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私は誰なの?  作者: 星野 満


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17. 幽霊と詩織ちゃん(1)

※ 2025/12/13 一部追加修正済み

◇ ◇ ◇ ◇



 一階の白い壁の控室には数人がベッドの回りを囲んでいました。

 簡易ベッドには、さきほど失神した詩織ちゃんが眠っています。


 詩織ちゃんのすぐ傍に、エリックさんとお医者様と京香さんが座っていました。


 その後ろに北条君と織田君が突っ立っていました。二人は心配そうに詩織ちゃんを見守っています。



 医師らしき初老の男性が、詩織ちゃんの体に聴診器を当てていました。


「うん、ただの貧血みたいですね。状況を聞くと失神したようだが、現在は心音、呼吸音も正常だし血圧も安定している。すぐに病院に搬送する程ではない。このまま安静にしていれば目覚めますよ。まあ心配ないでしょう」


「ヨカッター!タケダドクター、センセイ、マコトニ、アリガトウゴザイマス」


 エリックさんが変な日本語だけど、大きな深呼吸をして安堵しました。


 京香さんもほっと胸をなでおろしたのか、ようやく笑顔になりました。


「武田先生、ありがとうございます。この子は美樹の中学時代からの親友でしたの。それは仲良くてね。いつも美樹とこの別荘にも遊びに来てくれて……失神した時はびっくりしましたわ」


「いや、私も上杉家の主治医として美樹さんの一周忌に招待させて頂きましたので──本当に美樹さんはあの若さで……先ほどの奥様のスピーチは胸を打たれました。私も出席できてとても良かったです」


 と京香さんに武田先生といわれた男性はしんみりした面持ちになりました。


 どうやら彼は上杉家のお抱えのお医者さんのようです。


「でも先生、詩織はさっき(ひど)(わめ)いていたんだ! なにか恐ろしいものを見たような悲鳴をあげて気が狂ったみたいだった……俺は、俺はあんな詩織、初めてだったからびっくりして……」


 織田君が2人の会話を突然(さえぎ)って発言しました。


「うん、そうらしいね。ただ私としては精神面は専門外なんだ、申し訳ないね」


「あ、そうなんだ。俺、思わず……すみません」


 織田君は項垂(うなだ)れました。


「いや、君が心配するのも無理ないよ──奥様、もし良ければ私の大学時代の精神科ドクターを紹介しましょうか? 心配なら詩織さんの親御さんと本人が相談して、一度見て貰ったほうがいいかもしれない」


「そうですね。さっき詩織ちゃんの家に主人が連絡してくれて、明日、お母様が来てくれるそうです。今夜はこのまま母屋に泊まらせて、詩織ちゃんが気付いたら後で相談してみますわ」


「分かりました。それでは私はこの辺で失礼します。また何かあったらご連絡ください」


「あ、先生、ロビーまでお送りします。エリックも一緒に来てちょうだい。あ、(ひかる)ちゃんたち悪いけど詩織ちゃんを診ててあげてね」


「うん大丈夫だよ、叔母さん。僕たちもここで詩織ちゃんの側にいるよ」


「織田君もどうか気落ちしないで、ね、詩織ちゃんは大丈夫だから。直ぐに戻ってきます」


 そういって京香さんとエリックさんたちは部屋から出て行きました。


 織田君は口をぐっと()みながら、詩織ちゃんを心配そうに見守っています。



海斗(かいと)、大丈夫だよ。詩織ちゃんはすぐ元気に目を覚ますさ」


 北条君が織田君の方をポンと軽く叩きました。


「うん、だといいんだが………」


 織田君は打ちひしがれています。



 ◇ ◇



 この光景を私と美樹ちゃんは、天井近くふわふわと浮きながら見下ろしていました。



( ふふ、海斗(かいと)は相変わらず美樹が好きで好きでたまらないのね……)


 美樹ちゃんが私に精神感応(テレパシー)で呟きました。


( ねえ、妖精さん、あなたを見つめた時の詩織のあの顔!()()()()()だったわね!詩織のあんな顔、あたし、初めて見たわ )

 

 美樹ちゃんのキラキラした碧い瞳は意地悪そう……だけど哀しげに伝わってきました。




 ──そうだ。


 失神した詩織ちゃんは、私が詩織ちゃんの肩に触れた瞬間、私の姿が視えたんだっけ!


 だから彼女は悲鳴をあげた──。


 織田君たちは詩織ちゃんが病気だと心配してるけど。


 でも、不思議だわ、何故あの時だけ詩織ちゃん、私が視えたのかしら?





 そう思ったのも無理はありません。

 

 これまで、のっぺらぼう幽霊の私は、三人の側にいつも四六時中ひっついていたからです。


 姿形が視えないのをいい事に、三人のプライベートを侵害したのは悪いと思ったけど──。



 特に女子の詩織ちゃんとは学校で出会って以来、ちょくちょく私は行動を共にしていました。


 そうです、私は最初に会った学校の中庭から今日まで、詩織ちゃん、織田君、北条君の家を行ったり来たりして遊んでいました。


 上手い具合に三人の家はそう遠くない距離にあったので、私は毎日、散歩がてらそれぞれの家を往復して彼等を観察していました。



 遊びに行くというのも変だけど、彼等の(そば)に入れば私が誰なのか、わかるかもしれないと思ったからです。


 勿論、三人は私の存在には一切気付かない、幽霊の私だからこそできる技です。



 とはいっても織田君と北条君は高校生とはいえ男子です。


 一応セーラー服を着ている乙女の私です。


 若い男女がひとつ屋根の下で寝泊まりするのは気が引けたので、夕方以降は詩織ちゃん家を拠点にして彼女の部屋のベッドで、可愛い白と黒のクマのぬいぐるみたちと一緒に寝ていました。



 

※ この回は長くなっちゃったので後篇は明日投稿します。


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― 新着の感想 ―
よかった、詩織ちゃんはひとまずは落ち着いたんですね。 でも、急に私が見えたのはなんででしょうね? 私は詩織ちゃんや、織田くん北条くんの家を行ったりきたりしてたんですねwそれはそれで楽しそう♪
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