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私は誰なの?  作者: 星野 満


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13/18

13. 私の正体

※ 今回、中ほどにショッキングな表現がありますので、どうかご注意ください。

 ◇ ◇ ◇ ◇



 ハートブルー・レイクブルー


 ゆらゆら ゆらゆら

 無呼吸の世界。


 ゆらゆら ゆらゆら

 下界との遮断。


 碧い碧い 深い深い 

 湖底まで心底 潜りたい。


 とうとう とうとう、

 とうとう とうとう

 恋は 終わった。


 ズルい 醜い 卑怯者──。


 ああ嫌! ああ嫌!

 涙と一緒に静穏に溶けていきたい。


 すべてにレイクブルー 後悔のハートブルー。


 深く深く 息つくまで

 深く深く 限界を越えろ


 人魚になりたい。

 人魚になったら あいつを冷たく墜とせたよ。


 もっと勝手に もっと独り占め

 深淵底に引きずって あいつを墜とせたよ。


 ハートブルー・レイクブルー。


 馬鹿、馬鹿、馬鹿──!


 いいじゃん いいじゃん

 またすればいい。

 また泡のように また生まれてくるはず。



 ハートブルー・レイクブルー。


 湖に潜れば私は自由、いつだって自由。


 大丈夫、こんな気持ち、直ぐに終わる。


 潜って潜って、涙も 失恋も 水が流してくれる。


 今日は 泣いて 泣いて 

 明日は きっと あの子と仲直り。




 ◇ ◇



 ──私、思い出したわ。


 これは、あの時の、あの子の、強い心の叫びだった。


 あの子じゃなくて、美樹ちゃんの碧い眼と私の目があの時、一瞬だけ合ったのよ。


 その瞬間、美樹ちゃんの想いが思念伝達(テレパシー)として、私に向かって一気に濁流のように流れ込んできた。



 ※ ※ 



 そうだ、あの大嵐の夕刻、湖の中で私は美樹ちゃんと出逢ってる。


 あの時の私は、白昼夢に見た巨大な橙色(だいだい)のアンコウだったわ。

 それもただのアンコウじゃない、凄く醜くて北極クマよりも大きいの!

 何十年以上も()()()底に潜んでた古代アンコウ。


 それが私の正体だわ。


 プランクトンを食べてずっと生きてきたのよ。


 あの嵐の晩、私が湖上に向かって泳いでいる時に、美樹ちゃんは湖上から降りて来た。


 この映像と同じ、黒いピカピカのウェットスーツを着ていたわ。


 素顔だった。私が初めて見た人間(ヒューマン)だった。


 とっても綺麗な子だと、ひと目見て、私が憧れていた姉さまに似てるって思った


 人間は水の中では生きれないって聞いていたのに、凄い、水中で息できるのねって思った。


 でも、そんな優しい瞬間は一瞬で終わった。


 水神(レイク)様が起こした百年に一度だけ巻き起こす大渦(ダイレクト)に、私と美樹ちゃんは巻き込まれたんだ。


 巨大アンコウの私も苦しくなって、思わずガバッと口を開けた、その瞬間、大きな口の中に美樹ちゃんが飲み込まれちゃったのよ!



 ──ああ、そうだ思い出した、私が美樹ちゃんを飲み込んだんだ!


 私だ、私が美樹ちゃんを……。


 そんな……待って、えっと、えっと、それでどうしたんだっけ?


 あ! こんな綺麗な子を食べたらいけないと思って、慌てて口からゴホッと直ぐに吐き出したんだわ。


 でも遅かった──。


 水中に出てきた美樹ちゃんは、無惨にも首が千切られてた。


 頭は私の腹中に入り込んでしまった。


 私の尖ったギザギザの歯が美樹ちゃんの首を、ガブリと切り落としてしまったんだわ!


 美樹ちゃんを首なしにしたのは他の誰でもない、私、私だったんだ!!



 その時、私はあの日の瞬間を想い出して身の毛がよだつくらいゾッとしました。


 でも待ってよ? だったらなぜ私は今ここにいるの?


 ──なぜ? なぜ? なぜ?


 わからない、わからない。


 どうか美樹ちゃん、教えて!!




 ◇ ◇


 

 その時「キーン」とマイクのとても不快な音がホール中に響きました。


 いわゆる音のループが発生して増幅されるハウリング現象でした。


 登壇のエリックさんは困惑した顔で、一旦、マイクのスイッチを切って、再びスイッチを入れました。


「ア~ミナサン、マイクオン、ドウモシツレイシマシタ。コレニテ、ワタシノアイスルムスメ、ミキノ、アリシヒノエイゾウハ、オワリニイタシマス。」


 マイクのつんざく音ではっと私は意識が戻りました。

 

 我に返ると、今は美樹ちゃんの一周忌法要式に、参列していたんだと認識しました。


 スクリーンの美樹ちゃんの映像は終了し幕が下りるように暗転しました。

 

 私はスクリーンから目を移して、左端登壇のエリックさんの顔を凝視しました。



「ドウカ、キョウオアツマリニナッタ、ミナサン、ミキガイキタ、ミジカイジュウロクネンカンノジンセイデシタ──ソノオモイデヲ、ワタシトトモニ、シノンデクダサッテ、ホントウニ、アリガトウゴザイマス。ドウカ……コレカラモ……スコシデモイイノデ、ミキノコトヲ……オモイダシテ……クダサルト……ウレシイデス」


 エリックさんは最後、涙声になって挨拶を終えました。


 それを私の横で聞いていた詩織ちゃんも、織田君も北条君も皆、涙ぐんでいます。



 ──ああ、大変だ……私は一体どうすればいいの?


 

 こうして私はようやく自分の正体が何者なのかが、少しずつですがわかってきました。






※初稿、余分な文章削除し忘れました。申し訳ありません。

 また、投稿がとても遅くなってしまいました。続きは明日以降、年内完結目指します。稚拙な作品読んでくださって誠にありがとうございます。

  <(_ _)>

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― 新着の感想 ―
おぉっ!ついに私の正体が!! まさかのまさかのでした〜! 私はなんでこうなったのか、これからどうなるのかが、明かされそうですね〜(^^) 楽しみにしてます\(^o^)/
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