどう思いになっているのですか?」


これも忠義から来ているのか、随分と深いところまで踏み入ってきたな。かわいいとか、タイプだとか、そんな貧相な答えを求めている雰囲気ではない。気軽に好きだなんて言うわけにもいかない。

――前にエリーゼに示唆されたが、俺の中でもまだはっきりとした答えはでていない。だからといって、答えないという選択肢は男として許されない状況だ。


「ノーコメント。強いて言えば悪く思っていないことだけは言えるな。後は本人がいないのに言うわけにはいかないから勘弁してくれ」


しばらく考えた末、含みを持たせて言えば問題ないだろうと言ってみたが、正直どうしたいのかわからない。好きだと確信できた時、リリーをこの危険な旅に連れて行ける決心ができるのか……

前にリデルが言っていたように、惚れた女を盾にされるようなことになってしまったら俺はどうするのだろう。どんなことがあってもキミを守るとかくさいセリフを言えればいいが、そんなことよりも俺は危険から遠ざけるだろう。そういうことなら今すぐにでも魔王を倒すべきだと思うが、それでは王さん達のことを許してしまうことにつながる。心が狭いと言われようが、俺がこんなことになったのは元を正せばあいつらが原因だ。召喚をミスらなければこの世界に来なかったし、ちゃんと勇者として扱えばこんなことをしていなかった。だから、あいつらが謝罪や罰を受けない限り俺は許すことができない。――そんなことを考えてしまうんじゃ、今の俺ではリリーのことをその程度にしか思っていないんだろう。それに、もし魔王を倒しに行くならふたりをおいて行く。つまり、この楽しい日々がなくなってしまう。……柄にもなく考え込んでしまったな。単純にYESかNOで答えられたらどんだけ楽なんだろうな……


「わかりました。では、ヨシアキ様おやすみなさいませ」


どうやらエリーゼは納得してくれたようだな。

もしかしたら俺の考えを読み切って追求しなかったのかもしれない。


「お休み」


恋愛の考え方は人それぞれですが、読者のみなさんの意見はどうですか?

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