子守唄を歌いながら
ぼんやりと柔らかな光が照らす廊下を、私は歌いながら歩く。
廊下の左右には子どもたちの部屋が並んでいる。
各部屋では、それぞれが一番安眠できる明るさに調整された空間で、子どもたちはベッドに横になっているのだろう。
今日はどんな夢を見ようか
フワフワ雲に乗って行こう
広がる空の果ての果て
星の国までひとっ飛び
ポカポカお日様が照らす
世界はキラキラ輝いている
風と一緒に手をつないで
虹の橋を渡ってみよう
私は自作の子守唄を歌いながら、ゆっくりと廊下を進む。
これは、界長から与えられた新しい私の仕事だ。
以前、清掃の仕事をしながら何気なく歌っていた歌が、風に乗って子どもたちの部屋にも届いていたらしい。
そして、その歌を口ずさんでくれていた子どもが何人かいたと聞いた。
歌という形ではあるけれど、私のエールの気持ちが子どもたちに届いていたと知り、とても嬉しかった。
ここでは、可愛らしいものや優しいもので満たし、視覚的に子どもたちを楽しませる試みをしている。
音楽も流していたが、クラシックやヒーリングなど、医学的に心に良いとされるものが中心だった。
歌詞の入った音楽は使われていなかった。
そんな中、私が歌うように、優しく前向きな歌詞でエールを送るのも良いのではないか、という意見が安寧界天部会議で出された。
そして、その音楽を作り歌う役目に、私が選ばれたのだ。
曲を作り、歌うという作業は、不思議なくらい自然に私にしっくりときた。
活動を進める中で、私は音楽で何かを伝えることが自分に合っているのだと実感した。
直接話しかけるのとは違い、音楽なら少し距離を置いた形で気持ちを届けることができる。
最初は単なる音として聞こえるかもしれないけれど、いつかその音が誰かの心に届く日が来るかもしれない。
一緒に歌ったり踊ったりする日が訪れるのはまだ先だろう。
でも、私の歌で少しでも楽しい気持ちになってもらえたら―そんな思いを込めて曲を作った。
おやすみ そっと目を閉じて
夢の扉を開けたなら
そこは君だけの特別の場
素敵な明日へと続く空
夜空の星がきらめいて
君の髪を優しく撫でる
フワフワ雲が歌いながら
そっと君を包んでくれる
朝が来るまで冒険しよう
ポカポカ陽気な夢の中
夢り中で出会った世界
きっと君の宝物
おやすみ そっと目を閉じて
夢の扉を開けたなら
そこは君だけの特別の場所
輝く明日へと続く空
「今夜は悪夢など見ませんように。せめて夢の中では楽しい気持ちになれますように」
そう祈りながら、できるだけ柔らかく優しい声で子どもたちへ子守唄を歌った。
少し更新が開いてしまい申し訳ありませんでした。
ラストまで描き終えたので更新再開となりました。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
こちらの物語、明日で完結となります。




